The Pineapple Thief「Dissolution」: 20年間で12枚!コンスタントなリリースを続けるポストWilson、ゴシックな雰囲気の2018年作!

こんにちは、ギタリストの関口です。

本日ご紹介するのはThe Pineapple Thiefです。

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Dissolution / The Pineapple Thief


Dissolution

The Pineapple Thief(パイナップル・シーフ)はイギリスのプログレッシブ・ロック、オルタナティブ・ロックバンド。

ポストSteven Wilsonによるゴシック・プログレの一派


1999年、ギターボーカルのBruce Soordが同じくイギリスのプログレバンドであるPorcupine Treeの影響を受け活動を開始

Steven Wilsonに倣ってソロ活動的に完成した1stアルバム「Abducted at Birth」メランコリーな空気を孕んだプログレッシブ・ロックで、中にはファンタジーかつアヴァンギャルドなアプローチも見受けられますが、基本ループ素材的なドラミングに淡々と曲を展開させていくSSWなアルバムでした。

2002年の「137」以降はバンドの形態としてメンバーを招集しておりこの頃からベーシストのJon Sykes(WhitesnakeやThin LizzyのギタリストのJohn Sykesとは別人)が変わることなくバンドの柱となっています。

基本1,2年間隔でオリジナルアルバムをリリース、その間もライブ映像&アルバム、EPまたはシングル、リマスター版、ミュージックビデオなど精力的な活動が目立ちます。なお2005年には現体制のキーボーディストSteve Kitchが加入しています。

ターニングポイントとなったのは2008年、それまでのCyclops RecordsからSteven Wilson及びPorcupine TreeとNo-Manのリリースで知られるプログレロック御用達レーベルKscopeへ移籍します。

移籍に伴ってリリースされたのが「3,000 Days」というアルバム。以前所属していたCyclops Recordsでは基本新しいアルバムのプレスしか行わず、販売を完了してしまったアルバムに関しては一切ノータッチになるので、そんなCyclops Records時代の音源を2枚組でまとめた言わばバンド前期のベストアルバムがこちら。

2017年には前職のドラムスDan Osborneに代わりPorcupine TreeやKing Crimsonでのセッション経験を持つGavin Harrisonをゲストに迎え彼をフィーチャーした11thアルバム「Your Wilderness」をリリース。繊細なニュアンスのドラムに静寂なアコギとヘヴィなエレキとのコントラストが織りなすアンビエンティティな一枚となりました。

その後ギャヴィンが正式メンバーとなったことで2018年にリリースされた現状最新作が本作「Dissolution」となります。

アルバム参加メンバー


  • Bruce Soord – Vocal, Guitar
  • Jon Sykes – Bass, Vocal
  • Steve Kitch – Keyboard
  • Gavin Harrison – Drums, Percussion

ゲストミュージシャン

  • David Torn – Guitar on #8

楽曲紹介


  1. Not Naming Any Names
  2. Try as I Might
  3. Threatening War
  4. Uncovering Your Tracks
  5. All That You’ve Got
  6. Far Below
  7. Pillar of Salt
  8. White Mist
  9. Shea a Light

重厚なピアノとソードのボーカルで幕を開ける小曲#1「Not Naming Any Names」。そこから繋がっていく#2「Try as I Might」はオルタナ的でありポストロック的でもありますが、何と言ってもソードのボーカルが切なく美しい。曲の雰囲気に沿ってアーミングで表情を付けるギターもOpethの「The Drapery Falls」を彷彿とさせます。

全体的に聴いてもそうですがあえて挙げる#3「Threatening War」を取っても鬱屈した暗さというのが現れていてPorcupine Treeに憧れたというより完全にSteven Wilsonの方向性です。しかしながら「ポストWilson」という言葉を使ってでも、じめっとしたアコースティックサウンドとヘヴィなギターとの対比は荘厳で美しいです。

低音でのポルタメントによる特徴的なシンセとそれに掛け合うようなリズムパターンから成る#4「Uncovering Your Tracks」。メロディは穏やかながら重たく冷たいピアノや飛び道具的なギターなど時折獲物を狙った鋭い眼光を覗かせます。

#5「All That You’ve Got」もアルバムに沿って同系統の重たい一曲ですが芯のあるドラミングと分厚いコーラスによって温かみを感じます。続く#6「Far Below」はフィルインからの「カッティングのリフがロックしていて中盤でもメタルな要素がある一方、6/8という拍子が持つ叙情的な特性も相まった二面性を見事にまとめてあります。

弾き語り風の小曲#7「Pillar of Salt」を終えると11分の大作#8「White Mist」へ。後者は本アルバムのハイライトと呼ぶべき出来で、この手のバンドには珍しいメロディックな歌と緩急の激しいドラマティックな展開だけでなく、シンセのパルス、ファズギターなど細部の音色選びにも凝っていて様々な発見ができます。

ラストとなる#9「Shea a Light」までゴシックに攻め立てる本作。最後は変拍子にメロウなギターソロを交え叙情的かつ海に還っていくような重厚なピアノで幕を閉じます。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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