The Beatles「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」: 世界初のコンセプトアルバムはやはり彼らだった!今尚色褪せない53年前の実験的一枚!
by 関口竜太 · 2019-12-31
おはようございます、ギタリストの関口です。
大晦日となりまして、僕自身も今日で仕事納め(白目)。長らく封印していたコーヒーも昨日解禁させ、今朝からはまた朝のお供に戻ってきました。
2019年最終日、どんな記事を書こうかなと思ったのですがこのブログらしく最後はアルバムの紹介で締めることとします!
Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band / The Beatles
サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
The Beatlesはイギリスのロックバンド。
世界初!ロックのコンセプトアルバム
時に、プログレッシブ・ロックの定義の一つに「アルバムを通して一つの作品とする」というものがあります。
それらは一般的にコンセプト・アルバムと呼ばれ、アルバムが単なる曲の寄せ集めでなくそれ一枚で初めて一曲という風にしたり、アルバム全体を通すことでテーマとして意味を持つという新しい創作の形でした。
この考え方はそれまでのポピュラーミュージックにクラシックの組曲を混ぜたもので、1966年12月にリリースされた本作『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』がそんな世界的コンセプト・アルバム第一号と言われています。
気になるそのコンセプトとは、このアルバム自体が『架空のブラスバンド「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(以下:SPLHCB)」のショウである』というもの。つまりビートルズがビートルズから外れて別の役者を演じる非常に先進的なアイディアだったのです。
ただしコンセプトアルバムとしての手法が確立していない以上、事実的な実験要素は#1「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」と#13「A Day in the Life」だけだとJohn Lennonは語っています。しかし同時に、クラシックのような複数の曲を組曲のように仕立てる構想も昔からあり、プログレより先駆けてブームとなったサイケデリック・ロックが沈静化し出したことを受けて流行に対応するため本作の実験に乗り出したというわけです。
とは言ってもこのバンドが当時の流行の最先端なので、最初にナプキンを取る権利があったとは思いますけどね。
アルバムはイギリスで23週連続1位、アメリカビルボードチャートで16週連続1位を獲得。全世界でのトータルセールスは今日までで3200万枚とされています。
アルバム参加メンバー
- John Lennon – Vocal, Guitar, Organ, Harmonica etc…
- Paul McCartney – Vocal, Bass, Guitar, Keyboard, Organ etc..
- George Harrison – Guitar, Sitar, Tambura, Harmonica Chorus, andVocals on “Within You Without You” etc…
- Ringo Starr – Drums, Percussion, Vocal on “With a Little Help from My Friends” etc…
その他参加ミュージシャン
- Sounds Incorporated – Saxophone on “Good Morning Good Morning”
- Neil Aspinall – Tambura, Harmonica
- Geoff Emerick – Engineering
- Mal Evans – Harmonica
- George Martin – Producer
楽曲紹介
- Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band
- With a Little Help from My Friends
- Lucy in the Sky with Diamonds
- Getting Better
- Fixing a Hole
- She’s Leaving Home
- Being for the Benefit of Mr, Kite!
- Within You Without You
- When I’m Sixty-Four
- Lovely Rita
- Good Morning Good Morning
- Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band (Reprise)
- A Day in the Life
アルバムはライブ会場に集まった観客のざわめきを再現したSEからスタート。#1「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」はブラスでの豪華なアレンジが施されているものの根底はThe Beatlesロックンロール。観客の歓声や笑い声などもSEに加えたことはあのジョンを持って実験的と言わしめました。
コンセプトアルバムというと各々の曲はふんわりとした印象になってしまいがちですが、曲単体で聴いても全部聴いたことあるよねというのがThe Beatlesのすごいところで、#2「With a Little Help from My Friends」や#4「Getting Better」、#5「Fixing a Hole」などはその一端。今だから感覚が麻痺しているだけで当時のブリティッシュロックでここまでキャッチーに聴かせるというのは驚愕だと思っています。
一方でマンドリンのトレモロやストリングスをふんだんに使ったシンフォニックな#6「She’s Leaving Home」、壊れたワルツやテンポチェンジが変則的に聴かせる#7「Being for the Benefit of Mr, Kite!」、シタールがオリエンタルな雰囲気を演出する#8「Within You Without You」など、本人たちが否定している割に実験的要素は豊富です。
当時の感覚にトレースしてみると、これがThe BeatlesでなくSPLHCBであるならば色んなジャンルを取り込んで統一感のない音になってもそこまでダメージはないよねといったところなのでしょうか、67年に青春を迎えてないのでなんとも言えませんが彼らが演じるSPLHCBは相当尖ったバンドであることは確かです。
後半は呑気さも感じるブラスセクションからリズム遊びも見られる#9「When I’m Sixty-Four」、サイケの名残かパンニングされたバッキングトラックとお馴染みのコーラスが響く王道のThe Beatlesナンバー#10「Lovely Rita」。#11「Good Morning Good Morning」は鶏の叫びや小鳥の鳴き声などが印象を強めている一方、ブリブリのブラスパートと変拍子が調子外れで空元気な朝を演出しています。
ロックンロールなビートとギターが響く#1のリプライズが実質ライブのエンディングのような感じ。アルバムとしてのエンディングとなる#13「A Day in the Life」は曲の中で二部構成風になっているのが特徴で、祭りの後のように少し寂しく余韻を残し歌われているものの実験的なアルバムは実験で締める定石の上に成り立っています。
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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