今更人には聞けない!?「北欧の暗黒神」Opethを一挙に解説!【文字起こし+α】
by 関口竜太 · 2019-11-22
おはようございます、ギタリストの関口です。
先日Opethってどんなバンドなのか?という趣旨の解説動画をアップさせていただいたのですが、今日はこれを元に文字起こし的に話をしていこうと思います!
元動画はこちら▼
Opeth(オーペス)はスウェーデンのプログレッシブ・メタルバンド。
現在のメンバー
- Mikael Åkerfeldt (ミカエル・オーカーフェルト) – Vocal, Guitar 1990-
- Fredrik Åkesson (フレデリック・オーケソン) – Guitar 2007-
- Martín Méndez (マーティン・メンデス) – Bass 1997-
- Martin Axenrot (マーティン・アクセンロット) – Drums 2006-
- Joakim Svalberg(ヨアキム・スヴェルベリ) – Keyboard 2011-
音楽的特徴
ダウナーでインテレクチュアル(知的)な楽曲にデスヴォイスとクリーンヴォイスを使い分け、複雑に絡む「動」と「静」の対比をしばしば表現しています。その音楽性や荘厳な雰囲気から日本では「北欧の暗黒神」と呼ばれています。
1970年代を代表するイギリスの五大プログレッシブ・ロックバンドの中ではとりわけKing Crimsonからの影響が強いと思われます。
バンド名の由来はイギリスの作家Wilber Smith (ウィルバー・スミス)の小説「The Sunbird(1972年)」に登場する月の都「Opet(オペット)」から取られていまして、小説のWikipediaにも記載があります。
Opethの歴史
結成~デスメタル前期
1990年にストックホルムでボーカリストDavid Isberg (ダヴィッド・イズベルグ/イズベリ)が中心となり結成されたOpeth。結成当初、ベーシストとして誘われたのが現在のボーカルであるMikael Åkerfeldtでした。しかしバンドがデビューする頃にはすでに創設者のダヴィッドに代わってミカエルがフロントマンを務めることになります。
そんなデビューアルバム「Orchid (オーキッッド)」は1995年にリリース。
King Crimson直系とも言えるダウナーなサウンド構築に、ミカエルのフライなデスヴォイスにメロディックなギターリフ、裏メロ、さらに時にはテンポを一気に落とし哀愁たっぷりの美しいアコースティックサウンドを奏でることで、攻撃的なデスメタルとは相反する二面性を同居させた「静と動」の体現者として独自のスタイルを築き上げます。
続く2ndアルバム「Morningrise (モーニングライズ)」では収録された5曲全てが10分を超え、さらに「Black Rose Immortal」という20分超えの大作を生み出しています。深みのある音楽は当時から抜きんでていましたがクリーンヴォイスとしてのアプローチはまだまだ薄いものでした。
1997年、「Morningrise」のツアー終了後にミカエルと当時のギタリストPeter Lindgren(ペーター・リンドグレン)は個人的な理由から当時のベーシストJohan De Farfalla(ヨハン・デファルファーラ)を解雇します。しかし、その通達の事実を当時のドラマーAnders Nordin(アンダース・ノルディン)に行わなかったために反感を買ってしまいそのノルディンも脱退してしまう結果を招きます。
このことで新たにメンバー募集をかけたところ名乗りを上げたのが元Amon AmarthのドラマーMartin Lopez (マーティン・ロペス)とベーシストMartín Méndez (マーティン・メンデス)。二人は兼ねてよりOpethのファンで、ミカエルが掲示したメンバー募集の広告を見て他に応募者が現れないようにするため自ら広告を削除し応募に漕ぎ着けたと言われています。
そしてリリースされたのが3rdアルバム「My Arms, Your Hearse(マイ・アームズ・ユア・ハース)」。レコーディングの際にはまだメンデスの加入までは至っておらずドラムのロペスのみ参加した3人体制による制作となりましたが、その後メンデスも正規メンバーとなっています。
アルバムは新ドラムのロペスとミカエルの弾くベースとの間に若干のぎこちなさを感じるんですが、愛や人間関係について歌う新しいブラックメタルとしての形、コンセプトアルバムとしての統一感、そしてそれらの曲を書き上げたミカエルとリンドグレンのソングライティングセンスが光る作品として各専門家からも高い評価を受けることになります。
またこのアルバムから曲のブリッジがクリーンヴォイスで歌われるようになります。
翌1998年、メンデスが正式にOpethとして迎えられるとですね、プロデューサーには前作に引き続きスウェーデンのメタルバンドDream EvilのギタリストRichie Rainbow(本名:Fredrik Nordström)を迎え、半年の歳月を経て4thアルバム「Still Life(スティル・ライフ)」が制作されました。
このアルバムは前作に引き続きコンセプトアルバムなのですが、いくつか「初めて」となる事例があります。まずは現体制まで続くベーシストメンデスの初参加。それと前作からクリーンヴォイスが解禁されたことによるバラード(「Face of Melinda」)も登場、さらに2019年の最新作「In Cauda Venenum」までジャケットアートを担当するTravis Smithとの良好な関係が始まるのも本作が初めてとなります。次いでジャケットにバンドロゴだけでなくタイトルまで記載されたのも本作が初出となります。
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結成からデビュー、そしてデスとクリーンが共存したダウナーメタルの形として音楽性を確立するのがこのデスメタル前期になります。
Steven Wilsonとの出会い~デスメタル後期
2000年に入るとミカエルはある出会いを果たします。
それがイギリスのプログレッシブ・ロック/メタルバンドPorcupine TreeのフロントマンであるSteven Wilson(スティーブン・ウィルソン)ですね。スティーブンは自身もミュージシャンである他に音楽プロデューサー、サウンドスケープとしても敏腕でKing CrimsonやYes及びSteve Hakett、Gentle Giantなどの有名バンドのリマスターやリミックスを担当していたりします。
菜食主義であり無心論者、タバコは吸わずお酒は嗜む程度、音楽に対する理念は「主張を押し付けるのではなくリスナーと感情を共有すること」という結構お堅い人物で、決して扱いやすいとは言えないのですがこれがミカエルと意気投合します。
そしてスティーブンをプロデューサーに迎え制作されたのが5thアルバム「Blackwater Park(ブラックウォーター・パーク)」。スティーブンの助言もありこの頃から鍵盤楽器を積極的に取り入れることで単なるデスメタルで終わらない深淵なる世界観を濃くし、Opeth史上最強の名盤と名高い結果を残します。
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その後ですね、2作品同時リリースを予定されるも結局半年間隔でリリースされた2002年の6th「Deliverance(デリヴァランス)」、2003年の7th「Damnation(ダムネイション)」とスティーブンがプロデュースに当たっています。ちなみに前者はOpethのサウンドシンボルを追求したエクストリームメタルアルバム、後者はクリーンヴォイスのバラードが主体となった作品で、Opethのバンドテーマである「動と静」を2作品で表現しようとしていたんですね。
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2005年には新たなキーボーディストPer Wiberg(ペル・ヴィベル)を迎えセルフプロデュース作8th「Ghost Reveries(ゴースト・レベリーズ)」をリリースしますが、翌2006年にはロペスが健康上の理由で脱退、さらに2007年今度はギターのリンドグレンもと、相次いでバンドを去っています。
後任として加入したのが現在のメンバーとなるギタリストFredrik Åkesson (フレドリック・オーケソン)とドラムMartin Axenrot (マーティン・アクセンロット)で、かなり現体制に近づいたこの5人でさらに2008年に9thアルバム「Watershed(ウォーターシェッド)」というオールドスクール作品をリリースしています。
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ここまでがデスメタル後期です。ここから事態は一変します。
Heritage~デスメタル廃止期
飛躍した2000年代が終わりを告げ2010年になる頃、ミカエルは自分たちが身を置くメタルシーンについて、ある疑問にたどり着きます。
そしてその疑問からはじき出した答えは、自分たちの音楽からデスメタルを完全撤廃することでした。そのときミカエルは、
「自分たちは今、メタルシーンの郊外にいる」
という言葉を残しました。
デスメタルバンドのフロントマンでありながら音楽的バックグラウンドの広いミカエルは、Opethに対しても同様に境界線を設けないバンドの方向性をいつしか見出していました。そして自分たちが今聴きたい音楽を作るという決断の下で舵を切ったのです。
そうして2011年にリリースされた10thアルバム「Heritage(ヘリテイジ)」はOpeth自身がロックバンドとしてのルーツに立ち返り、King Crimson直系としてのトラディショナルなプログレッシブ・ロックを展開すべくバンドの一大変革に打って出たアルバムでした。これにはヴィンテージ楽器やアナログが好きなミカエルの趣向が大いに反映されています。
もちろん、何も代償がなかったわけではありません。デスを完全に廃止したことで当時は賛否両論の問題作とされたし、メンバー間でも本作を最後にキーボーディストのヴィベリはバンドへの熱意を失い脱退しています。
そして本作からトラヴィスの描くジャケットにも変化が現れます。
それまでは荒廃的なモチーフで見るからにブラックメタルと言わしめていたジャケットでしたが、本作はまるで絵画のような鮮やかなタッチで描かれています。
木は生命を表し、現在まで成長を続けて来たバンドの象徴でもあります。一方で、根元から広がる地獄は彼らを構築するデスメタルのメタファー。地面に転がる頭蓋骨は脱退していったメンバーを表し、木の右側には本作で脱退をするヴィベリの顔が描かれることで彼の旅立ちを表現しています。
右奥で燃え広がる建物は当時の彼らが思うメタルシーンそのものであり、本作が従来のデスメタルアルバムとは完全に別物であることを示唆したメッセージ性の強いジャケットとなっています。
なお、脱退したヴィベリの後任にはアルバムのタイトルトラック「Heritage」においてグランドピアノを演奏したJoakim Svalberg(ヨアキム・スヴェルベリ)が後任として決定しこれにより現体制のOpethが完成しました。
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クラシカルでヴィンテージのサウンドに回帰した新たなプログレメタルの形は2014年の11th「Pale Communion(パール・コミュニオン)」、2016年には12th「Sorceress(ソーサレス)」でも引き継がれ、8年後の今日もこうしてブレることないバンドのスタイルとして確立しています。
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Opeth「Sorceress」: 北欧の暗黒神が打ち出したトラッドプログレの究極形
そして2019年10月にリリースされたのが最新作の13thアルバム「In Cauda Venenum(イン・カウダ・ヴェネノム)」です。
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前作「Sorceress」のツアー終了後、ミカエルの脳裏に新たに沸き起こったのは母国のスウェーデン語でアルバムを制作することでした。
エンジニア兼プロデュースにはスウェーデンのバンドKentのプロデューサーでも知られるStefan Boman氏が担当しました。ステファン氏はABBAにより設立された有名なポーラースタジオで1995年からエンジニアとして腕を振るい、2004年以降は自身のスタジオとしてパークスタジオを設立、先述のKent以外に様々なバンドとの仕事を行なっています。またヴィンテージ機材にも精通しているようでミカエルとの息もぴったり。
こうして二か国語対応のニューアルバム「In Cauda Venenum」がリリースされ、同年12月には2年ぶりとなる来日公演が決定しました!
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Opethの楽しみ方
ミカエルという人物はヴィンテージ楽器やアナログな嗜好をしています。
今やストリングスや撮るのが難しい楽器でもキーボードで音を作り簡単にレコーディングできてしまうのですが、そこは実際に演奏家を招きマイクを立て昔から続く手法で録音をすることにこだわっています。
それ故か、Opethの奏でるデスメタルサウンドは他のバンド同様タイトでありながらどこかクラシカルで温かみがあるのが特徴。
その生きたダークな音像やデスヴォイスの陰鬱さに実際の人生の辛い面や悩みなどがリンクしカオスになるのですが、ミカエルから美しいクリーンヴォイスが歌われた瞬間そんな邪念や凝り固まったものが流れるイメージがあります。
何度も言っているようにルーツにあるのはKing Crimsonなため、Dream Theaterのようなキーボードとギターの高速ユニゾンやYesやGenesisと言ったバンドのようにいくつもの展開があるわけではありません。
しかし技巧派であることは間違いなく、テクニックよりもゴシックな曲の雰囲気やアンビエントに浸る音楽だと個人的に思っています。
最後に
12月の来日公演に合わせてなんとかこの動画をドロップできたのでよかったという安心感と、動画にまとめるに当たり知っていることでも再度調べ直したことで一層Opethに詳しくなりました。
正直、僕も最初はOpethの何を楽しんだらいいのかわからなくて、延々トンネルのような閉塞感ある音楽がきつかったんですが、プログレそのものの知見を広め、本来の特性である陰鬱な空気の中にある深みや噛むほど味の出るスルメのような感覚を覚えてからは徐々に好きになっていきました。
最新作はもちろん、CDは何枚も持っていますが買うに至らなかったアルバムに関してはApple MusicやSpotify、YouYube Musicなどのサブスクリプションで補填して聴いていますのでそれらのサービスを利用して自由に聴くべきだということを最後に明記しておきます。
それでは動画共々ご視聴、ご清覧いただき本日はありがとうございました!
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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