Rosalie Cunningham: 2019年の現代にこんな音出せる!?英国のサイケデリック・プリンセスによるソロ転向1stアルバム。

おはようございます、ギタリストの関口です。

本日も2019年作、ブリティッシュ・サイケです!

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Rosalie Cunningham / Rosalie Cunningham


Rosalie Cunningham -Digi-

Rosalie Cunningham(ロザリー・カニンガム)はイギリスのシンガーソングライター。

イギリスが生んだ女性サイケデリック・シンガー


Rosalie Cunninghamの生まれは1990年のイングランド。音楽批評家である父親とヨガ講師である母親との間に長女として生まれます。

イギリスの古き良きロックサウンドに触れて育ったロザリーのバックグラウンドにはThe Beatlesはもちろん、Slade、Syd Barrett期のPink Floyd、David Bowie、Small Face、Genesis、Black Sabbathなどが内在しそれが大人になった彼女の音楽を形成していきます。

2007年、ロザリーはサイケデリック・ロックバンドIpso Factoを結成。同時にロザリー自身もプロとして活動を開始します。バンドは4枚のシングル及びEPをリリースした後、2009年に解散をしていますが、その間にロザリーのパーソナルな活動ではイギリスのポストパンクバンドThe Magazineや、Artic MonkeysのAlex Turner率いるスーパーグループThe Last Shadow Puppetsにおいてバックボーカルを務めるなど大役もこなしていました。

2011年には新たにロザリー主導の下Pursonを結成。こちらはレコード会社との契約もあり3枚のアルバムをリリース。ライブ&ツアーも精力的に行うことで知名度を上げ、2015年には英PROG誌が主催するプログレッシブ・ミュージックアワードにおいてヴァンガード賞を受賞しています。

惜しくもバンドは2017年に解散。しかしロザリーは曲作りを怠りませんでした。

ロザリー曰く、それはバンドがライブを行うための曲ではなく自己表現によるカタルシスのためのものであり、そうすることで音楽に対する自分との対話を可能にして無意識に束縛から解放されていったようです。

そうして2019年、ソロ活動へと転身したロザリーの新たな一歩となる1stアルバムが本作「Rosalie Cunningham」となります。

メンバー


  • Rosalie Cunningham – Vocal, Guitar
  • Ross Wilson – Bass, Guitar, Drums, Percussion on #5
  • Teddy Trower – Drums on #1
  • Samuel Thompson – Drums on #2
  • Mark Stonell – Keyboard
  • Catherine Rice – Violin on #1
  • Geraldine McEwan – Violin on #1
  • Dastardly Dashing Darius Of Dudley – Spoken Word on #8

楽曲紹介


  1. Ride on My Bike
  2. F**k Love
  3. House of the Glass Red
  4. Dethroning of the Party Queen
  5. Nobody Hears
  6. Riddles and Games
  7. Butterflies
  8. A Yarn from the Wheel

まるで70年代がそのままやってきたかのような気骨のあるサイケデリック・ロックが最大の武器。イギリスで女性ボーカルのサイケというとGhostというグループが有名ですがそこまでトラッドではなく、やはりThe Beatlesからの影響が強そうです。

#1「Ride on My Bike」からブリティッシュの香り広がるダーティなギターとシンセサイザーとの絡みが秀逸。制作されたMVでは操り人形となったり森の中でのびのびと歌うロザリーが映し出されます。シュールなチープさはさておき、これはバンド活動からソロへ転向したメタファーかと思われます。

 

#2「F**k Love」はその過激なタイトルとは裏腹に非常にトラッドフォークな一曲。レスリースピーカーによるギターのオブリはPink Floydっぽいですね。リードギターのサウンドもデビュー当時のJeff Beckのようで今こんな音作れるのかと返って新鮮です。

#3「House of the Glass Red」もフォークな方向性は変わらず、波形を少しずらしたことで起こるコーラス効果を狙ったボーカルパートが印象的。メロディも単調ながら70年代特有の温かみがある楽曲です。

#4「Dethroning of the Party Queen」Beggars Operaを彷彿とさせるドラマチックな楽曲。どことなくオリエンタルで魔性な空気も感じますね。

#5「Nobody Hear」は美しいピアノとメロトロンによる長めのイントロから12弦ギターのアルペジオもきらびやかなバラードソング。終盤に向かうに連れ徐々に豪華なトラックとなり、テンションが上がっていく様をうかがわせます。

ポップなメロディとテクニカルにキメるブレイクが特徴の#6「Riddle and Games」。サビは激しくハードな演奏が楽しめLed ZeppelinやRolling Stonesを彷彿とさせます。#7「Butterflies」はアコギとフルートでいただくフォークポップソングとなっています。

ラストナンバー#8「A Yarn from the Wheel」は13分を超える大作。#1からテーマの一つとして提示されているイントロのダーティなリフはLed Zeppelinの「Immigrant Song」を思わせます。メタリックな3連のバッキングは言わばサイケデリック・マーチング。4:05〜のスローパートではマンドリンのようなギターのアプローチも聴かれ黎明期に当たるプログレッシブ・ロックの様相です。6:52〜はブリブリとしたシンセベースのリフとメロトロンが引っ張るシャッフルパート。Pink Floydの「Money」を思わせました。ハードなサウンドはキーボードやアコースティックギターによる音のきらびやかさでより彩られステレオ感のあるプロダクションなども70年代のそれを存分に楽しめる造りとなっています。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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