V.A「A Prog Rock Christmas」: 雰囲気に合わせて流す曲は決まった?プログレッシブの名人たちで奏でるクリスマスカバー・コンピレーション!
by 関口竜太 · 2019-12-24
メリークリスマスイヴ!ギタリストの関口です。
というわけで今年も街が賑やかな12月24、25日のツーデイズです。
今年は枕元にサンタが現れなかったのですが、妻の元に毎年現れるサンタも保留らしくてどうやら二人に共通して欲しいプレゼントを渡すためパワーアップを図っている模様。
まぁ、そんな茶番はいいとしてイブイブとなる昨夜はずっと動画の編集をしてまして、体力が持てば本日投稿予定です!
ですがせっかくのクリスマスですので二日続けてそんな気分にぴったりのプログレアルバムをご紹介しようと思います!
A Prog Rock Christmas / Compilation
Yesの名の下に集うプログレカヴァーオムニバス
本日ご紹介するのは今年リリースされたばかり、プログレッシブ・ロックの豪華なミュージシャン陣に、有名なクリスマスソングを多数収録したパーティ的コンピレーションアルバム『A Prog Rock Christmas』。
本作は、Yesのリユニオン期やCIRCAでギターやベースなどマルチに活躍するBilly Sherwoodがプロデューサーを務めるカヴァーアルバムとなっています。
Yes関連のミュージシャンには時期こそ被りませんが同じリユニオン期のキーボーディストPatrick Morazや、Asiaでも活躍するGeoff Downesが参加。オリジナルとカヴァーを混同させたスタイルのプログレバンドThe Samurai of ProgのJon DavisonはYesのトリビュートに参加した経験を持っています。
同じイギリスProg RockシーンからはレジェンドJohn Wetton、70年代女性シンフォの代表RenaissanceのAnnie HaslamやCurved AirのSonja Kristina、結成から今年で50年を迎えるHawkwindのNik TunrnerとSimon Houseらが参加。超ベテラン枠を占めています。
オランダからは大人気FocusのThijs Van Leer、ハードロックシーンからは現Deep PurpleやFlying ColorsのギタリストSteve Morse、Wishborn AshのMartin Turnerが参加。District 97の若き女性ボーカルLeslie HuntはMSGのボーカルRobin McAuleyとデュエットを組んでいます。
楽曲はあくまでクリスマスソングなのでプログレッシブ・ロックと呼ぶには力不足なのですが、明日ご紹介したいNeal Morseの件や、Dream TheaterがU2やRushをカヴァーしたファンクラブ向けクリスマスアルバム『International Fan Club Christmas CD 1996』など、実はクリスマス自体はプログレは縁が深いと個人的に思っています。
楽曲紹介
- Run with the Fox – Jon Davison
- Christmas Lights – Kasim Sulton
- Carol of the Bells – Steve Morse
- The Twelve Days of Christmas – Annie Haslam
- Wonderful Christmastime – Billy sherwood & Patrick Moraz
- I Believe in Father Christmas – Martin Turner
- Fairytale of New York – Leslie Hunt & Robin McAuley
- O Come All Ye Faithful – Sonja Kristina
- A Christmas Song – Thijs Van Leer
- You’re a Mean One, Mr. Grinch – Malcolm McDowell
- Linus & Lucy (Charlie Brown Christmas Theme) – Geoff Downes
- Silent Night – Nik Turner & Simon House
- Happy Christmas (War Is Over) – John Wetton
#1「Run with the Fox」はYesのChris SquireとAlan Whiteが共作したProg Christmasソング。軽快なピアノとフルート、深めにかけられたリヴァーブが明るく響き渡るオープニングナンバーです。The Samurai of Progのカヴァーはいつも本家へのリスペクトを忘れずに個性も出してくるので本曲でもそれが見受けられます。
Utopiaなどで活躍するマルチミュージシャンKasim Sultonによる#2「Christmas Lights」。深々とした神聖さを保ちつつきらびやかなアコースティックサウンド、サーフギター、渋めのボーカルなど丁寧な仕事ぶりを感じる一曲です。
#3「Carol of the Bells」は1914年にウクライナの司祭によって作曲されたクリスマス・キャロル。Liberaによるソプラノコーラスバージョンが有名ですが、本作ではスティーヴの泣きのギターによるロックインストとなっています。
#4「The Twelve Days of Christmas」はこちらも有名なクリスマスソング。クリスマスからイエス・キリストの公現祭までの12日間を歌った曲で歌詞では韻を踏む言葉遊びを兼ねているのが特徴。
#5「Wonderful Christmastime」はPaul McCartneyのカヴァー。原曲ではうにょうにょとしたシンセサイザーが特徴的でしたがカヴァーではオルガンやリズミカルなギターが取り入れられYes風に生まれ変わっています。
#6「I Believe in Father Christmas」はKing Crimson、Emerson, Lake & PalmerのGreg Lakeのソロシングル楽曲。タイトルからクリスマスソングに分類されていますが、当のグレッグは生前それを否定していました。ソングライターとしての才能を発揮していたグレッグらしい、歌メロを大切に紡ぐミディアムバラード曲。
#7「Fairytale of New York」はイギリスのロックバンドThe Poguesのカヴァーで、クリスマスソングとしてイギリスでは人気の楽曲。The Pogues自体はロックにケルト音楽を混ぜたことで知られますが、本作のカヴァーではディズニー映画のようなクラシカルで美しい世界観とハーモナイズを効かせたリードギターが印象的なデュエットへと進化しています。
#8「O Come All Ye Faithful」は「神の御子は今宵しも」という邦題で日本でもよく歌われる賛美歌です。コーラスギターのアルペジオとスライドでシームレスな表情をつけるベースが美しく気持ちいいアレンジ。ボーカルも世界観に準じ広がりのあるコーラスで曲を彩っています。
#9「A Christmas Song」。ごめんなさい、この曲は調べたのですが原曲がわからず…結構古いんだろうなという予想はつくのですがFocusのテイスによるフルートと渋い語りが特徴。短い「Tubuller Bells」のような前衛さを感じました。
#10「You’re a Mean One, Mr. Grinch」は1966年にテレビ番組用に作曲されたクリスマスソングですが、なんと歌っているのは映画「時計仕掛けのオレンジ」で有名な俳優Malcolm McDowell。繊細なストリングスでの奏でる穏やかなトラックの元、とてもワイルドでスタイルフリーなボーカルの存在感は抜群です。
#11「Linus & Lucy (Charlie Brown Christmas Theme)」はその名の通りスヌーピーのチャーリーブラウンのテーマ。アナログ盤には収録されていないのでCDかデジタルアルバム限定曲です。イントロの重ためのピアノは原曲通り。凄腕キーボーディストジェフによるジャズテイスト溢れるアレンジに静かに引き込まれます。
#12「Silent Night」は言わずと知れたクリスマスの有名なテーマ。ストリングスとサックスをフィーチャーしニューエイジ音楽のようなリラクゼーション効果が得られそうなインストナンバー。
ラストに満を持して登場するJohn Lennonの#13「Happy Christmas(War Is Over)」。クリスマスソングって個人的に実はそんな好きではなくて、子どものころ大人の思惑で歌わされていた曲という印象が強いんですよね。ですが自分から進んで聴いたこの曲への感動は計り知れず、2001年ごろには反戦歌としてラジオでの使用も禁止されましたが、これからの時代にも間違いなく響いていく確かな名曲だと思います。
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タグ: CompilationEL&PJohn WettonKing CrimsonYes
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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