Magenta「Acapela2016 & 2017」: ウェールズ出身の女性Voプログレバンドによるアンプラグドライブアルバム!
こんにちは、ギタリストの関口です。
本日は先日ゲットしたこちらのライブアルバムをご紹介します!
Acapela2016 & 2017 / Magenta
Magentaはイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。
来歴
バンド活動だけでなくプロのソングライターとしてテレビ番組や映画に楽曲を提供していることで知られるピアニストRob Reed。そのロブによって1999年に結成されたのがMagentaになります。
Renaissance、Genesis、Mike Oldfield、Yes、Björkなどの影響からイギリスの伝統的な70年代プログレッシブ・ロックを基盤としそこへ女性ボーカルを採用するという発想にいたりました。
ボーカルに選ばれたのは、ロブの活動の中で最も成功したと言われるバンドTrippaを動かしていたChristina Booth。クリスティーナはまたロブの前身バンドCyanにおいてもゲストボーカルとして参加しています。
この二人を中心に2001年に1stアルバム『Revolutions』をリリース。全5曲のうち20分前後の曲を4つも抱えた2枚組アルバムで、ギターには正式加入したChris Flyの他、Frost*やIQで知られるマルチプレイヤーAndy Edwardsも参加する力作となりました。他にはドラムのTim Robinsonが参加し2ndアルバム『Seven』までバンドを支えますが現在は脱退しています。
以降はほぼ年一のペースでコンスタントにアルバムをリリースし、2013年リリースの9thアルバム『The Twenty Seven Club』では27歳で亡くなったミュージシャンたちをコンセプトに大作曲を多数収録し話題となりました。
今日ご紹介するライブアルバム『Acapela2016 & 2017』は毎年恒例のファンイベントのうち2016年と2017年の二公演をまとめたものとなります。
メンバー
- Christina Booth – Vocal
- Rob Reed – Piano, Keyboard, Vocal.
- Chris Fry – Guitar
サポートミュージシャン
- Dan Nelson – Bass
- Jiffy Griffiths – Drums
- Angharad Brinn – Vocal
- Peter Jones – Guitar, Saxophone
- Karla Powell – Oboe
- Claudine Cassidy – Cello
- Steff Rhys Williams – Vocal
- Steve Roberts – Drums
- Fran Murphy – Vocal
- Nigel Hopkins – Piano
楽曲紹介
Acapela 2016
- Secret Garden
- Diablo 21
- The Light
- Disappeared
- Legend in the Making
- Sanctuary Jig
- Sanctuary Ⅱ Ending
- Mercy of the Sea
- One Last Step
- Beneath the Waves
- Pearl
- Devil at the Crossroad
- Red
- Sunshine Saviour
- King of the Skies
Acapela 2017
- The Way Back to My Heart
- The Same Old Road
- Deep Oceans
- Rio Grande
- Albatross
- Willow’s Song
- Speechless
- Envy
- Colours
- Call Me
- Greed
- Prekestolen
- The Lizard King
タイトルの「アカペラ」が意味するようにアコースティックセットを基本にしたアンプラグド的なライブ模様が本作の醍醐味。
ウェールズにあるチャペルを改造したという会場は温かみのある音像を生み出し、ファンの他、出演者の家族も多いおかげで非常にアットホームな雰囲気が作り出されています。
ライブは各メンバーのソロプロジェクトや参加バンドのカヴァーを経由しラストにMagentaとして演奏する構成で、各々のバックグラウンドを経て現バンドに収束していくという歴史の縮図を見られるのはファンにとって嬉しい仕様。
「2016」の#1「Secret Garden」と#2「Diablo 21」はギタリストクリスのソロ楽曲。アコギによる演奏は少々危なげないシーンもありますがそれでもテクニカルなギターソロを披露しています。
なおクリスはアコギの他にエレキもセットアップしているのですがこれが元々ソフトな弾き方をしているためアコースティックライブでも浮くことなくマッチ。該当曲では存在感がありながらも邪魔をせず切ないソロを聴くことができます。
#3「The Light」、#4「Disappeared」、#5「Legend in the Making」はクリスティーナのソロアルバムから選曲。アコースティックセットと生のコーラスによる演奏は彼女の透き通ったボーカルが存分に活かされた癒しのパート。
ロブのソロパート#6「Sanctuary Jig」の愉快なアンサンブルとフュージョンプログレ曲#7「Sanctuary Ⅱ Ending」を堪能したあとは、同じくロブのバンドとして珍しいKompendiumのセットリスト#8「Mercy of the Sea」、#9「One Last Step」、#10「Beneath the Waves」。
このバンドは80年代のネオプログレにMike Oldfieldからの影響をプラスしたような多文化な音楽性で、2012年リリースの『Beneath the Waves』はロブ自身にとっても集大成に等しいアルバムとなりました。
後半#11〜15のMagentaパートでは先述の『The Twenty Seven Club』から「Pearl」と「Devil at the Crossroad」が演奏されている他、8thアルバム『Chameleon』から「Red」、5thアルバム『Singles』から「Sunshine Saviour」、そして2005年の映像作品『The Gathering』より「King of the Skies」を披露。ところどころアコースティックライブ用に尺などアレンジされていますが、繊細な楽器陣とクリスティーナのノリノリな歌が会場に響く至福の時間です。
2017年のプログラムはセットリストを一新した同構成ですが、Kompendiumは除かれています。サポートミュージシャンの面でもピアノのNigel HopkinsやコーラスAngharad Brinnが参加、そしてドラムはJiffy Griffithsに変更するなどメンバーの相違も見られます。
Magentaパートは#7〜13までの8曲でクリスティーナのバンドTrippaの楽曲「Speechless」が目を引きます。アルバム『We Are Legend』の長尺曲「Colours」はヴァイオリンが美しく響き、『Seven』収録の「Greed」、『Metamorphosis』収録の「Prekestolen」ではジャズからトラッドフォークまで幅広い音楽性をカバー。ロブのYouTubeチャンネルでも確認できる「Envy」ではKarla PowellのオーボエもUKプログレ好きの心をくすぐってきます。
名盤『The Twenty Seven Club』から「The Lizard King」を抜粋。後半一部のみのパフォーマンスでしたが観客とのクラップを楽しんだりしてこれ以上ないハイライトとなっています。さらにロブのバンドCyanの楽曲「Call Me」を演奏するなど2016年よりシームレスでバラエティに富んだセットリストです。
なお、CDと共にDVDによる映像も2枚組で付属しているのが本アルバムの特徴で、そちらではCDと収録内容も若干変わっています。共通しているのは2年続けて演奏された『Seven』収録の「Gluttony」を映像で確認できる点。こちらは変拍子も交えたセッション仕様の楽曲で思わずその空間に入り浸ってしまいます。
スタジオアルバムのバンドサウンドでは、緻密な構成とスリリングな展開とは裏腹にギターやドラムは70年代テイストでいささかパワーが物足りないと思っていたので、この手のアコースティックライブだと彼ら本来の良さが引き立っていますね。たっぷりのボリュームももちろんですがクオリティの高いライブ感は必見です!