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Dream Theater「A Dramatic Turn of Events」: ポートノイ脱退から10年、バンドの原点回帰を詰め込んだ苦悩のターニングポイント。

おはようございます、ギタリストの関口です。

先日2010-2019年までの10年間をまとめたベストプログレアルバムの記事を書きました。

10年間のベストプログレ作品15選!米The Prog Reportがアンケート結果を発表!

そこで気付かされたのが、Dream Theaterを結成当時から支えバンドのブレインとして中核を為していたMike Portnoyの脱退からもうすぐ10年が経過するという事実です。

後任のMike Manginiのドラムは初めこそファンに違和感やかつての存在感を埋められない空虚な気持ちをもたらしましたが今年発売された「Distance Over Time」が多くのファンに受け入れられると、まさに長い長い時間を超えてたどり着いたバンドの新境地となりました。

しかしながら、そもそもポートノイの脱退自体が痛手だというのは誰しもが感じていることでまずはその経緯から話していくこととします。

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A Dramatic Turn of Events / Dream Theater


Dramatic Turn of Events

Dream Theater(ドリーム・シアター)はアメリカのプログレッシブ・メタルバンド。

ブレインMike Portnoyの脱退


2010年8月、前作「Black Clouds & Silver Linings」のツアー終了後にリーダーであるポートノイからメンバーにあった相談はバンドの一時活動休止でした。

ご存知の通り、ポートノイは自らをワーカホリックと評するほどその活動に熱心で、何もそれはDream Theaterに限ったことではありません。

2010年〜2011年のポートノイのDream Theater以外の活動を振り返ってみると、

  • Whirlwind Drumming / Mike Portnoy (教則DVD)
  • Nightmare / Avenged Sevenfold
  • Whirlwind Tour 2010: Live in London / Transatlantic
  • Unearthed / S.A. Adams
  • Testimony 2 / Neal Morse
  • One More Night in New York City
  • Testimony 2: Live in Los Angels / Neal Morse
  • More Never Is Enough: Live in Manchester And Tilburg 2010 / Transatlantic
  • Adrenaline Mob / Adrenaline Mob

これはリリースとして形に残っているものでライブツアーDVDなどはすなわち他にも日程があるということなのでそれをDream Theaterのツアーを行いながらこなしていました。

さすがにきつくなってきたのか、もともと新作までスパンの長い活動のDream Theaterに対し、しばし休暇を取ろうという提案だったのだと思います。

しかしそれに対しメンバーが真っ向から反対。ライブや作品作りを行いたい他のメンバーと自らのスケジュールのため信頼できる元締めに待ったをかけたかったポートノイと、意見は平行線を辿ることとなります。

結果、下されたのが2011年3月、ポートノイのバンド脱退という決断でした。

これには最後まで他プロジェクトをないがしろにはできないというポートノイの大人な判断もありましたが、一方で最重要バンドを脱退するに至るほどスケジュールを詰め込んでしまった甘さも個人的には感じてしまいます。

後任ドラマーMike Mangini


ポートノイの脱退は全世界のファンに衝撃とショックを与えました。

バンドは1ヶ月後に後任となるドラマーのオーディションを開始。こちらの映像はアルバムのスペシャル・エディションに収録されたオーディションの様子です。

 

バンドからスタジオセッションに招かれたのはこの7人。

  • Mike Mangini(Steve Vai、James LaBrieなど数多くのセッションに参加、正確無比なプレイで有名)
  • Derek Roddy(Aurora Borealisなどブラック/デスメタルで活動する高速ドラマー)
  • Thomas Lang(Paul Gilbertの作品他、John Wettonのサポートとしても活躍)
  • Virgil Donati(Planet X、Ring of Fire、Allan Holdsworthなどメタルとプログレ両方に精通)
  • Marco Minnemann(Trey GunnやSteven Wilsonでのメンバー経験を持つマルチミュージシャン)
  • Aquiles Priester(元Angraのドラマー。「Rebirth」「Temple of Shadows」などプログレッシブな名盤を支える)
  • Peter Wildoer(Arch Enemy、Soilworkなどブラック/デスメタルで数々の経歴を持つスウェーデンのドラマー)

王下七武海もびっくりのトンデモ面子が集結した本オーディション。その中でトップバッターで叩いたMike Manginiが後任のドラマーとして決定。John Petrucciからは「マイクがトップに演奏したことで他の参加者のハードルが上がった」と評されました。なお、準優勝はMarco Minnemannですが、なんとまあ意味の薄い準優勝でしょうか。

マンジーニが正式メンバーに決定してから新たなアルバム制作へ取り掛かったDream Theater。このとき、作曲は彼を抜いた他のメンバーが中心となって行いドラムに関してはポートノイとのギャップをなくすようなプレイングやプロダクションが求められました。

そして変化に戸惑うファンに向け、まずはDream Theaterはこれまで通り活動を続けていけると提示されたのがマンジーニ加入から5ヶ月後にリリースされた本作「A Dramatic Turn of Events」となります。

アルバム参加メンバー


  • James LaBrie – Vocal
  • John Petrucci – Guitar
  • John Myung – Bass
  • Jordan Rudess – Keyboard
  • Mike Mangini – Drums

楽曲紹介


  1. On the Back of Angles
  2. Build Me Up, Break Me Down
  3. Lost Not Forgotten
  4. This is the Life
  5. Bridge in the Sky
  6. Outcry
  7. Far From Heaven
  8. Breaking All Illusions
  9. Beneath the Surface

本作のテーマとなるのはまさに「原点回帰」。そこには先述したファンへの信頼感の回復という意図の他に、これからリーダーとしてバンドを引っ張っていくJohn Petrucciの責任感の現れでもありました。

故にサウンド面は人気バンドとは思えないほどシビアな現場が想像できる本作ですが、原点回帰を思わせるのは冒頭#1「On the Back of Angles」からすでに。クリーンギターのアルペジオとバンドインからのシンセクアイア、リフ、ブリッジでの速弾き、歌メロ、ギターソロに至るまであの「Pull Me Under」を強烈に意識させる楽曲となっています。

続く#2「Build Me Up, Break Me Down」はダウンチューニングを使用したヘヴィな一曲で、オルタナティブな雰囲気もありDream Theaterらしいメロウなサビ、実際は6/8なのに7/8+5/8で変則的に聴かせるギミックなど知的さを感じさせます。

#2のSEから繋がっていく#3「Lost Not Forgotten」「Under A Glass Moon」を彷彿とさせる曲。イントロの超テクニカルな変態ユニゾンプレイもさることながらスピード感溢れる5/4のサビなどファンがエキサイトするには十分な楽曲。新任のマンジーニも控えめながら堅実なプレイで複雑なプログレッションに付いていきます。

スローバラードとなる#4「This is the Life」は6/8ベースにフィルタイミングで5/8を混ぜたのが特徴、「Another Day」+「Hell’s Kitchen」とも取れます。

#5「Bridge in the Sky」は冒頭とラストにグレゴリアンクアイアが用いられ、ヘヴィメタルらしい悪魔的なリフとインターバルで魅せるオリエンタルなキーボードワークが秀逸。往年のサウンドの中に実験的一面が見られる一曲です。

「アラブの春」がテーマとなった#6「Outrcy」は#5に続き11分を超える大作ですが、スローヘヴィな歌パートとは別に間奏は次々展開していくこれぞDream Theaterな一曲。原点回帰という観点では「Metropolis Pt.1」に近い位置付けなのかもしれません。

Dream Theaterのピアノバラードというと「Wait For Sleep」を連想する人も多いかと思いますが、#7「Far From Heaven」はその中に切り込む新たな名バラード。寂しげなストリングスとラブリエの表現力、細かなコードワークはDream Theaterそのもの。

本作はこれを聴くためにあると言っていいと個人的に断言したいほど、#8「Breking All Illusions」はこの苦境の中で生まれたバンドのキャリアにおけるベストソングの一つ。王道のプログレッシブ・ロックをテクニカルなメタルに昇華するというバンド本来のテーマに立ち返ったメロディアス壮大な楽曲で、隅々まで気が配られたアレンジや徹頭徹尾繊細な演奏の各種などプレッシャーを跳ね返す勢いです。

ちなみにファンには野暮かもしれませんが本編1:34〜のヴァースは7/8+6/8+5/8+7/8(4/8+3/8)と1拍ずつ拍数が少なくなっていく構成になっています。

 

ラストはペトルーシが単独で書き上げたというアコースティックバラード#9「Beneath the Surface」。9曲中3曲にバラードポジションの曲があるというのはDream Theaterとしてはなかなか珍しいのですがアコギとピアノ、ストリングスによるトリオが非常に美しい締めとなっています。

Until one day I stopped caring
And began to forget why I longed to be so close
And I disappeared into the darkness
And the darkness turned to pain
And never went away
Until all that remained
Was buried deep beneath the surface

バンドのためファンのため表面上は頑張っていながら、その裏では悩み葛藤していたペトルーシの当時の心境がサビの歌詞からも垣間見れそこを理解すると自然と泣けてきます。

最後に


タイトル通り、Dream Theaterにとって一番のターニングポイントとなった本作ですがポートノイの嗜好に半ば踊らされていた晩年の前体制に比べると忘れかけていたクラシカルなDream Theaterを楽しむことができ、結果ファンからの評価も高い作品となりました。

なおスケジュールが一旦落ち着いたポートノイはその後バンドへの復帰を願い出ていますが代理人を通じて断られています。

ポートノイは現在、The Neal Morse BandやFlying Colors、Sons of Apolloといったバンドで伸び伸びとしたドラムを披露しMike Portnoy’s Shuttered FortressというDream Theaterのセルフカヴァーライブも実施。海外のプログレフェスにおいてかつてのメンバーとの写真をSNSに投稿していたりと、時間という悠久の概念がもつれた関係を和解してくれているようです。

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関口竜太

東京都出身。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロギタリスト山口和也氏に師事。ロックやメタルに加え、ブルース、ファンク、ジャズなど幅広い演奏や音楽理論を学ぶ。 プログレッシブロック/メタルの大ファン。自身が企画するプログレッシブ・ロックプロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。

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