Special Providence「Will」: プログレフュージョンは今これを聴いてるよ→推しポイントは全パートをフィーチャーした世界最高レベルのメロディとテクニック!

おはようございます、ギタリストの関口です。

Will / Special Providence


Will

Special Providenceはハンガリーのプログレッシブ・メタル/フュージョンバンド。

来歴


ここ数年で一気にそのテリトリーを広げてきたテクニカルフュージョン、もしくはプログレッシブ・メタル・フュージョンというジャンル。

スウェーデンのギターメーカーStrandbergやポーランドのMayones Guitarsを筆頭に、よりストレスの少ないプレイアビリティを目指したギター製作は同時にメタルギター界の成長へと導き、日々進化を遂げるテクニカルミュージックはよりストイックで彩色のあるものへ変化してきました。

アメリカではPolyphiaやChonが活躍し、ギタリスト単体においてもPlini、Sara Longfield、CovetのYvette Youngなどマス・ロック的なインストスタイルが流行。その格調高さと繊細さ、時折見せる激しさから大人気のジャンルとなっています。

ハンガリーで2004年に結成されたSpecial Providenceもそんなプログレメタル・フュージョンの先駆け的存在。

設立当初のメンバーキーボードZoltán CséryとドラムÁdám Markó。さらにそこへギターMárton KertészとベースAttila Fehérváriが加わり欧米とは違う東欧ならではのシャープでスパイシーな楽曲を多数展開しています。

プログレメタル・フュージョンというジャンルに関してはバンドの構成が比較的シンプルで特にギターの幅広いトーンやタッピングを駆使した鍵盤的アプローチが多く見られるのですが、Special Providenceはオリジナルメンバーにキーボーディストがいたこともあって単に色付けに止まらない積極的なキーボードフィーチャーが伺えます。

そんな彼らは2007年には1stアルバム「Space Cafe」をリリース。続く2008年にリリースした「Labyrinth」が世界的にも高い評価を得ることとなり、バンドはこのアルバムを伴ったライブ映像のリリースに漕ぎ着けるまでに至ります。さらに4年後の2012年には3rdアルバム「Soul Alert」を解禁。アメリカで放送されている「Gagliarchives Progressive Radio」にて9週連続チャート1位という記録を打ち立てます。

このように順風満帆なセールスを続けたSpecial Providenceでしたが、この後でオリジナルメンバーであったキーボードのセリーが脱退、新たに稀代のメロディメーカーであるZsolt Kalteneckerが加入します。

さらにこれを転機と読んだかレコード会社もイギリスのGiant Electric Peaへ移籍します。ここはインディーズレーベルでありながらIQやBig Big Train、Spock’s Beardといったプログレッシブの名門で、このGiant Electric Peaよりリリースされたのが2015年作「Essense of Change」

レーベル移籍はバンドをよりハードな方向性へ押し上げただけでなく、同年のツアーではSpock’s Beard、翌2016年にはHakenを招待し世界的なプログレッシブ・ロックバンドとして名を連ねていきました。

本作「Will」はそんな止まることをしらないバンドの2017年リリースの現状最新作です。

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アルバム参加メンバー


  • Ádám Markó – Drums, Percussion
  • Márton Kertész – Guitar
  • Attila Fehérvári – Bass
  • Zsolt Kaltenecker – Keyboard

楽曲紹介


  1. Akshaya Tritiya
  2. Irrelevant Connotations
  3. A Magnetic Moment
  4. Will
  5. Neptunian Pyramid Chill
  6. Slow Spin
  7. The Rainmaker
  8. Mos Eisley
  9. The Ancient Cosmic Bubble
  10. Distand Knowledge

#1「Akshaya Tritiya」はシンセサイザーによるリズムサンプリングをベースにバンドが加わっていくオープニング。2:07〜はSpecial Providenceの武器とも言える伸びやかで美しいメロディやDjent寄りのダイナミックなギターサウンド、さらにキーボードとギターとのソロ回しなど早くもテクニカル要素満載の一曲です。裏で鳴るディスコ風シンセサウンドもこの手のジャンルだと非常に新鮮です。

ポリリズムの複雑なシーケンスを有した#2「Irrelevant Connotations」。メロディックなコードアプローチに挟まれるようにめまぐるしい展開が続く超絶技巧楽曲。

各楽器へのフィーチャーを怠らないバランスの良い仕上がりになっているのが2015年以降のバンドのスタイルで、ベースが前に出てくる#3「A Magnetic Moment」#6「Slow Spin」#7「The Rainmaker」など尖りまくったアンサンブルの応酬が堪能できます。

そんなベースとドラムが支えるタイトルナンバー#4「Will」ではこの手のジャンルの王道とも言えるクリーントーンのディレイリフとの絡みがスタイリッシュです。ギターのリードはモードを意識した浮遊感のある仕上がりに。

個人的にこのアルバム一番エグいのが#5「Neptunian Pyramid Chill」。基本は変拍子を交えたプログレメタルなのですがスキップ気味なメロラインとそれを支えるソリッドなアンサンブルが素晴らしい!3:21〜のシンセソロは昔ながらのプログレサウンドを踏襲していて新しくなりすぎない絶妙な線引きが妙に心地よい一曲です。

 

開幕フュージョンらしいキメと軽快なタッチのピアノが秀逸な#8「Mos Eisley」。変拍子を駆使したリズム遊びはDream Theater的な部分もありますが複雑なコードワークがオシャレ感を増してます。Hakenとのツアーの影響からか、ギターのRichard Henshall率いるNova Collectiveに近いサウンドスケープを有しています。

アルバムで最も長い7分半の#9「The Ancient Cosmic Bubble」はデジタルブーミーなサウンドと伸びやかなリードギターとの対比がミステリアスかつ美しい一曲。新任のキーボーディスト、カルトネッカーを立てたヘヴィネスチューンだと思います。

ラストナンバー#10「Distand Knowledge」はラストらしいタイトで素早いフュージョンソング。ギターの高速タッピング術やJordan Rudess的なキーボードソロなど、最後まで力を緩めない超絶技巧ぶりに溺れることができる強力な一枚です!

 

 

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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