Cirrus Bay「The Art of Vanishing」: 女性ボーカルデュオをベースにしたGenesis系アコースティックロックの2019年作!

おはようございます、ギタリストの関口です。

本日は穏やかな雰囲気を纏ったファンタジックなシンフォロックCirrus Bayの2019年作をご紹介します。

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The Art of Vanishing / Cirrus Bay


The Art of Vanishing

Cirrus Bay(シラス・ベイ)はアメリカのプログレッシブ・ロックバンド。

女性ボーカルデュオをベースにしたGenesis系アコースティックロック


Cirrus Bayの結成は90年代後半。ギタリスト兼キーボーディストであるBill GillhamとChelsey Mannによるデュオユニットでした。結成からわずか数年でボーカルがSharra Gillham(現Sharra Acle)に交代し簡易的な音源を作りながら活動を続けます。

二人は基本、ライブスペースがあるカフェでの活動を行なっていきますが、ビルの作る大衆向けでありながら美しい楽曲に目をつけたのがドラマー兼エンジニアのMark Blasco。マークは二人が演奏する音楽に魅了され、自身もユニットに参加する形でCirrus Bayの本格的なレコーディングに乗り切ります。

2008年、1stアルバム『The Slipping of a Day』をリリース。シャラの他にAlex BrighentiとAnnisha Gillhamを第二、第三のボーカルに迎え男女混合のソフトなボーカルスタイルとGenesisやSpock’s Beardといった大作傾向にあるプログレッシブ音楽として方向性を確立します。

曲はすべて、ビルによる作曲ですが2ndアルバム『A Step Into Elsewhere』が一年足らずでリリースされていること(事実上こちらが1stアルバムという話も)、その後も2、3年感覚でコンスタントなリリースが行われていることからもマルチな才能に恵まれていることが伺い知れると思います。

ジャケットアートはLee Gaskinsというイラストレーターによる作品で広大な景色や中世を思わす非現実的な光景はCirrus Bayの音楽ともマッチしています。

本作『The Art of Vanishing』は前作『Places Unseen』から参加のボーカルTai Shanを迎えおよそ3年ぶりとなるニューアルバムとなります。

アルバム参加メンバー


  • Tai Shan – Vocal
  • Sharra Acle – Vocal
  • Mark Blasco – Drums, Bass, Sax, Vocal, Guitar
  • Bill Gillham – Keyboard, Guitar, Recorder, Banjitar, Vocal

楽曲紹介


  1. A Blossom Of Hills
  2. Undiscovered Isle
  3. A Garment Of Clouds
  4. The North Country
  5. Sooke Harbour
  6. Eden
  7. Unexpected Wonder
  8. Lost And Profound
  9. The Dictator
  10. The Vanishing Place

冒頭#1「A Blossom Of Hills」から煌びやかな12弦サウンドが奏でられます。Genesisとは言いましたが近年におけるMoon SafariやThe Psychedelic Ensembleなどのシンフォニックな要素が満点でしっかり構築されたアコースティックロックが好みの人には是非とも一聴して欲しいです。

#2「Undiscovered Isle」はビルのアコギによる3分弱のインスト曲。続く#3「A Garment Of Clouds」はポップなメロディに途中テンション感も交えたSaxソロを含むバラード。リードボーカルであるタイは透き通っていながらも細くなく、Marcela Bovioのような説得力ある歌唱でこれも気持ちがいいです。

#4「The North Country」#5「Sooke Harbour」は二曲続けてのインストナンバー。#4はプログレながら案アンニュイな雰囲気をまとい前半のキーボードと後半のギターがテーマをなぞりながら二面性を演じる一曲。#5はアコギとリコーダーによるユーロチックな一曲で、バンド全体を通してもアメリカンプログレということを忘れてしまいそうなアナログで自然豊かなサウンドが特徴となっています。

ポップなビートソング#6「Eden」。前作『Places Unseen』の流れを汲む曲で、明るいコードワークとスライドギターがサーフな雰囲気のハイライトです。SAW系シンセリードやギターソロも有し曲は短いながら展開を詰め込んだ濃厚さは英国のBig Big Trainを彷彿とさせます。

モード的に展開する#7「Unexpected Wonder」。イントロのサックスはアダルトでプレゼンス感のあるギターはサイケっぽくもあり、この両者とプログレらしいオルガンとの絡みでより独特なファンタジーを生んだインスト曲。

ピアノとサックスによる小曲#8「Lost And Profound」を抜け、再びのポップアコースティックソング#9「The Dictator」。こうしたアコースティックサウンドの広がる楽曲ではイギリスのMagentaやTony Banksも思わせますが、ポップな中で不意にディスコードを差し込んでくるので油断は禁物です!

ボーナストラックを除くと本編ラストとなる#10「The Vanishing Place」は10分という長尺の中で地味ながら徐々にシーンが切り替わるプログレッシブなナンバー。イントロのピアノや3:49〜のシンセの絡みなどはRPGゲームのダンジョンを思わせます。民族的なアプローチが満載なのはアルバムを通してのことですが、さらにソフトなサウンドが好みの人にこのバンドをオススメしたいです。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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