The Flower Kings「Back In The World Of Adventures」: ソロから昇華した北欧ベテランプログレの実質1st。ファンタジーかつ自然豊かなシンフォニックアルバム!

おはようございます、ギタリストの関口です。

今日からまたプログレ紹介へと戻っていきます。しばらくはこのバンドに重点を置いてブログを更新していくことになりそうです。

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Back In The World Of Adventures / The Flower Kings


Back In The World Of Adventures

The Flower Kings(ザ・フラワー・キングス)はスウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド。

TFK本格始動の1stアルバム


1970年代中期からスムースなプログレッシブ・ロックを展開するスウェーデンのKaipaに加入した当時若干17歳のギタリストRoine Stolt

彼はその後Kaipaの脱退と前後しながらソロ活動へと徐々に移行していくのですが、1993年の初めには自身3枚目となるソロアルバム「The Flower King」の制作に着手していました。このアルバムは複数のドラマーやキーボディストをゲストに招きながら、実際は曲の大半のインストルメントをロイネ自身が行う、今でいうDTM的な意味合いの強いアルバムでした。

そんな3rdアルバムから何かヒントを掴んだロイネはこの「The Flower King」で行なったプログレ音楽を追求していく形で自身のソロ活動をバンド化、バンド名をThe Flower Kings(以下:TFK)としました。

メンバーには当時、アルバムのレコーディングミュージシャンでありコンサートツアーにも同行していたドラムJaime Salazar(ハイメ・ザラザール)Hans Bruniusson(ハッセ・ブルーニソン)、サックスにはUlf Wallander(ウルフ・ワランダー)、ベースにはロイネの弟であるMichael Stolt(マイケル・ストルト)、そしてキーボードにはTomas Bodin(トーマス・ボーディン)が参加。

バンド名義では実質1stとなる本作「Back In The World Of Adventures」では参加していませんがもう一人、ギターボーカルとしてHans Fröberg(ハッセ・フレベリ)が前身の「The Flower King」、そして2ndアルバム以降に参加しています。

アルバム参加メンバー


  • Roine Stolt – Guitar, Vocal, Keyboard
  • Tomas Bodin – Keyboard
  • Michael Stolt – Bass
  • Jaime Salazar – Drums
  • Hans Bruniusson – Percussion, drums
  • Ulf Wallander – Saxophone

楽曲紹介


  1. World of Adventures
  2. Atomic Prince / Kaleidoscope
  3. Go West Judas
  4. Train To Nowhere
  5. Oblivion Road
  6. Theme for a Hero
  7. Temple of the Snakes
  8. My Cosmic Lover
  9. The Wonder Wheel
  10. Big Puzzle

ソロ3rdの趣を引き継いだ自然豊かな北欧らしいシンフォニックプログレアルバム

本作では唯一Hans Fröbergが参加していないためボーカルの全てをロイネが担当。その分他のアルバムよりボーカル楽曲にアンニュイな空気が広がっています。

#1「World of Adventures」はYesの「Close to the Edge」を彷彿とさせながら幕を明ける13分半の大作。ハードロックなイントロとエレピが柔軟に折り合ったメルヘンさ、もといファンタジーさを感じさせる一曲です。

「ギタリストロイネ・ストルト」としての側面が強く現れていて6:41〜のギターソロや7:35〜のオルガンと共に絡むネオクラシカルな変拍子ユニゾンなどは現在のTFKから聴くと新鮮かもしれません。

#2「Atomic Prince / Kaleidoscope」は特別大きなテーマを設けていないにも関わらず2部構成になったインスト楽曲でこれはプログレとしても珍しい形態。序盤の「Atomic Prince」はSAW系シンセリードによる7拍子のイントロから叙情的なギターソロが続いていくパート。対して後半「Kaleidoscope」は鳥のさえずりやキラキラとしたSEのアンビエントに尺八やフルートなどのパイプが雰囲気を作り出すアコースティックソロとなっています。

#3「Go West Judas」は一転、ヘヴィでダークなギターリフで攻めるロックナンバー。7拍子を基調としたスリリングなハードロックですが効果的に現れるメロトロンが70年代プログレの演出に一躍買っています。2:45〜のソロはワウを使った現在のロイネに通ずるエモさがありながら、速弾きやそれに触発されたツーバスが聴けたりとメタリックな一曲。

ピアノとメロトロンのノスタルジーなバックにボーカルが乗る導入が切ない#4「Train To Nowhere」。初期Kansasの「Lonely Wind」辺りを彷彿とさせ、悲しげなヴァースから後半は厚みのあるコーラスでパッと視界が開けます。

#5「Oblivion Road」#6「Theme for a Hero」は共にインスト曲。

#5はジャジーなピアノやブラスのリードがムーディに香る一曲。基本はジャズですが随所にパーカッションを挟んだ細かな気配りが聴いて取れます。

対して#6はインストながら8分半にも及び、特徴的なドラムパターンにニューウェーブなコード進行が独特な緊張感を生む、こちらも80年代以降のプログレッションといったイメージ。フルートのヴィンテージ寄りなサウンドメイクはFocusを、美しいピアノはどことなくVangelisを彷彿とさせる温故知新な一曲です。

小曲#7「Temple of the Snakes」を抜けるとCarlos Santana的なラテンポップの#8「My Cosmic Lover」へ。メロウなバンドを支えるベースの8分のラインが非常に印象的です。

4分ほどのインスト曲#9「The Wonder Wheel」で神聖な空気を味わうとラストには再び13分半の大作曲#10「Big Puzzle」が待っています。

6/8のピアノから悲しく鳴り響くギターは第3期King Crimson的で、オブリのブラスが余計それを増長させます。ロイネのボーカルも雰囲気にマッチ。

しかしながら2:10〜はいつも通り明るくオプチミスティックなTFKサウンドへと回帰。Yesから受け継ぐオルガンやギターのオクターブカッティング、クラップなどバラエティに富んだインターバルが5分ほど続きます。そうしてから再びボーカルパートへ戻り終幕へ。

最後に


メロディの構築はKaipaというよりすでにTFKとして確立していて、途中ハードな楽曲と静かなインストとが交互に現れたり、Gensis的な明るさから一転ダークな展開へと切り替えていく表情豊かなアプローチは、トータルアルバムとしての配慮が見受けられます

また、基本は明るいのにどことなくメランコリックさに捉われてしまう、そこがこのThe Flower Kingsを聴く一つの醍醐味と言えそうです。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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