Magic Pie「Fragments of the 5th Element」: DT系統を受け継ぐノルウェー産プログレ最新作!魔法のようなサウンドの超進化を体感せよ。

おはようございます、ギタリストの関口です。

今日ご紹介するのも2019年作プログレ。個人的にも懐かしい、Magic Pieでございます。

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Fragments of the 5th Element / Magic Pie


Fragments of the 5th..

Magic Pie(マジック・パイ)はノルウェーのプログレッシブ・ロック/メタルバンド。

来歴


Magic Pieは2001年、ギタリストであるKim Stenberg、ボーカルEirik Hanssen、ベースJohn Kamphaug、ドラムJan Torkild Johannessen、キーボードGilbert Marshall、そしてセカンドボーカルとしてAllan Olsenが加わった6人により結成されました。

音楽スタイルはキムが提示したプログレッシブ・ロックをベースとしたもので、Genesis、Pink Floyd、Kansas、Deep Purple、Yesなどの要素を取り込んだ70年代のクラシカルなプログレにハードロック、ヘヴィメタルを融合。早く言えばDream Theater系ですね。

結成から2年後の2003年にはベーシストが現在のLars Petter Holstadへ交代となり、2005年には1stアルバムとなる「Motion of Desire」をリリース。少し細身のメタルサウンドながらテクニカルな演奏力の高さとポップなメロディが伺え、開幕20分を超える大作などバイタリティにも溢れる一枚となりました。

2007年リリースの「Circus of Life」期には、セカンドボーカルであるアランが脱退しEirikur Haukssonへ交代(⚠️オリジナルメンバーであるEirik Hanssenと名前が少しややこしい)、またそこから5年後の2012年にはキーボーディストのギルバートが自身の音楽に専念するため脱退、新たにErling Henangerが迎えられ現体制が出来上がります。

また故郷ノルウェーのみならず海外のプログレフェスでも小さいながら常連となっていてアメリカのCruise to the Edge、イタリアの2Days +1 Progrock Festival、 Sweden Rock Festival、2016年にはドイツのThe world’s major prog-rock festivalへの出演も果たしています。

本作「Fragments of the 5th Element」前作から4年ぶりとなるファン待望の一枚。バンドデビュー15周年に向けてモダン・プログレの大海に一石を投じています。

アルバム参加メンバー


  • Kim Stenberg – Guitar
  • Lars Petter Holstad – Bass
  • Eirikur Hauksson – Vocal
  • Jan Torkild Johannessen – Drums
  • Eirik Hanssen – Vocal
  • Erling Henanger – Keyboards, Vocal

楽曲紹介


  1. The Man Who Had It All
  2. P&C
  3. Table For Two
  4. Touched By An Angel
  5. The Hedonist

驚くほどシンプルでコンパクトな全5曲。

率直な感想としては音のクオリティが格段に上がったという印象。過去のアルバムでは特にギターに関して音の細さが指摘されていましたが本作で完全に克服。また90年代以降のプログレッシブなアプローチにも富んでいて、単にテクニカルなだけではないこのジャンルのファンがアクセスしやすい造りとなっている点で大いに評価できます。

#1「The Man Who Had It All」からDream TheaterやNeal Morse的なテクニカルスタイルを存分に発揮していきます。しなやかさを獲得したバンドサウンドおかげでハードなプレイにも余裕が伺え、ポップなアプローチへの繋ぎもより自然体へと進化しています。

 

メタリックなブレイクと多重コーラスが印象強い#2「P&C」。色鮮やかに明るいコーラスと変拍子を交えたメロディックな一曲でYesやGenesisへの回帰を感じます。

続く#3「Table for Two」は楽曲こそコンパクトでありながらイントロのギターソロや随所で現れるSAW系シンセリードなどしっかりプログレッシブを踏襲したポップなナンバー。

前半3曲が短いため早くも終盤に差し掛かると#4「Touched By An Angel」John Petrucci的なギターのインプロソロが聴きどころの8分のロックバラード。Magic Pieの持ち味であるメロディアスさと美しいコーラスを武器にエイリクのソフトタッチなボーカルが曲に感動を生んでいます。

ラストとなる#5「The Hedonist」23分に及ぶ超大作となった楽曲はまごう事なき本作のハイライト。イントロは静かなストリングとフルートからバンドでのキメというクラシカルかつ王道なシンフォニック展開。このパートではスリリングな場面も有しオルガン、ギターソロ、さらに続くキーボードソロと系統としては完全にNeal Morseのそれです。

ボーカルパートはThe Flower KingsやA.C.Tと言った近年の北欧プログレを支える有望バンドたちを想起させこの4年の集大成を実感として噛みしめることができます

6:50〜は徐々にボリュームを抑えていきアコースティックなバラードパートへ突入、この展開が好きな人はきっと多いはずです。バックメロディのフルートと12弦ギターでのアルペジオがLyle Mays & Pat Methenyの「It’s For You」を彷彿とさせ壮大な旅を表現するこの曲にも非常にマッチしていますね。

13:27〜は4分半以上に渡る超絶インストパート。これも従来のMagic Pieにはなかった、ファンが思う「痒かった」部分であり、ようやくそこへ手が届いている現実にリスナーとしては嬉しさしかないですね。ラストはシンフォニックで壮大な演奏にこれでもかというくらいのギターソロとキーボードソロが泣いてフェードアウト。

2019年のここに来てこのアルバムに出会えてよかったなと思える一枚。Dream Theater、Neal Morse、Spock’s Beard辺りがお好きな方はもちろん、初期のMagic Pieを聴いたまま針が止まってしまっている方も是非本作でタイムクロックの更新をオススメします!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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