Lyle Mays & Pat Metheny「As Fall Wichita, So Falls Wichita Falls」: あの「ジョジョ」も参考にした!永久不滅コンビによる前衛的ジャズ/フュージョン!
by 関口竜太 · 2019-11-18
おはようございます、ギタリストの関口です。
今年もあと40日!年末に向け仕事のことや新年のことなどの準備をそろそろしていかないとです。
最近朝が暗くて起きにくくなりましたが静かな週明けにこのアルバムをご紹介します!
As Fall Wichita, So Falls Wichita Falls / Lyle Mays & Pat Metheny
As Falls Wichita So Falls Wichita Falls
Lyle Mays & Pat Methenyは、アメリカのジャズピアニストLyle Maysとアメリカのジャズギタリスト Pat Methenyから成るユニット。
Lyle Mays
Lyle Mays(ライル・メイズ)はアメリカ・ウィスコンシン州出身のジャズピアニストで現在65歳。母親がピアニスト、父親がギタリストという音楽的傾向にある家庭で育ちます。ライルの中では早くから興味を持ったチェス、数学、建築など理系的なジャンルの中に音楽も含まれることとなりました。
影響を受けたミュージシャンはBill EvansとMiles Davisで、彼ら二人のアルバムがライルをジャズの道へと進ませました。
ウィスコンシン大学オークレア校に入学後、ノーステキサス大学が運営するジャズのビッグバンドOne O’Clock Lab Bandに加入。個人的にこの部分は詳しくないのですが、ビッグバンドが年々出す「Lab」と呼ばれるアルバムの中で75年リリースの作品に作編曲で参加、グラミー賞にノミネートされる功績を残します。
Pat Metheny
Pat Metheny(パット・メセニー)はアメリカ・ミズーリ州出身のジャズピアニストでこちらも現在65歳。父親はトランペッター、母親は歌手で母方の祖父もトランペッターという音楽一家でした。
そんなメセニーも初めはトランペットから音楽に触れることになりますが、Wes MontgomeryがピアニストのWynton Kellyと共作したアルバム「Smokin’ at the Half Note」に影響されギター始めることになります。他に影響を受けたミュージシャンにはMiles DavisやThe Beatlesを挙げています。
大学は名門バークリー音楽大学。そこで本格的にジャズを学び天才と呼び声の高い評価を受けることとなります。
1974年に先述のライルとの出会いを果たす一方で、1976年からはジャズギタリストとしてソロアルバムをリリース。1stアルバム「Bright Size Life」ではあのJaco PastoriusやBob Mosesが参加しビルボードのジャズチャートで28位という好成績を残します。
続く2ndアルバム「Watercolors」はライルが初めてメセニーの作品に参加することなり、これがきっかけなのかメセニーはPat Metheny Groupという自身のジャズ/フュージョンバンドを結成。現在に至るまでライルとのコンビは変わらずに続いています。
さて、そんな二人の名義で1981年にリリースされた本作「As Fall Wichita, So Falls Wichita Falls」ですが、僕がこのアルバムに出会ったのは大学に入って間もない頃。当時のバンドのベーシストがジャズ嗜好の人間だったためロック・メタル畑の僕にMarlena ShawとかWes MontgomeryとかDonny Hathawayとか色々勧めてくれてその中にこのアルバムも入っていたんですよね。
当時はさすがに理解に遠かったのですが今ではジャズの中でもお気に入りの一枚です。。
メンバー
- Pat Metheny – Guitar(Electric and Acorstic 6- and 12-strings guitar), Bass
- Lyle Mays – Piano, Synthesizer, Organ, Autoharp
- Naná Vasconcelos – Berimbau, Percussion, Drums, Vocal
楽曲紹介
- As Fall Wichita, So Falls Wichita Falls
- Ozark
- September Fifteenth
- It’s For You
- Estupenda Graca
単なるユニットによるジャズ/フュージョンに留まらない実験的な要素が多いのが本作の特徴。
タイトルナンバーでもある#1「As Fall Wichita, So Falls Wichita Falls」から20分を超える大作。開始しばらくは静かに導入していくパルス、ブラスシンセなどはVangelisを思わせますが、メセニーの繊細なアルペジオに森のような空気感を演出するライルのハープやナナのパーカッションが煌びやかな世界へ誘ってくれます。
音楽的にも美しい一方で、ブラジリアンなパーカッションや、(プログレ好きだから感じてしまう)Pink Floyd系のアンビエントを体感できるパートもあり、12:47〜のアジアンな綺麗なテーマも聴きどころ。
#2「Ozark」はトリオでの絡みが爽やかに織りなすアコースティックソング。ライルはジャズピアニストでありながらシンセサイザーにも精通したコンテンポラリーな人物でもありますがやはりアコースティックピアノは絶品です!
一転#3「September Fifteenth」はメセニーフィーチャーのジャズバラード。カフェなどで流れていそうなスムースな展開は切なくも美しいただそれに尽きます。
#4「It’s For You」はこのアルバムの中でも個人的に一番好きな曲で、爽やかなアコースティックサウンドに温かい木管楽器によるリードはまさにジャケットにあるような雄大な大地を思わせ、そこを馬で駆けるかのような情景は白黒のサイレント映画のようで、言葉を持たない感動がそこにはあります。ジャズギタリストとしてのメセニーのソロも颯爽としていますし、バックで鳴るビリンバウという珍しいパーカッションのサウンドも貴重。
「ジョジョの奇妙な冒険」作者の荒木飛呂彦先生が第7部「スティール・ボール・ラン」を書く際に仕事場で流していたという話も有名で、曲と漫画を知っていればそれにも納得です。
#5「Estupenda Grace」はアメイジング・グレイスをモチーフにした小曲でナナの渋く楽器感のあるボーカル、ライルのピアノとメセニーのギターで芯まで癒されるラストソングとなっています。
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タグ: ジャズ/フュージョン
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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