四人囃子「一触即発」: メジャーデビューより45年。レアライブ音源も多数収録した和製プログレバンドのアニバーサリー!

おはようございます、ギタリストの関口です。

昨日もThe Flower Kingsが25周年という話をしましたが2019年はプログレにとってアニバーサリーであることが多いようです。

大きいところだとKing Crimsonの「21世紀の精神異常者」から50周年が最も有名で、90年以降では今日10月26日がDream Theaterの「Metropolis Pt.2: Scenes From A Memory」が20周年だったり。

King Crimson「In The Court Of The Crimson King」: 半世紀前のプログレ。頂点に立ち続けるUK音楽革命の帝王。

Dream Theater「Metropolis Pt.2」: 音楽的前世から後世へ繋いでいくUSプログレメタル世紀末の名盤。

まあ5年刻みなら毎年誰かのアニバーサリーかとも思うのですが、King Crimsonのこのことはいよいよプログレッシブ・ロックが生誕50年を迎えたという事実に他ならず、来年は「原子心母」50周年、再来年は「こわれもの」「タルカス」50周年という風にあと数年はビッグアニバーサリーが続いて行きます。

日本でもプログレの記念年が訪れまして本日はそちらをご紹介していきます!

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一触即発 / 四人囃子


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四人囃子(よにんばやし)は日本のプログレッシブ・ロックバンド。

来歴


1969年、ギターボーカルの森園勝敏さんとリーダーでドラマーの岡井大二さん、そこへベーシストとして中村真一さんを加え「ザ・サンニン」として活動を開始します。その後キーボディストに坂下秀実さんが加入したことでバンド名を四人囃子に変更、本格始動します。

1973年に邦画のサウンド・トラック「ある青春/二十歳の原点」でプレ・デビューを果たすと1974年には本作「一触即発」でメジャーデビュー。日本を代表するプログレバンドとして知られるのは「Pink Floydの「Echoes」を完璧に演奏できる」という演奏力の高さだけではなくその後のメンバーの実績も裏付けられています。

リーダーである岡井さんは90年代に一世を風靡したロックバンドL⇔Rのプロデューサー、翌年中村さんと交代する形でベーシストとして加入した佐久間正英さんはBOØWY、GLAY、JUDY AND MARYなど80年代〜90年代のJ-Rockの歴史を作ったバンドを輩出する名プロデューサーに(惜しくも2014年に亡くなられており晩年のドキュメンタリーなどよく見ていました)。

そんな音楽的な才覚に恵まれた四人囃子、先述した通り1974年のデビューから今年で45年。それを記念して本作のデラックスエディションが発売されました!

アルバム参加メンバー


  • 森園勝敏 – Vocal, Guitar
  • 中村真一 – Bass, Chorus (2011年没)
  • 岡井大二 – Drums, Percussion
  • 坂下秀実 – Piano, Organ, Synthesizer

Additional Musician

  • 石塚俊 – Conga

2002年に発売されたCD版「一触即発+2」では本作リリース後の1stシングル「空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ / ブエンディア」の2曲が追加となっていて、これに参加したレコーディングメンバーは以下の通り。

  • 佐久間正英 – Bass (2014年没)
  • 茂木由多加 – Keyboard (2003年没)

楽曲紹介


  1. [hΛmaebeθ]
  2. 空と雲
  3. おまつり(やっぱりおまつりのある街へ行ったら泣いてしまった)
  4. 一触即発
  5. ピンポン玉の嘆き

スタイルとしてはまさにPink Floyd直系とも呼べるアンビエントと繊細で奥行きのあるアプローチが特徴。4人編成バンド+1人だからこその楽器のシンプルさと深さがあります。

#1「[hΛmaebeθ](ハマベス)」はメロトロンとSEを組み合わせた1分足らずのオープニング。そこから和製プログレの空気を大いに纏った#2「空と雲」へと続いて行きます。今聴くと若干古臭さを感じる森園さんのボーカルですが、74年当時の日本の音楽は演歌、フォークソングと山口百恵、沢田研二などソロアーティストという図式なので、そう思いながら聴くと演奏力の高さやこのボーカルもかなりスタイリッシュでトンがってます。

#3「おまつり(やっぱりおまつりのある街へ行ったら泣いてしまった)」#4「一触即発」はいずれも10分を超える大作ナンバーとなっていて、同年に発売されたPink Floydの「狂気」を強烈に意識させるアレンジが組み込まれています。

日常から少しずれたナンセンスな歌詞も非常に味わいがあり、哲学的と言われるRoger Watersの歌詞も日本的に解釈するとこんな感じなのかもという想像の余地もあり趣深いです(話によると歌詞は作詞家の末松康夫さんによるものなのでプログレの影響はないとのこと)。

#3は3:27〜坂下さんによるキーボードソロがありフロイド的バッキングにGenesisが乗っかったようななんとも言えぬ浮遊感。逆に5:00〜の展開はKing CrimsonやDeep Purpleっぽさのある地に足のついたハードロックも魅せています。森園さんのギターはこうしたハードなアプローチやディレイを使ったトリッキーなソロ、コーラスによる広がりを持たせたアルペジオなど洋楽からの影響が強いギターテクニックが持ち味ですが一方で#4では抜群に歯切れのいいカッティングも披露しており単にプログレ=xと決め付けられないバックグラウンドの広さが最大の強みだと思います。

ラストナンバー#5「ピンポン玉の嘆き」はタイトル通りピンポン玉を容器の中で転がすSEが印象的なインストであり、そのSEは同時にディレイをかけることでパーカッション的な役割も担っているアイディア賞。変拍子とメロトロンのヴァースでひたすら浮遊感溢れるプログレアンビエントをシャワーのように浴びるための曲でありそれまでのタイトな演奏からたっぷりと余韻を残して締めるラストとなっています。

最後に


ちなみに今回発売されたデラックス・エディションですが、#4のモノラル・ヴァージョンを収録している他、ライブ音源が2枚に渡って展開。佐久間さん在籍時の名曲「泳ぐなネッシー」や「中村くんが作った曲」というロックンロールまで当時のライブハウスらしい音質で楽しませてくれます。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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