The Psychedelic Ensemble「The Sunstone」: アメリカ一謎なマルチインストゥルメンタリスト!フュージョン的テクニカルさが光るファンタジープログレの5th!

こんにちは、ギタリストの関口です。

本日はこちらのプログレ作品をご紹介していきます!

Sunstone / The Psychedelic Ensemble


The Sunstone

The Psychedelic Ensemble(サイケデリック・アンサンブル)はアメリカのマルチミュージシャン。

ファンタジープログレのど真ん中アンサンブル


プログレッシブ・ロックを生業とするミュージシャンの中には一人で何役もこなすマルチインストゥルメンタリストも珍しくはありません

自身の強いこだわりを再現するのにバンドケミストリーを求めていないのか、はたまたそれを求めた結果一人になっているのか、そこはわかりませんが…

アメリカが産んだプログレッシブ・ロックのマルチミュージシャンとして70年代スタイルを貫いていること以外、その一切が不明なアノニマス・アーティストThe Psychedelic Ensemble(TPE)

2009年にフランスのMusea Recordsより1stアルバム『The Art of Madness』にてデビューした彼は、これがProgAwardsのBest Debut Albumにノミネートされると、続く2010年の2ndアルバム『The Myth of Dying』もGlobal Progressive Rock Poll Top 100のうち第29位という注目の大型新人となります。

TPEの音楽性は北米プログレらしい整った構築とメロディアスな楽曲センスが持ち味で、ファンタジックなジャケットアートと共にオーケストレーションもバリバリに使用した豪華なシンフォニック・ロック

本作『The Sunstone』は2015年リリースの5thアルバムで、例に漏れず日常と位相のずれた音の空間へと誘ってくれます。

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アルバム参加メンバー


  • The Psychedelic Ensemble – Guitars, Keyboard, Drums, Percussion, Bass, Mandolin, Dulcimer, Cigar box guitar, Vocal
  • Ann Caren – Vocal

その他ゲストミュージシャン

  • Michael Wilk – Hammond Organ B3
  • C. Francis – Vocal
  • Davis Brooks – Violin
  • Kurt Fowler – Cello
  • Jonathan Roberts – Conductor of The Psychedelic Ensemble Orchestra

楽曲紹介


  1. Prologue – The Voyage
  2. The Sunstone
  3. The Siren’s Spell
  4. The Storm
  5. A Hundred Years On
  6. Sun Mad
  7. Digging up the Past
  8. The Quake
  9. Gaze
  10. Endgame
  11. Back to the Sea

コンセプトアルバムである今作も十二分に壮大な仕上がり。

#1「Prologue – The Voyage」の冒頭からブラスとストリングスがまるで映画の冒頭かのようなファンタジーな世界観で彩っていきます。続く#2「The Sunstone」ではGenesisから語り継がれるシンセサイザーとボーカルパートとのカウンター的やりとりが実に見事。音色的に控えめながら手数の多いドラムにも注目です。

#3「The Siren’s Spell」ではTPEの音楽的パートナーとしてお馴染みである女性ボーカルAnn Carenが登場。ミステリアスな楽曲にMagentaのChristina Boothを思わせるシリアスなボーカルが見事にマッチ。煌びやかなシンセはもちろんゲストであるMichael Wilkのハモンドオルガンも素晴らしいです。

#4「The Storm」は5分弱ほどのインターバルとなるインスト曲ですが即興気味のテクニカルな内容はKing Crimsonやフュージョンプログレを彷彿とさせる超絶さです。そこから繋ぐ#5「A Hundred Years On」は壮大なオーケストレーションから織りなす美しいフルートやハープシーコードのチェンバーロック。語らうように入るボーカルもGentle Giantなど70年代を強烈に意識してのものです。

ポップなピアノとダーティなドラムが印象的な#6「Sun Mad」、やはりKing Crimson色の強い#7「Digging up the Past」はぬるぬると動くベースラインにTangerine Dreamのようなアンビエントを含ませています。

再びインターバルとなる#8「The Quake」。T-SQUAREのようなテクニカルフュージョンにカンタベリー感のある難解さを足した超絶的なロックインストとなります。

#9「Gaze」はアンのボーカル曲。前半は穏やかなストリングスで奏でるバラードですが中盤以降はプログレッシブでインテリジェンスな展開へ。TPEが弾いてるとされるギターは時にメタル、ときにアコースティックだったりするのですが、本曲ではストラトのハーフトーンのような倍音豊かでクランチ気味の歪み量をして滑らかなフュージョンタイプのソロ。

ピアノとのユニゾンによるスキップしたリフが印象的な#10「Endgame」。TPEとアンとのデュエットな構成になっているのも特徴でR&B風のノリにKing CrimsonやGenesisを混ぜた新感覚プログレ!

ラストとなる#11「Back to the Sea」。並みの音とアコースティック、マンドリン、フルートなどによるJethro Tull風トラッド・フォークとなります。終始テクニカルなサウンドと楽曲はTPEの中でも随一の本作ですがラストには壮大で優しく癒される締めとなっています。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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