Banco del Mutuo Soccorso: バンコファースト。EL&P譲りのイタリアンプログレ’72年の名盤!

おはようございます、ギタリストの関口です。

先日、冬至には「ん」が付く食べ物を食べるといいと聞いたのでケンタッキーフライドチキンを買いに行きました。

だいぶツッコミどころの多いチョイスですが、行ってフライドチキンを求める行列を目の当たりにし、そこでもうクリスマスなんだなと痛感しましたね。なのでこのブログも年末とかクリスマスらしい、浮き足立った記事を書きたいわけですが本日も愚直にプログレ紹介です。どうぞお付き合いください。

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Banco del Mutuo Soccorso / Banco del Mutuo Soccorso


Banco Del Mutuo Soccorso

Banco del Mutuo Soccorso(バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ)は、イタリアのプログレッシブ・ロックバンド。通称Banco

ツインキーボードによる豪華なプログレサウンド


Bancoは1969年に兄のVittorio Nocenzi(ヴィットリオ・ノチェンツィ)と弟のGianni Nocenzi(ジャンニ・ノチェンツィ)のキーボーディスト兄弟によって結成されます。

ボーカルにFrancesco Di Giacomo(フランチェスコ・ディ・ジャコモ)が加入すると当時イギリスで発現の兆しを見せていたプログレッシブ・ロックに触発されそれらに続くような音楽を制作していくこととなります。主に影響されたのはGentle Giant、Emerson, Lake & Palmer、Jethro Tullなどでした。

特徴的なのは何と言ってもツインキーボードというスタイルでノチェンツィ兄弟から繰り出されるシンセサウンド、ピアノ、オルガンをフィーチャーしたアグレッシブかつ美しい楽曲の数々でした。

本作は彼らのデビュー作としてバンド名を冠し1972年にリリース。その後1975年には同じくイタリアの名将P.F.Mと共にイギリスの大手Manticore Recordsへ移籍し世界進出に合わせ英語詞による楽曲も用意しますがP.F.Mほどの人気には至りませんでした。

なお、カリスマ的ボーカルのジャコモは2014年交通事故に遭い他界、プログレッシブ界においても大変貴重な存在を失うこととなります。一方でバンドは現在も活動を続けており、今年2019年にはニューアルバムもリリースしています

アルバム参加メンバー


  • Vittorio Nocenzi – Organ, Harpsichord, Clarino, Vocal
  • Gianni Nocenz – Piano, Clarinet, Vocal
  • Marcello Todaro(マルチェッロ・トダーロ) – Guitar, Vocal
  • Renato D’Angelo(レナート・デアンジェロ) – Bass
  • Pier Luigi Calderoni(ピエールルイジ・カルデローニ) – Drums
  • Francesco Di Giacomo – Lead Vocal

楽曲紹介


  1. In Volo
  2. R.I.P (Requiescant in Pace)
  3. Passagio
  4. Metamorfosi
  5. Ⅱ Giardino del Mago
    …passo dopo passo…
    …chi ride e chi geme…
    …coi capelli sciolti al vento…
    Compenetrazione
  6. Traccia

サウンドは極めて王道な70年プログレ。しかしEL&Pと違いギタリストがいるにも関わらずギターへのスポットがあまり当たっていないのもこれまた事実です。

なお、バンド名は共済銀行のことを意味し、アルバムのジャケットには毎度壺型の貯金箱が描かれています。

まずは冒頭#1「In Volo」では荒涼な風が吹きすさぶアンビエントからフルート、そして語りで入っていく民俗学的なナンバー。コーラスによってコードを演奏するのは先に述べたGentle Giantの影響かもしれません。

バンドの代表曲でもある#2「R.I.P」。もちろん英語名は死者を弔うRest In Piece。ツービートによるシンプルなロックンロールですが、トダーロのギターソロはジャズのアプローチが非常に強く連続プリングによる速弾きも披露。10拍子のピアノリフとシンセリードを絡めた演奏で70年代のキーボーディストプレイの中でも特筆すべき異空間へ誘ってくれます。

チェンバロによる演奏がクラシカルに響く小曲#3「Passaggio」を抜けると10分の大作#4「Metamorfosi」へ。イントロからクラシックの堅実な構築美とジャズの知的さの融合はProcol HarumやEL&Pの影響を伺わせます。曲はギタリストがいる短めのタルカスといった具合で、ピアノの表現力やタイトなリズムブレイクから緩急あるドラマティックな展開は非常に魅力的です。

そしてそれより長いのが#5「Ⅱ Giardino del Mago」という4パート18分の組曲。怪しげな曲の展開やヘヴィなギターはKing Crimsonも思わせますがオルガンがサポートに入っているためロックとしてはくどくなりすぎません。

ボーカルのジャコモの表現力も一級品で、静かなパートではウィスパーに、激しいパートではリズミカルかつ艶やかに歌い上げ、このバンドにとってのボーカルの重要性を歌で説いています。EL&Pの影響をまざまざと思い知らせてくるオルガンアプローチの他、ユーロプログレらしい豪華で豊かなサウンド構築で耳から心が満たされる傑作だと思います。

ラスト#6「Traccia」はツインピアノのクラシカルなシーケンス的リフを他のアンサンブルで徐々に盛り上げていく2分ほどの楽曲。ボーカルはメンバーによるコーラスを主体としていてメロディックな3連のリズムはラストにして行進を思わせる演出です。曲の最後はオルガンのフリーから爆発しそうなボリュームでのキメを加え終幕となります。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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