Karfagen「Birds of Passage」: 2020年最新作一発目!ファンタジックな世界観をポジティブに描くウクライナ産大作プログレ!
by 関口竜太 · 2020-01-14
こんにちは、ギタリストの関口です。
1月も半ばまで来ましたがそろそろ2020年発売の新譜が足音を立てて来ましたので本日はこちらをご紹介します!
Birds of Passage / Karfagen
Karfagenはウクライナのプログレッシブ・ロックグループ。
ゲストたちと作り上げるファンタジーな世界観の大作プログレ
ウクライナの作曲家Antony Kaluginによって1994年に設立された本プロジェクト。他にSunchild、Hoggwashなど多数のバンドを抱えるアンソニーは、トータルで見れば毎年のようにアルバムをリリースする超ハイペースのプログレ作曲家となります。
そんな彼のソロプロジェクトとしてパーソナルな側面の強いKarfagenは2006年の1stアルバム『Continium』リリース以降、王道かつ独創的なシンフォニックプログレを武器に多くのミュージシャンとのコラボレーションを実現させてきました。
長い活動の中でキューバ、イギリス、フランスなど各地のミュージシャンたちをゲストに迎えていくことで、一介のソロプロジェクトにありがちな一辺倒のサウンドやマンネリに陥ることなく、常に刺激を受け自身の理想とする音楽を発展させています。
本作『Birds of Passage』は昨年『Echoes from Within Dragon Island』より続けて壮大なテーマが持ち味。元々そのような楽曲を得意としている作風ではありますが近年はその大作志向により磨きがかかっています。
アルバム参加メンバー
- Antony Kalugin – Keyboard, Vocal, Flute, Percussion, Compose & Arrange, Programming & Mixing
その他参加ミュージシャン
- Olha Rostovska – Vocal
- Tim Sobolev – Vocal
- Mathieu Spaeter – Guitar
- Aleksandr Pavlov – Nylon Guitar
- Maria Baranovska – Violin
- Alexandr Pastuchov – Bassoon
- Elena Kushniy – Flute
- Konstantin Ionenko – Bass
- Viktor Syrotin – Drums, Percussion
- Igor Sokolskiy – Artwork
楽曲紹介
- Birds of Passage Part.1
a. Your Grace
b. Against the Southern Sky
c. Sounds That Flow
d. Chanticleer
e. Tears from the Eyelids Start Part.1 - Birds of Passage Part.2
a. Eternity’s Sun Rise
b. Echoing Green
c. Showers from the Clouds of Summer
d. Tears from the Eyelids Start Part.2 - Spring (Birds Delight)
- Sunrise
- Birds Short Introduction
前作の「ドラゴン」同様、豊かな自然をモチーフに、メルヘンでファンタジーな世界観を上質なプログレで彩っていく想像力溢れるテーマ。
#1, #2「Birds of Passage」は計44分に迫る超巨大な組曲。もちろんそれらの中にも細かに分かれたパートが用意されているのはお察しの通りで、GenesisやCamel、Emerson, Lake & Palmerといったバンドをルーツに据えると納得のサウンド。
シアトリカルな楽曲構成と非常にポジティブで明るい雰囲気を纏っているのが最大の特徴。歌詞を詳しく分析しないとわかりませんが、印象としてはパラレルワールドのように同テーマで別々のお話を聞かされているという感じ。
ボーカルは前作も参加したOlha RostovskaとTim Sobolevの二人で男女の透き通ったボーカルは楽曲の雰囲気にもマッチ。世界観を考えるとアダムとイブのようにも感じます。
Part.1ではシンセサイザーを肝に王道なフレージングやテクニカルなギターとのユニゾンが楽しめるポップソング。最近で言えばNeal Morseが好きな人にはとにかく刺さるアプローチがふんだんに盛り込まれています。
また緩急を付けた展開もお手の物で、Part.2ではギタリストAleksandr Pavlovによるナイロンギターのイントロが切なく響きます。朝霧のようなストリングスや滴る水のようなクリーンギターの単音、活気ある生き物たちの息遣いのようなリズム提示がカラフルな山紫水明と生きた空気を眼前に感じさせてくれます。
本編となるのはこの二曲だけであとはボーナストラック扱いなのですがテーマは一貫しているためご紹介していきます。
#3「Spring」ではラテンパーカッションを取り入れながら繊細なヴァイオリンとMoon Safariのような爽やかで丁寧なコーラスが歌われます。中盤ではスキャットも聴けたりとボーカルにフィーチャーした曲ではありますが、バンドアンサンブルでは裏でSAW系のシンセが鳴っていたり、裏メロ的にギターがサスティンを効かせていたりと表情が豊かな一曲。
#4「Sunrise」はさらに深いシンフォニックへと誘ってくる半インスト曲。基本的なバンドサウンドは採用されておらずフルート、ストリングス、ピアノ、そしてパーカッションと気を静めてじっくり味わうファンタジックな世界への入門です。
ラスト#5「Birds Short Introduction」はそのまま#1のイントロをダイジェストにしたインスト曲として抜き出しており大作の片鱗を味わうボーナストラックとして収録されています。
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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