District 97「In Vaults」: ゲストを招かないバンド本来のゴシックサウンドを重心にした米プログレの3rdアルバム!

おはようございます、ギタリストの関口です。

二日空くとプログレの紹介も久々な感じがしますが、ずっと某北欧プログレメタルバンドのメロディックさに犯され続けていたので気分を変えて今日はこちらをご紹介!

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In Vaults / District 97


In Vaults

District 97(ディストリクト・ナインティーセブン)は、アメリカのプログレッシブ・ロック/メタルバンド。

よりゴシックに近づいた3rd


Dream Theater系列のテクニカルインストバンドとして結成されたDistrict 97。2006年の結成以降、その高い演奏力を武器にもっとリスナーがアクセスしやすい音楽を目指して来ました。

その上でメンバーが行き着いた結論はバンドに女性ボーカルを起用することでした。選ばれたのはアメリカのスター発掘番組「American Idol」、その第6シーズンで登場したLeslie Huntでした。

音楽性の違いでギタリストが交代する中、プログレッシブなメタルインストバンドはレスリーの個性にゴシックさを強め、楽曲もスタイリッシュなものへと変化。シカゴ交響楽団のチェロ奏者Katinka Klejinが2ndアルバムまでゲスト参加したこともこのスタイリッシュな音楽性への評価へと繋がっています。

そして2ndアルバムでは今は亡きKing CrimsonのボーカルJohn Wettonもゲスト参加しバンドとしてもステップアップ。本作「In Vaults」はそんな彼ら彼女らにとって初めてゲストを呼ばなかったバンド本来のサウンドが楽しめる一枚となっており注目です。

メンバー


  • Jim Tashjian – Guitar
  • Rob Clearfield – Keyboard
  • Patrick Mulcahy – Bass
  • Jonathan Schang – Drums
  • Leslie Hunt – Vocal

楽曲紹介


  1. Snow Country
  2. Death by a Thousand Cuts
  3. Handlebars
  4. A Lottery
  5. All’s Well that Ends Well
  6. Takeover
  7. On Paper
  8. Learn from Danny
  9. Blinding Vision

前作まで存在感を放っていた幽玄なチェロがなくなった分、バンドのゴシックさが強調されくっきりとした音像になったように感じる本作。キーボディストRob Clearfieldの仕事量が増えた印象があり、ロックバンドとしての個性を垣間見れます。

#1「Snow Country」は12弦ギターによる繊細なアルペジオからの幕開け。変拍子を交えたタイトなリフからボーカルイン、さらにテンポチェンジなど冒頭から二転三転のプログレッションを見せる一曲でチェロの穴をコーラスなどで埋めている部分もありオルタナ色が強い印象です。

#2「Death by a Thousand Cuts」はバンドのアグレッシブサイドが現れた一曲。ヘヴィさは元よりレスリーのボーカルも心なしかパワフル。短い曲の中でも各キャラクターが集約されていて3:26〜のアームがうねるギターソロもエモーショナル。

ゴシックな雰囲気の中にDistrict 97風のポップさが見える#3「Handlebars」。イギリスの女性VoプログレMagentaに近い様式を感じます。3:22〜はYes風の丸っとしたキーボードソロも。

#4「A Lottery」はこれまた前半の清涼なバラードから中盤以降スリリングにテンポアップしていくインストパートを内包した一曲。若干ブーミーなディストーションとクリアなボーカルとピアノとのコントラストが美しい

宇宙的な空気を感じるシーケンスフレーズがテーマとなっている#5「All’s Well that Ends Well」ダークな雰囲気に透き通るレスリーのボーカル、とバンドサウンドを彩るロブのピアノをフィーチャーしたバラードとなっています。

長らく続いたスローな空気を一変させるメカニカルなリフが特徴の#6「Takeover」。手数が多めのドラマーJonathan Schangがきっちりビートをキープしている様子が、返ってダークを醸し出すファクターとなっているのかもしれません。

フォークな雰囲気があるギターのアルペジオから男性メンバーのコーラスも加わった序盤のヴァースが印象深い#7「On Paper」。ちょうど折り返しにあたる2:24〜本来のバンドが得意としているMetallica風味のテクニカルパートに続いていきます。

#8「Learn from Danny」は#3を思わせるレスリーのボーカルから、King Crimsonを思わせるカオスな展開が続く難解ソング。Genesisライクなキーボードソロがあったり6/8の壮大なパートによるギターソロがあったりとビュッフェ的に詰め込んだ一曲。

11分半となるラスト#9「Blinding Vision」はうっすらチェロかメロトロンか、プログレ的なシンフォニックの影が見えデビュー当時のバンド像を実感できます。曲は怪しく厳粛で本作のゴシックさを最も表現していると言っていいでしょう。7:36〜はKing CrimsonもそうだしMike Oldfieldやチェンバーロック風のアプローチからクロージングに向かっていきます。

最後に


チェロのシンフォニックさを補う分、ボーカルの表現力やコーラス、そしてキーボードのオペラ的アプローチが増えた印象の今作。メロディックさで言えばこれまでの1stと2ndに及ばないものの、より複雑でカオスな雰囲気を味わいたい方にはこちらがオススメと言えます!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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