Ray Alder「What the Water Wants」: Fates Warningのボーカルによる初ソロ作品!ボーカリストとしての主張を押し出したメタルサウンドとは。

おはようございます、ギタリストの関口です。

今日は2019年にリリースされたRay Alderのソロアルバムをご紹介していきます!

What the Water Wants / Ray Alder


What The Water Wants (Bonus Track Version)

Ray Alder(レイ・アルダー)はアメリカのミュージシャンでボーカリスト。

FWファミリーによるニューアルバム


Fates Warningのボーカルとして1988年から在籍しているアメリカのプログレッシブ・メタルシーンを代表するボーカリスト。

FWはDream Theaterの元ドラマーMike Portnoyをもって「プログレッシブ・メタルの元祖である」と言わしめるバンドですが、彼が初参加したアルバム『No Exit』では80年代ヘヴィメタルの典型とも呼べるハイトーンとシャウトを持ち味に、ザクザクなギターとの掛け合いを披露。中には22分の大作曲も収録していました。

FWがDTと違ったのは、メンバーが主となるバンド以外での活動も精力的に行なっている点で、長い歴史でメンバー変遷も激しい中、現メンバーと旧メンバーとの間でもバンドが組まれファミリーツリーとしてのバリエーションが幅広い点にあります。

Ray Alderもその例に漏れず、1999年にはFWのベーシストJoey VeraとともにEngineを結成。このバンドは2枚のアルバムを出すに止まっていますが、続く2003年にはアメリカンプログレッシブ・メタルのスーパーグループRedemptionにゲストボーカルとして参加。当時は一曲のみでしたがその後2016年の『The Art of Loss』まで11年に渡って正規メンバーとなります。

この『TAoL』のころにはかつての80年代のような甲高いボーカルスタイルを脱却し時代のニーズに合った太くパワフルな歌声へと変化しています。

本作『What the Water Wants』はそんなアルダーにとって初のソロアルバムとなる一枚。彼が脱退をしたRedemptionの最新作が2018年リリース、Arch / Matheosのアルバムが2019年リリースということもあって、アルダーの歌声が聴けるのはそれこそ2016年ぶりですので非常に期待が高まっています。

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アルバム参加メンバー


  • Ray Alder – Vocal
  • Mike Abdow – Guitar, Bass
  • Tony Hernando – Guitar, Bass
  • Craig Anderson – Drums

楽曲紹介


  1. Lost
  2. Crown Of Thorns
  3. Some Days
  4. Shine
  5. Under Dark Skies
  6. A Beautiful Lie
  7. The Road
  8. Wait
  9. What The Water Wanted
  10. The Killing Floor
  11. The Road (Acoustic Version) – Bonus Track

セルフプロデュースである今作はボーカリストであると同時にソングライターでもあるアルダーを全面的にフィーチャーしているのが特徴

#1「Lost」からモダンなドラムの音色、トレブリーなベース、トリッキーなアプローチの多いギターと太く感情全振りで歌い上げるアルダーのボーカルが切なく突き刺さるスローバラードです。

今回のアルバムはメタル作品であることは間違い無いのですが比較的スローで聴かせるナンバーが多く収録されています。そこがアルダーのパーソナルな部分というか、Redemptionで見せる攻撃的な面を必要以上には出さず曲としての良さを伝える方向へシフトしています。

そして気になる「プログレかどうか」と言われると、現代的な視点でほぼその要素はないですね。あえて言えばタイトルナンバーである#9「What The Water Wanted」ですが、スキップ気味のハーモナイズドリフとドラマティックなコード進行を有しながら曲はコンパクトにまとまっています。

#2「Crown of Thorns」はMVが作られた言わばリードトラックですが、スラップベースが強烈に印象づくも曲全体は端正にまとまっています。

FWファミリーの持つパワーメタルを呼び起こすのは#4「Shine」。こちらはストレートなメタルナンバーとしてエッジの効いたギターと豊かなコーラスとのコントラストを堪能できます。同様に#6「A Beautiful Life」#8「Wait」でもヘヴィかつテクニカルな展開と痛快なギターソロを楽しめます。

今回、ギタリスト及びベーシストはMike AbdowTony Hernandoとが交互に担当しており一概にどちらがどちらとは言えないのですが、本曲でのヘヴィにチューニングされた轟音サウンドは時代に遅れを取らない最新鋭のサウンドです。

楽器編成はシンプルにまとめられていますが、その上でバラードなどを行う場合に備え、ギターはコーラスをかけたアルペジオを披露したり、ボーカル全体のコーラス量を増やし厚みを出したりといった工夫が非常に媚びないメタルサウンドを作り上げていて好感触。

特に#5「Under Dark Skies」#7「The Road」#10「The Killing Floor」などがそれでエモーショナルな演奏と粘り強いボーカルが漢臭くも深いメタルの世界へと連れて行ってくれます。

ボーナストラックには「The Road」のアコースティックバージョンを収録。こうした部分にアルダーのボーカリストとしてのポリシーというか本質があるのだと思いますね。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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