RPWL「Tales from Outer Space」: ジャケットで損しそう!?ドイツのポスト・フロイドバンドの最新作が名作すぎる!
by 関口竜太 · 2019-12-08
おはようございます、ギタリストの関口です。
Opethのライブ熱が冷めやらず昨日も一日頭から曲が離れないあるあるでした。
そういえば、ライブレポートの記事において「お子さんが19歳」と言いましたが正しくは「お父さんが90歳」という初歩的リスニングミス。ご指摘をいただきすでに修正済みです。
さて気を取り直しまして本日もプログレご紹介していきます。2019年リリース作です。
Tales from Outer Space / RPWL
RPWLはドイツのプログレッシブ・ロックバンド。
Pink Floydの意思を継ぐドイツ産プログレ
RPWLの前身はドイツで80年代後半より活動していたシンフォニック系ロックバンドViolet Districtに当たります。
ネオプログレッシブ・ロックが勃興した80年代の代表格MarillionやUK五代プログレバンドPink Floydから影響を受けたこのバンドは、1992年には「Terminal Breath」というアルバムをリリースしこちらのアルバムは高い評価を受けることになります。しかし、一時は大手レコードレーベルBMG Ariolaから関心を引くもついに契約までには至りませんでした。
バンドはメンバー変遷といくつかのバンドとの合併なども繰り返しますがそれ以上音楽的な発展は訪れず1997年に解散の節目を迎えます。
解散したViolet Districtに所属していたギタリストKalle WallnerとベーシストChris Postlは新たなバンド結成に向け、当初はPink Floydのカヴァーを行うセッションバンドを結成。キーボードボーカルのYogi LangとドラマーPhil Paul Rissettioをメンバーに迎えてそれぞれの頭文字からRPWLを名乗るようになります。
そしてそんなカヴァーで培った演奏力とリスペクトする音楽性を持って2000年に1stアルバム「God Has Failed」でデビュー。この時創設者の一人であったクリスがバンドを離脱しています。
アルバムはまさしくと言ってもいいサイケデリック・ロックサウンドと浮遊感のあるアンビエントを有しており、アルバム内でトラックを分割した組曲は「Shine On You Crazy Diamond」をも思わせます。
2003年にはドラムのフィルが2ndアルバムリリース後にバンドを脱退、2005年にクリスがバンドに復帰しますがいずれにせよ2010年には再び脱退をしています。
リズム隊が出たり入ったりとするRPWLですがそれでも2010年以降のメンバーは比較的安定。2010年までに新ドラマーMarc Turiauxと新ベーシストWerner Tausを迎え2012年、5thアルバム「Beyond Man and Time」をリリースしています。
RPWL「Beyond Man and Time」: ドイツの音楽ルーツはプログレだった!?正統派ネオプログレRPWLをご紹介。
アルバム参加メンバー
- Yogi Lang – Vocals, Keyboards (1997-present)
- Kalle Wallner – Guitars, Bass (1997-present)
- Markus Jehle – Keyboards (2005-present)
- Marc Turiaux – Drums (2008-present)
ゲストミュージシャン
- Guy Pratt – Bass on #4
なお前作まで参加していたベーシスト、ウィーナーは本作前に脱退しており代わりにギタリストのカレやゲストであるGuy Prattが弾いています。
楽曲紹介
- A New World
- Welcome to the Freak Show
- Not Our Place to Be
- What I Really Need
- Give Birth to the Sun
- Far Away from Home
まず目を引くのは、おそらくプログレッシブ・ロックが好きな人たちとは毛色の合わない本作のジャケット。宇宙からの侵略をテーマにしたイラストはどちらかというとパンク・ロックを思わせる強烈なデザインです。
しかしサウンドはサイケデリック、楽曲はメロディアスかつプログレッシブです!
#1「A New World」から8分を超えるロックナンバーを展開していきます。冒頭のメロトロンなどおなじみのサウンドからヘヴィなリフのイントロを経てヨギのボーカルがナチュラルに入っていきます。ブリッジではギターロータリーサウンドとボーカルにかかったフィルターやインターで流れるシンセが宇宙的な浮遊感を醸し出していて、ロックなサビとのコントラストを形成していてGood!
David Gilmour風のアルペジオやシンセのアンビエントから始まっていく#2「Welcome To the Freak Show」。「Freak Show」というだけあってSEに歓声が流れるなどアプローチには余念がないですが、曲そのものはスローテンポでダークなダイナミズムが特徴。
10分を超える大作#3「Light of the World」。メロディアスで哀愁に富んだリードギターと独特な緊張感を持つコード進行によるバラード作となっています。バンドのロックな演奏に味付けをするようにシリアスなストリングスもしっかり仕事をこなしています。極め付けはカレによるエモーショナルな長尺ギターソロ!個人的にはGary Mooreも思わせる哀愁ぶりだと思います。
冒頭からスリリングなストリングスで幕を開ける#4「Not Our Place to Be」。ゲストベーシストのガイはPink FloydやDavid Gilmourバンドのツアーにも参加するベテランミュージシャン。近年ではフロイドのドラマーNick Masonらと共にSaucerful of Secretsとしても活動中。
お次は#5「What I Really Need」。イントロのギターはこれまたギルモアが開拓したディレイテクニックではありますが、その実曲はポップでメロディアスなU2的ロックナンバー。視界の拓けた爽やかなサウンドは万人にプレゼンできるポテンシャルを持っています。
9分ある王道プログレを展開している#6「Give Birth to the Sun」。マルクスのキーボードを前編でフィーチャーしていて、味わい深いメロトロンサウンドを堪能することができます。中盤以降は「Another Brick In The Wall」風のリフも登場する長いインストパートの後フェードアウトで締めています。
ラストソング#7「Far Away from Home」はヨギの優しいボーカルとピアノで聴かせるバラードとなっていますが、#3同様カレのギターソロはエモーショナルで抜けのいいチョーキングが気持ちいい一曲。サビの締め方もブリティッシュ的で最高に刺さりますね。
アルバム自体は今年の前半にリリースされようやく聴けた一枚でしたが、個人的に2019年のベストアルバムに名を連ねるほど名盤でした。おすすめです!
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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