Leprous「Pitfalls」: 2019年最強格の新譜!北欧アヴァンギャルド・メタルの6th。
by 関口竜太 · 2019-11-01
おはようございます、ギタリストの関口です。
本日はLeprousの新譜をご紹介していくのですが、僕がこのバンドを知ったのは去年の年末、プログレ仲間の知り合いとネオプログレの意見交換をしていたときでした。
年間100タイトルを目安に新規のプログレアルバムを聴き漁っていますがノーマークなバンドへは比較的外からの影響や勧めが多いのでこれからも有益で素晴らしい音楽をどんどん取り込んで成長したいと思います!
Pitfalls / Leprous
Leprous(レプロス)はノルウェーのプログレッシブ・メタルバンド。
来歴
2001年、キーボードボーカルであるEinar Solberg(エイナル・ソルベルグ)とギタリストTor Oddmund Suhrke(トル・オッドマンド・シュルケ)によって結成されます。
結成当初はメンバー構成が比較的不安定で何度か変遷を繰り返しますが、2009年に1stアルバム「Tall Poppy Syndrome」でデビューを果たします。
その後、エイナルの義理の弟でありノルウェーのブラックメタルバンドEmperorのフロントマンで知られるIhsahn(イーサーン)のバックバンドとして参加し注目を集めます。イーサーンからはゲストやプロデューサーとしてその後のアルバムに参加、とりわけInside Outへ移籍後2011年にリリースされたアルバム「Bilateral」は世間からの関心をさらに高めました。
2年刻みで2013年には「Coal」、2015年には「The Congregation」、2017年には「Malina」とコンスタントにアルバムをリリース。ボーカルの深いダイナミクスと陰鬱かつ遊び心溢れるバイラテラルな楽曲は高く評価されることとなります。
途中2014年にはデビュー前からのバンドの屋台骨であったドラマーTobias Ørnes Andersen(トビアス・オルネス・アンダーセン)が脱退、新たにツアーで同行していたBaard Kolstad(バード・コルスタッド)が加入しています。
本作「Pitfalls」は先月リリースされたばかりの最新作。プロデューサーにはSoilworkやKatatonia、そしてOpethなどで知られるDavid Castilloが加わり5ヶ月のレコーディング期間を経て制作され、現在日本でもメタルファン、プログレファン双方から支持が厚い大注目のバンドです!
アルバム参加メンバー
- Einar Solberg – Vocal, Keyboard, Production
- Tor Oddmund Suhrke – Guitar
- Robin Ognedal – Guitar
- Simen Daniel Lindstad Børven – Bass
- Baard Kolstad – Drums
Additional musicians
- Raphael Weinroth-Browne – Cello
- Chris Baum – Violin
楽曲紹介
- Below
- I Lose Hope
- Observe the Train
- By My Throne
- Alleviate
- At the Bottom
- Distant Bells
- Foreigner
- The Sky Is Red
Leprousの音楽性についてアメリカのデータベースサイト、オールミュージックからは「Pink FloydやKing Crimsonらの影響とTOOLのような90年代オルタナティブ・メタルをブレンドした現代のプログレッシブ・メタル」と評価を受けています。
#1「Below」からそれは顕著。ピアノとチェロによる幽玄なヴァースからサビでのハードなバンドインとドラマティックなストリングス、そしてエイナルの突き抜けた高音のポルタメントが他にはない特色です。ポーランドのヴロツワフで撮影されたMVも壮大でアルバムのイメージであるブラックをうまく取り込んでいます。
#2「I Lose Hope」はギタリストのシュルケによる楽曲ですが、ギター感はほとんどなくヒップホップを思わせるグルーヴにディレイを使ったおしゃれなリフがメタルバンドのそれとは異色を為す、バンドの新たな可能性を示唆する一曲です。
#3「Observe the Train」は自らの思考とマインドフルネスに関する楽曲でダークなMoon Safariとも言える厳かで美しいコーラスが魅力的です。北欧という地域のオリエンタルさがそこにはあると思います。
ポリリズムを用いた変則的リフが特徴的な#4「By My Throne」。こちらもメタル然としない4つ打ちのバスドラとディレイテクを駆使したギターのバッキングがシティ感ある空気を作り出しています。
#5「Alleviate」はメロディアスなボーカルパートとは裏腹に2:29〜の大サビに入るまでは即興的なニュアンスが強いアヴァンギャルドなナンバー。バッキングのコード感を廃止した分ピッツィカートとループ的なドラムによって土台を支えそこをボーカルが通り抜けていく浮遊感がなんとも芸術的。先述した大サビは#1に匹敵するカタルシスです。
電子ドラムを使用した#6「At the Bottom」と#7「Distant Bells」。どちらも7分超えの長尺となりますが#6はユーロな音色に変拍子のシーケンスが混じり、サビではエモーショナルかつハードに盛り上げる音の波を溺れるナンバー。対して#7は北欧のジャズやシンフォニックから影響を受けた一曲でピアノとナイロンギター、ストリングスが無から有を生み出す曲のテーマと幽玄さを大いに演出するバラードとなっています。
#8「Foreigner」はここに来てストレートなLeprous流のメタルナンバー。このアルバムにとってむしろこっちが異色と思えるほどハードビートな一曲ですがアルバム全体の濃霧を晴らすような痛快な一曲として絶妙に機能しています。
この勢いを保ったまま突入する11分半のラストナンバー#9「The Sky Is Red」はなんと没入状態から1時間半で書かれたという驚異の一曲。バッキングのクアイアにはセルビアのベオグラード合唱団による合唱が使われ激しい衝動を掻き立てられる楽曲を抑え込む荘厳さと緊張感を与えています。ストリングスとヘヴィなギターによるヴァースからのフェードアウトを加え曲は完結していますが、とてつもない異次元体験感を有しながら音楽的にもハイクオリティな1時間を堪能することができます。
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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