Tylor Dory Trio「Unsought Salvation」: Opeth+Rush感のあるカナダ発のプログレメタルトリオ!小細工のない抜群の演奏力とキャッチーなメロで勝負する話題の新譜!

おはようございます、ギタリストの関口です。

今日ご紹介するのは最近、巷で噂のプログレメタルバンドです。

Unsought Salvation / Tylor Dory Trio


Unsought Salvation [Explicit]

Tylor Dory Trio(タイラー・ドリー・トリオ)はカナダのプログレッシブ・メタルバンド。

カナダ発3ピースプログレメタル


Tylor Dory Trioは2014年にギターボーカル&キーボードのTylor Dory、ベースのSlava Fedossenko、そしてドラムのJonathan Webster3ピースバンドとして結成。同年自主制作によるシングル『Tylor Dory Trio』を発表し活動を開始します。

Left to Right, Tylor, Slava, Jonathan

プログレ的系譜としてはDream Theaterからの派生を感じさせながら、その実影響はOpeth、Alice In Chains、さらにカナダ出身のトリオということもあり先日訃報が届いてしまったRushも彷彿とさせる独自のルーツが見て取れます。タイラーの役回りもギターに持ち替えたGeddy Leeっぽいですしね。

楽曲はデスメタルを基盤とした攻撃的なメタルサウンド、叙情的なクリーンボイスからスクリーム、グロウルと段階を踏んで激しさを表現していくボーカルや曲の雰囲気も相まってやはりOpethやBetween the Buried and Meを強く感じます。

2015年には2ndシングル『Carried Away』をリリース。北欧譲りのダークな音楽性と北米らしいカラッとしたギターサウンドが愚直ながらもモダンな風味を醸します。

本作『Unsought Salvation』は2019年にリリースされた彼らにとって初のフルアルバムとなります。

アルバム参加メンバー


  • Jonathan Webster – Drums and percussion
  • Slava Fedossenko – Bass
  • Tylor Dory – Vocal, Guitar, Synthesizer

その他参加アーティスト

  • Eric Holloway – Spoken word on #8
  • Diego Fernandez – Chorus on #10

楽曲紹介


  1. The Righteous and the Rest
  2. Comatose
  3. The Fallen Man
  4. Dying Light
  5. The Spaces in Between
  6. East of Eden
  7. Glass Managerie
  8. Marionettes (of Distant Masters)
  9. Into the Maelstrom
  10. Cenotaph

全10曲。デビューから4曲程度のシングル、EPが続いていたエコなメタルバンドの魅力が詰まったフルアルバムです。

#1「The Righteous and the Rest」は前シングルで見せたダークな世界観から一転、壮大なエピックを感じるタイトなメタルナンバー。HakenのRoss Jennings辺りに分類されるパワフルかつ繊細な歌声と緩急ある曲展開がしっかり時代に追いついています。

シームレスに繋がっていく#2「Comatose」はDream Theaterの色を濃く感じるドラマティックな一曲。#1の雰囲気を壊さずに変拍子を絡めたヴァースやメロウなコーラスと、曲の雰囲気にマッチしたソロを選びコントロールしていく巧さに聴き惚れます。

続く#3「The Fallen Man」も#2の余韻からデジタルに導入していくメタルナンバー。ヘヴィなリフにFrost*のようなシンフォニックなキーボードも絡み、漢臭いボーカルはSons Of ApolloのJeff Scott Sotoを彷彿。

#4「Dying Light」は先行シングル。ハチロクを基調に湿っぽいアコースティックが展開するOpethライクな一曲。後半になるにつれバンドインしてエモーショナルに展開していくバラードです。

ベースを歪ませたような轟音が特徴ある変拍子リフから展開していくメタルナンバー#5「The Spaces in Between」。ミディアムテンポから放たれるタイトでエクストリームな音の壁と分厚いコーラスによる広がりあるサビとのバランスがなんとも癖になります。

続く#6「East of Eden」はこちらも先行シングル。キャッチーなコーラスにDream Theater的変拍子リフ、ソロ前に訪れる静寂のCパートなどこれまでの流れを壊さない自然なアプローチの数々。

先にAlice In Chainsからの影響を示唆しましたが、オルタナティブやポスト・コアからの流れも汲んでいるのがこのバンドならではのポイント。故にヘヴィでラウドで難解という近寄りがたい三拍子が揃っていながら、Harem Scaremのような曲をメロディックに聴かせる技術が備わっているのでリスナーを困惑させることは少ないでしょう。

#7「Glass Managerie」はウィスパーなボーカルとそれに準じた幽玄な雰囲気がサイケデリックさもあるバラードナンバー。#8「Marionettes (of Distant Masters)」はミクスチャー的な縦ノリやファンクな要素が詰め込まれたメタルとのクロスオーヴァー。ベースのスラヴァによるソロインターバルなどライブパフォーマンスに期待したくなるナンバーです。

#9「Into the Maelstrom」は深めのリヴァーブとPink Floydライクなフィルターで幻想的な世界観を演出する重ためのバラード。キーボードはギタリストのタイラーが担当していますがデジタルな音色だけでなくソフトタッチなピアノも抜群に気持ちいいです。

#10「Cenotaph」がラストナンバーとなる13分超えの大作曲。比較的長尺が売りのバンドですが、このアルバムは聴きやすさ重視なのか基本4〜5分でまとめられていますね。ただやはりプログレバンドなのでラストにはしっかりフリークのツボを抑える長尺曲が用意されています。

イントロからRushを彷彿とさせるアクサクチックな変拍子リフ。この感じ、今ではDream Theaterが代名詞になっているのかもですが遡ればRushなりEL&Pなりルーツの深いアプローチです。

3:27〜の第二展開ではボーカルの絶妙な上ずりが妙に癖になります。歌メロはこれまでと同じように大きめのラインでサビでは分厚くコーラスしてます。過去の作品に比べるとデス要素が大分薄くなったようにも思いますが6:28〜は一旦落とした変拍子のヴァースからバッチリグロウルを披露しています。

SNSこそ発信の中核である今の時代にまだまだ発展途上の知名度であるTylor Dory Trio。しかしカナダの次世代プログレメタルとして実力派十分ですし、本作も大変評価の高い一枚なので気になる方は要チェックです!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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