Porcupine Tree「The Sky Moves Sideways」: フロイドサウンドを受け継ぐ”90年代の炎”!バンドとして発表された実質的1stアルバム。
by 関口竜太 · 2019-11-06
おはようございます、ギタリストの関口です。
最近はオルタナティブで暗い雰囲気の曲が好みでよく聴いているので若干嗜好が偏りがちですが、その中で今日はこちらをご紹介していきます!
The Sky Moves Sideways / Porcupine Tree
The Sky Moves Sideways (Remaster)
Porcupine Tree(ポーキュパイン・ツリー)はイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。
ソロ活動がバンド化するまで
現代のプログレッシブ・ロックにおいてシーンを支える重鎮となる人物やバンドはいくつかいますが、本場イギリスではこのPorcupine Tree、及びSteven Wilsonの右に出る者はいないでしょう。
もともと1980年代にポスト・ロックシンガーTim Bownessと結成したNo-Manから派生したスティーブンのソロ活動としての扱いだったPorcupine Tree。練り込まれた設定とスティーブンの活動理念が凝縮された本プロジェクトは2つのデモテープ発表を経て枚数限定の1stアルバム「On The Sunday Of Life…」をリリースします。
これの評価に手応えを感じたスティーブンは将来的な活動を見据えPorcupine Treeのバンド化を目指しライブ活動も行なっていくこととなります。
1993年リリースの「Up the Downstair」では正式メンバーがまだいないためソロ活動の延長線となっていますが、それから2年後に発売となった本作95年「The Sky Moves Sideways」では本格的にバンドとしての活動に着手したためバンドとしては事実上の1stアルバムになります。現在までにドラマーが一度変更になっている他は25年間目立ったメンバー変遷のない安定感を有しています。
アルバム参加メンバー
- Steven Wilson – Vocal, Guitar, Keyboard, Programming and Mix Engineer
- Colin Edwin – Bass
- Richard Barbieri – Keyboard, Programming
- Chris Maitland – Drums
ゲストミュージシャン
- Ricky Edwards – Percussion
- Theo Travis – Flute
- Suzanne J. Barbieri – Vocal
- Gavin Harrison – Drums※
※2004年に発売されたリマスター版において#3「The Moon Touches Your Shoulder」のドラムスを担当。
楽曲紹介
- The Sky Moves Sideways Phase 1
Ⅰ. The Colour of Air
Ⅱ. I Find That I’m Not There
Ⅲ. Wire the Drum
Ⅳ. Spiral Circus - Dislocated Day
- The Moon Touches Your Shoulder
- Prepare Yourself
- Moonloop
- The Sky Moves Sideways Phase 2
Ⅰ. Is…Not
Ⅱ. Off the Map
収録自体は全5曲。表題曲である「The Sky Moves Sideways」は34分にも及ぶ超大作となっていますが、アルバムの頭とラストに曲を分割させサンドすることでアルバム全体としての統一感を持たせています。
この構成はにどこか見覚えがあるかと思えばPink Floydの「Wish You Were Here」とそこに収録された「Shine On You Crazy Diamond」を彷彿とさせますね。
実際、オープニングからキラキラとしたシンセストリングス、アーミングにより表情をつけたギターのアルペジオからたっぷりとPink Floydの色味を感じられます。どちらかというと、スティーブン自体はKing Crimson系列の人物で、あのRobert Frippにも見初められるほどですのでこれは意図的に狙った結果とも言えるでしょう。
「Phase 1」ではそんなフロイドサウンドを存分に味わった後、リズムマシーンによるデジタルな展開とベースのColin Edwinによる堅実なパターンに守られ、曲はインプロヴィゼーション的に発展していきます。ゲストであるRicky Edwardsのパーカッションやスティーブンの荒れ狂うギターソロも確認できこの後半のインターバルこそPorcupine Treeらしいインテリジェンスな要素だと思います。
#2「Dislocated Day」はロックバンドとしての一面が垣間見れる一曲。パワフルなビートと軽快なパーカッションの上にオルタナティブなボーカル、フリジアン特有のハードなギターリフと、どれも別々の方向を向いているようでしっかりとまとまっているのだから驚異的。ちなみにリッキーのパーカッションはアルバム全体を通して聴ける重要な役回りとなっています。
#3「The Moon Touches Your Shoulder」は70年代のプログレやトラッドフォークを思わせるアコースティック主体のバラード。意味深な「Moon」という単語もこのアルバムをPink Floydと比較する素材の一つとなっています。
デジタルビートにワウギターの小曲#4「Prepare Yourself」を終えると「Phase 2」となる再びの#5「The Sky Moves Sideways」。
「Phase 1」と違い17分ほぼインストで完結する「Phase 2」は、漂う煙のようなアンビエントに身を任せシームレスに展開していきます。ギターも曲に沿ってあえてミッドを持ち上げない音作りをしていて玄人好み。5:44〜はゲストで参加したSuzanne J. Barbieriの美しいクアイアが響き渡り、これも神聖な雰囲気を作り上げていたりと贅沢で悠久な時間を味わうことができます。
ちなみに2004年のリマスター版では、オルタナティブ版と称しこの「The Sky Moves Sideways」を繋げた完全版となる34分のバージョンを聴くことができます。
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タグ: 英プログレPorcupine TreeSteven Wilson
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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