Spock’s Beard「The Kindness of Strangers」: 初心者にもオススメのチュートリアル的プログレの典型!

おはようございます、ギタリストの関口です。

Neal Morseが運営するRadiant Recordsより、ブラックフライデー+クリスマスセールのお知らせが届きました!

Black Friday Specials

ニールのソロ過去作やTransatlantic、そしてMorse Festというニール主催のライブアルバムなどが破格の提供となるファン向けのセール。中には「A Proggy Christmas – Prog World Orchestra」というRadiant Records限定のクリスマスアルバムもラインナップしており、こちらも4.99ドルと超破格。

セールは月曜の深夜までらしいのでApple Musicから撤退してしまったニールの音楽に興味がある方はお見逃しなく。今日はこちらをご紹介していきます。

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The Kindness of Strangers / Spock’s Beard

KINDNESS OF STRANGERS

Spock’s Beardはアメリカのプログレッシブ・ロックバンド。


1992年のロサンゼルス、兄でギタリストのAlan Morse、弟でキーボードボーカルを務めるNeal Morseの兄弟を中心に結成されたSpock’s Beard。

1994年にアルバム「The Light」でデビューして以降、YesやGenesisといった70年代UKプログレの意思をたっぷりを受け継ぎ、そこにKansasやRushといったアメリカンハードを足した大作志向のプログレッシブ・ロックを展開します。

基本的にソングライティングは弟のニールが行なっており、失われたYesの再来とアメリカンらしいポップな歌で本国のプログレッシャーたちには特に人気が高いです。

本作は1998年にリリースされた3rdアルバム。基本的な方向性は現在のニールからしても変わっていませんが随所にここでしか聴けないアプローチがあるので紐解いていきましょう。

アルバム参加メンバー


  • Neal Morse – Vocal, Keyboard, Guitar
  • Alan Morse – Guitar
  • Nick D’Virgilio – Drums, Vocal
  • Dave Meros – Bass
  • Ryo Okumoto (奥本亮) – Keyboard, Mellotron

楽曲紹介


  1. The Good Don’t Last
    Ⅰ. Introduction
    Ⅱ. The Good Don’t Last
    Ⅲ. The Radiant Is
  2. In the Mouth of Madness
  3. Cakewalk On Easy Street
  4. June
  5. Strange World
  6. Harm’s Way
  7. Flow
    Ⅰ. True Believer
    Ⅱ. A Constant Flow of Sounds
    Ⅲ. Into the Source

10分超えの大作が3曲、他は4〜5分のミドルナンバーが犇めきあった全7曲による構成。ちなみにオリジナル版はイギリスとドイツで共同運営をしているGiant Electric Peaよりリリースされていますが、後にRadiant Recordsから「スペシャルエディション版」としてラジオ用に短く編集されたバージョンとデモを含むディスク2がセットとなったバージョンがリリースされています。

#1「The Good Don’t Last」から3部構成10分の大作ナンバー。Emerson, Lake & Palmerを彷彿とさせるエレピやオルガンによるイントロからアコギを抱えるニールが浮かぶアメリカンロックらしい歌メロを展開しています。また後にニールが立ち上げる「Radiant」はここから取られたと思われます。

#2〜#5までは先ほど言ったミドルナンバーが続きます。

#2「In the Mouth of Madness」はオーケストラクラッシュを使用しバンドのシリーズである「Thought」を思わせるカオスなアンサンブルでアランによるギターのアーミングが強烈。彼はニールが脱退した後も、現在までバンドを引っ張る中心人物ですがギタリストとしては非常に幅広いバックグラウンドを持っているのが特徴です。中盤のキーボードソロは日本人キーボーディスト奥本亮によるモーグアプローチ。

#3「Cakewalk On Easy Street」変則的なピアノのリフで聞かせる浮遊感あるイントロが特徴的。荒々しいギターサウンドのリフとシンフォプログレの融合はこのバンドならではのケミストリーですのでそこも楽しめるポイントです。

#4「June」はアコースティックな雰囲気のバラードソング。厚めに重ねられたサビでのコーラスが美しい一曲。#5「Strange World」はコーラスエフェクトで揺らしたシンセリードが味を引きだすナンバー。ご機嫌でワールドポップなノリ、そしてここまでのコンパクトな曲の構成がアルバムのテンポをよりよくしていると言えます。

さて、いよいよ後半戦、#6「Harm’s Way」Yesの持つオルガンサウンドや70年代当時の怪しさを引き出したプログレッシブな一曲。ハードに展開するインストと穏やかなバラードを思わせる歌メロ、裏でなるメロトロンなどプログレッシブ・ロックを理解するチュートリアルとしてもお勧めできるナンバーです。中盤以降の6:48〜は非常に「Roundabout」。

ラストとなる#7「Flow」3部構成となった組曲で16分に迫る大作ナンバー。イントロは様々な表情を見せ各人見せ場が作られています。「True Believer」の歌メロはここまで聴いて来たリスナーなら想像に容易い展開ですので素直に受け入れましょう。「A Constant Flow of Sound」ではまだオールドスクールなギターサウンドがなんとも懐かしいビートパート。ドラムのニックとベースのデイヴのグルーヴが気持ちいいです。エンドパートとなる「Into the Source」はお得意のシンフォニックロックで大団円な締め。

芸術点の高いアプローチとアクセスしやすいコンパクトな楽曲とのバランスが取れた良作です!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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