Hasse Fröberg & Musical Companion「Parallel Life」: アメリカンを輸入した北欧プログレ!ロイネのパートナーが自らのルーツに立ち返った2019年4th作品!
by 関口竜太 · 2020-01-13
おはようございます、ギタリストの関口です。
The Flower Kingsのライブまで二週間を切り予習に走る毎日ですがその過程でこんなアルバムに出会ったので今日はご紹介していきます!
Parallel Life / Hasse Fröberg & Musical Companion
Hasse Fröberg & Musical Companion(ハッセ・フレベリ・アンド・ミュージック・コンパニオン)は、スウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド。近年では「&」を抜かしHasse Fröberg Musical Companionと言われたりもします。
The Flower Kingsのセカンドフロントマンによるソロプロジェクト
The Flower Kingsと言えば、このブログでも多くお伝えしていますがその顔はやはりフロントマンRoine Stoltだと思います。
バンド自体がロイネのソロから派生してきたものですし言ってしまえば「The Flower Kings」という一つのプログレッシブ・ブランドの創設者なわけです。
ですが、バンドの形態を取りながら実際はロイネ+ゲストミュージシャンという現場だった1995年の1stアルバム『Back in the World of Adventure』から、唯一現在まで在籍しているメンバーがロイネ以外にいます。
それが本日ご紹介するギタリストボーカルHasse Fröberg。
ハッセは幼い頃からギターとドラムのレッスンを受け10歳になるころにはEL&Pスタイルのトリオバンドを結成していました(この時ハッセはギターボーカル)。
TFKへの参加は1994年。先述した1stアルバムの際はゲストとしての参加でしたがその後バンド化してから最新作『Waiting for Miracles』までロイネの良きパートナーとしてバンドを支えています。
そのTFKが2008年に活動休止を発表するとハッセは裏で書き溜めていた曲と才能を爆発。自らのソロプロジェクトとしてHasse Fröberg & Musical Companionを発足しました。
バンドは2010年に1stアルバム『Future Past』をリリースするとその後もTFKの合間を縫ってコンスタントにリリース。本作『Parallel Life』は2019年に発表された4thアルバムとなります。
アルバム参加メンバー
- Hasse Fröberg – Vocal, Guitar
- Anton Lindsjö – Guitars
- Ola Strandberg – Drums
- Kjell Haraldsson – Keyboard
- Thomas Thomsson – Bass
楽曲紹介
- Parallel Life, Pt.1: A Prophet’s Escape
- Parallel Life, Pt.2: To Change
- Parallel Life, Pt.3: You and Life
- Parallel Life, Pt.4: Hand to the Sky
- Parallel Life, Pt.5: An Otherworldy Purpose
- Parallel Life, Pt.6: A Choice Moment
- Sleeping with the Ghost
- Time Waits
- All Those Faces
- Rain
- Friday
- Never Alone
本家TFKはKing Crimsonをベースにした暗澹さと絶妙な力加減が癖になるメロディを武器としていますが、ハッセのソロである本バンドは北欧を抜け出しどちらかというとRushやKansas、そしてStyxやJourneyといったアメリカン・プログレのハードロックという印象です。
冒頭から20分を超える組曲#1〜6「Parallel Life」が6パートに渡り展開。#1「A Prophet’s Escape」はヴィンテージのハモンドオルガンやハーモニックギターで伝統を踏襲しつつ、ドライブしたギターリフやTFKにはないポップなメロディで大胆にしかけていきます。
#2「To Change」の後半ではアメリカンなリフと変拍子によるリフレイン、手数が多めなドラムやキーボードソロはRush、Dream Theater系です。北欧らしいアコースティックなサウンドから#3「You and Life」、#4「Hand to the Sky」というバラードへ。
リードギターはAnton Lindsjöという表現力豊かなギタリストによるもので、Martin MillerやAndy Timmons系のテクニカルながら繊細かつ滑らかなソロは実に艶めかしい。
#5「An Otherworldy Purpose」と#6「A Choice Moment」で組曲は締めるのですがあまり仰々しいテーマになっていないのがポイント。20分超えでも力まず自然に聴き終えることができます。
#7「Sleeping with the Ghost」はハッセ特有のウォームなボーカルが響くストレートなハードロックナンバー。いかにもアメリカン・プログレ・ハードな感じになっているのはハッセが青春時代に組んだSpellboundというハードロックバンドに由来するためか、本格的なプログレバンドとして活動しながらもルーツここに極まれりという爽やかさです。
#8「Time Waits」は単発曲として10分のプログレ曲。独特な緊張感をコードワークと変拍子で生み出していてヘヴィリフを携えたGenesisと言った具合。MarillionやIQと言ったネオプログレの流れも伺えます。4:04〜のギターソロはこれも秀逸で見事なタイム感で繋ぐ余裕のあるアドリブがオルガンのバッキングと絶妙にマッチする気持ち良さ。
インストパートも充実したこのバンドでハッセが持つ枯れたボーカルを堪能できる#9「All Those Faces」と#10「Rain」。前者はポップロック、後者はアコースティックバラードとなっっていて特に後者では8分半のトラックに乗せて後半盛り上げていくアンサンブルを楽しめます。
#11「Friday」と#12「Never Alone」は共にハードロックナンバーで前者はFlying Colorsなどにもあるような骨太ロック、後者はパイプオルガンの導入からヘヴィでゆったりとしたロックバラード。いずれも自らの音楽ルーツを体現したアグレッシブなスタイルにポップなメロ、そしてプログレッシブな展開をバランスよく配置した聴きやすい一枚になっています!
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タグ: Hasse FröbergThe Flower Kings北欧プログレ
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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