The Psychedelic Ensemble「Mother’s Rymes」: 子どもの頃の不可解に迫る童話プログレ!USアノニマスプロジェクトの2019年最新作。

おはようございます、ギタリストの関口です。

動画を作りたいのに夜仕事が終わると疲れてやる気が起きない。

そんな悶々とした日々が続いていますが、年の瀬に向かう世間に背中を押されながらなんとか自分だけの落ち着いた時間を取り戻そうと精神安定剤であるプログレを今日も処方するのです。

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Mother’s Rymes / The Psychedelic Ensemble


Mother’s Rhymes

The Psychedelic Ensemble(サイケデリック・アンサンブル)はアメリカのマルチミュージシャン。

王道が詰まった最新作


マルチインストゥルメンタリストとして70年代の王道プログレッシブ・ロックスタイルを貫いていること以外、その一切が不明なアノニマス・アーティストThe Psychedelic Ensemble

以前ご紹介した2013年リリースの「The Tale of the Golden King」では王政を思わせるようなファンタジックな世界観のコンセプトアルバムで、ギャップレスに構築されたシンフォニックロックを展開していました。

その後2015年にはさらにファンタジックな「The Sunstone」がリリース。音楽性はそのままにより壮大な世界観で安定的に楽しませてくれました。

本作「Mother’s Rymes」はそこから実に4年ぶりとなる2019年リリースの最新作。コンセプトアルバムは「子どもの頃母親に読んでもらった童話の不可解を解明する」というユニークなもの。TPEは元より、女性ゲストボーカルやヴィオリン、チェロを招いてシンフォニックの強化に当たっています。

アルバム参加メンバー


  • The Psychedelic Ensemble – All Instrumentals, Vocal, Compose, Production & Mixing
  • Ann Caren – Vocal

その他参加ミュージシャン

  • Amy Little – Vocal on #2
  • Mina Keohane – Vocal on #8
  • Lisa Brooks – Vocal on #8
  • C. Francis – Chorus
  • Davis Brooks – Violin, Viola
  • Raphael Søren – Cello

楽曲紹介


  1. Mother’s Rhymes
  2. Farewell
  3. Little Boy Blue
  4. Little Bo Peep
  5. Blind Mice
  6. Simple Simon
  7. Humpty Dumpty
  8. Rewrite the Rhymes

相変わらずの超王道プログレロック。TPEを語る上でとりわけ強く出ているのが70年代のUK五大プログレバンドの中のGenesis、Yes、そしてEmerson, Lake & Palmerの3バンド。

トラッドフォークな導入の#1「Mother’s Rhymes」はJethro Tullっぽさがありつつ、キーボードのリードサウンドは70〜73年ごろのそれで、メロディアスではないもののTPEの渋いボーカルと賛美歌的なニュアンスを持つバックコーラスが印象的。

例によってギャップレス構成になっているアルバムは#2「Farewell」も悲劇的な内容のボーカルとキーボードワークで始まります。前半はDream Theaterの「When Your Time Has Come」を思わせる雰囲気ですが、後半はジャジーなピアノと流暢なリードギターによるスリリングなインストパート。

4つうちのピアノに深く歪んだフロントピックアップのリードギターサウンドが生々しく響く#3「Little Boy Blue」EL&Pを強烈に匂わせるハモンドオルガンとアグレッシブなドラムによって邪悪さが際立つ名演!

#4「Little Bo Peep」は前々作でもその歌声を披露してくれたAnn Caren70年代後期のJean-Luc Pontyを感じさせるシンセ主体のナンバーで緊張感のあるリズムパターンに抜けたアンのボーカルが印象的です。歪みが足りないギターの速弾きも一応聴きどころ。

#5「Blind Mice」は#2に増して悲劇的な印象を与える4分ほどのインストナンバー。ゲストDavis Brooksによる美しいヴァイオリン、ギターとピアノのトリオに聴き惚れる一曲です。

プロダクションも込みで70年代の香りがすごい#6「Simple Simon」。ダーティなハモンドオルガンをリピートしたくなるブルースロックな一曲で、ボーカルについてはまたもやメロディアスとは言い難いですが4:04〜の三重コーラスも楽器の一部となっているかのような構成。

かの有名な童話「ハンプティダンプティ」がモチーフとなっている#7「Humpty Dumpty」。個人的な好物であるトラッドなアコースティックギターとSAW系のシンセリード、オルガンなど紳士なプログレサウンドの詰め合わせ

ラスト#8「Rewrite the Rhymes」はこれまで以上にドライブするプログレロックなナンバーですが全体を通して手数多めなドラムが若干曲を散漫にしている印象。手数好きな個人としては嫌いではないのですがキーボードやギターの見せ所でもスネアがプラタタタとなっていたりするしある意味で決めすぎなのかなというところ。ゲストで登場する二人の女性ボーカルは素晴らしいです。

最後に


アメリカでここまでトラディショナルでテクニカルなプログレは今時かなり珍しいのではないかというのがこのプロジェクトについて共通する感想ですね。

古いスタイルが好きだけど最新のサウンドプロダクションで聴きたいという望みを叶えてくれるアーティストだと思います。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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