一方、ダニエルは個人としても様々なバンドやプロジェクトへも参加。有名どころではThe Flower Kings。2002年のアルバム『Unfold the Future』から2007年まで『The Road Back Home』ボーカルとしてアルバムに参加しています。
その縁もあってか2003年からはTransatlanticのライブツアーにも同行しサポートボーカルやギター、キーボードとしてバンドに彩りを添える傍ら、Dream Theater2007年のアルバム『Systematic Chaos』に収録された「Repentance」でのゲストボーカルを始め、AyreonやThe Sea Withinなど多様な人間関係とファミリーツリーが見えてくる獅子奮迅ぶりを見せています。
話を戻すと2007年にはPOS改名当初からの屋台骨であったランゲルも脱退、同時期フランスのエクストリームメタルバンドZubrowskaへの参加も決まっていたLéo Margaritが加入しています。
本作『In The Passing Light Of Day』はバンドにとって通算10枚目となる現状最新作ですが、これの前作『Falling Home』は過去曲のアコースティックアレンジアルバムであるため実質的なニューアルバムとしては6年ぶりとなります。
アルバム参加メンバー
- Daniel Gildenlöw(ダニエル・ギルテンロウ) – Vocal, Guitar
- Ragnar Zolberg(ラグナー・ソルベルグ) – Guitar, Vocal
- Gustaf Hielm(グスタフ・イェルム) – Bass, Vocal
- Daniel “D2” Karlsson(ダニエル・カールソン) – Keyboard, Vocal
- Léo Margarit(レオ・マーガリット) – Drums, Vocal
その他参加ミュージシャン
- Peter Kvint – Bass, Mellotron, Vocal
- Camilla Arvidsson – Violin
- David Ra-Champari – Violin
- Anette Kumlin – Oboe, English Horn
- Hálfdán Árnason – Double Bass
ギタリストのラグナーは本作リリース後に脱退、一度脱退したJohan Hallgren(ヨハン・ハルグレン)がバンド復帰しています。
楽曲紹介
- On A Tuesday
- Tongue of God
- Meaningless
- Silent Gold
- Full Throttle Tribe
- Reasons
- Angels of Broken Things
- The Taming of A Beast
- If This Is the End
- The Passing Light of Day
モダンヘヴィネスを基盤とした音作りとバンドコンセプトに沿った物語を感じさせる複雑な楽曲が特徴。
#1「On A Tuesday」は初手から10分を超える長尺ではあるもののダウナーさは無用と言わんばかりのダウンチューニングリフが飛び出します。ギターのシーケンスとポリリズムとが付いたり離れたりする癖になるアプローチ。中盤にはメロトロンとオーボエが生み出す静の世界観も用意されていたりとOpeth的なプログレッシブさにも余念がありません。
#2「Tongue of God」は冒頭美しいピアノとベースラインからスローながら重たく叩き込んでくるメタル曲。
オリエンタルな響きを持つイントロのギターから始まる#3「Meaningless」。上記のバンドに加えてToolやMars Voltaなどオルタナ方面にも精通してそうなPOSは激しさと叙情性あるメロディとのバランスも秀逸です。
ピアノが牽引していくバラードの#4「Silent Gold」、コーラスにはゲストのPeter Kvintが参加。デジタルシーケンスとポリリズムを多用していくことでカオスを表現するこのバンドのシンボルとも言える#5「Full Throttle Tribe」など一曲ごとにテンプレート化しない気遣いは見事!
#6「Reasons」はヘヴィでアグレッシブなリフ、Djent的な歯切れのいい刻みとマドリガーレコーラスとの奇怪な美しさが魅力の一曲。この曲でもコール&レスポンス的なコーラスが印象的ですね。
#7「Angels of Broken Things」はアコギのアルペジオからヴァースに入っていき、終盤に向けて徐々に盛り上げるという一方通行的な構成のバラード。ラグナーのエモーショナルかつテクニカルなギターソロも聴かれギターフリークも楽しめる一曲に。
#8「The Taming of A Beast」は曲始めのリズムパターンから90年代のレッチリっぽさがあるかなと思ったのですが、サビでのテンション感、さらにそこから刻み込む8分ダウンが鬱屈した空気を吹き飛ばします。グスタフのベースラインも個人的にお気に入り。
オールドなプログレッシブ・ロックの雰囲気を取り込んだ#9「If This Is the End」。テープノイズによる演出がフィルム映画のようでなんともニクい。
15分超えとなるクロージングナンバー#10「The Passing Light of Day」。タイトルナンバーだけにプログレスを意識した落ち着きのあるヴァース。6:33〜のスライドギターはメロトロン的なニュアンスを生み出していてノスタルジックな響きが心地よい。曲は8分ほどかけてゆっくり盛り上げていきますが、完全にバンドインしてからもヘヴィな演奏はキープしつつあくまで歌にフォーカスを当てているのが印象的です。12:03〜はオーボエにヴァイオリン、ピアノなどをメインに据えしっとりと感動的に締めるというのが極上。ダニエルの幅広い歌唱も堪能できる2017年の名盤です。
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