Yes「The Yes Album」: Steve Howeという名手から生み出された開放ロック!プログレへと舵を切った歴史的サード・アルバム!

おはようございます、ギタリストの関口です。

Flying Colorsのニューアルバムが無事海を渡って手元に届いたところで、改めて2019年はプログレにとって豊作の年だったなと、まだ2ヶ月残してすでにお腹いっぱいになっているわけです。

連日リリースされる最新アルバムの新鮮さに浸りつつもやはり原点を司る70年代が恋しくなったりもしますので本日はこちらをご紹介していきます!

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The Yes Album / Yes


サード・アルバム(スティーヴン・ウィルソン・リミックス)

Yesはイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。1970年代初期のプログレ最盛期の立役者として広く影響を与えたUK五大プログレバンドの一角。

結成から本作に至るまで


1968年にWarriorsと呼ばれるバンドを脱退したボーカルJohn Anderson。その後、ベーシストChris SquireとギタリストClive Baileyから誘われMabel Greer’s Toyshopに加入します。そのタイミングでMGTの元メンバーであったPeter Banksがバンドに復帰。ドラムにはメンバー募集の広告を見たBill Brufordが加入しバンドはYesという名前に改名します。

一時ブラフォードが抜けたり、ベイリーが正式に脱退したりとメンバーチェンジもありましたがアルバム制作には復帰したブラフォードと新たにキーボディストTony Kayeを迎え、1969年に1stアルバム「Yes」がリリースとなります。

また翌年1970年には2ndアルバム「Time and a Word」がリリースされていますが、この頃のYesは全盛期のようなプログレッシブな音楽性ではなく結成当初目指していたThe BeatlesやThe Whoといった正統派UKロック、及びサイケデリック・ロックでした。

この2ndアルバムでは早くもオーケストラの導入を行なっておりロックに対して前衛的な意識を持っていた反面、オーケストラに否定的だったバンクスがギターパートを大幅に削られ、そのことでプロデューサーなどとも折り合いが付かなかったためリリース前にバンドを解雇されることとなります

バンクスの後任として加入したのがSteve Howe。エンジニアには同年Emerson, Lake & Palmerの「Tarkus」でも知られることとなるEddie Offordが就き、制作されたのが本作「The Yes Album」。邦題は「イエス・サード・アルバム」で、前年に言葉として生まれたプログレッシブ・ロックへとバンドは向かっていくこととなります

アルバム参加メンバー


  • John Anderson – Vocal
  • Steve Howe – Guitar, Vocal
  • Chris Squire – Bass, Vocal
  • Bill Bruford – Drums, Percussion
  • Tony Kaye – Keyboard

楽曲紹介


  1. Yours Is No Disgrace
  2. Clap
  3. Starship Trooper
    Ⅰ. Life Seeker
    Ⅱ. Disillusion
    Ⅲ. Würm
  4. I’ve Seen All Good People
    Ⅰ. Your Move
    Ⅱ. All Good People
  5. A Venture
  6. Perpetual Change

前作「Time and a Word」もYesがやれば十分プログレに聴こえてしまうのですがそれでも本作は音像がガラッと変わり、本作から「Fragile」「Colse to the Edge」と言ったバンド全盛期の名盤へと飛躍していくその一枚となります。

プログレッシブ・イエスなる#1「Yours Is No Disgrace」は印象的なギターリフ、そこに乗るオルガンやコーラスなどYesを象徴するプロトタイプのプログレソングです。中盤ではウォーキングベースやアコギ、ジャズテイストを感じさせるシーンの数々をメインパートで挟んだ組曲的な作りにはなっていますが次回作「Fragile」収録の「Roundabout」の原型とも言える構築ロックです。

加入したてのハウが奏でるカントリー調のアコースティック・ソロギターが聴ける#2「Clap」。3分強のインストとなりますが音も良く思わず聴き入ってしまうクオリティです。クレジットには「The Clap」と書かれていますがWikipediaによるとこれは誤植なようで、ラストに巻き上がる歓声から「Clap(拍手)」の方が正しいそうです。

#3「Starship Trooper」Yesにとって初めての組曲。アンダーソン作の「Ⅰ. Life Seeker」とスクワイア作の「Ⅱ. Disillusion」、そしてハウのソロである「Ⅲ. Würm」をエピローグに添えた3部構成となっています。

2部構成の組曲#4「I’ve Seen All Good People」の冒頭、アカペラコーラスはこれもプログレの典型的アプローチとしてKansasやSpock’s Beardなどに受け継がれる王道のスタイルです。アンダーソンのハイトーンとコーラス、アコギのシンプルな構成で奏でる前半とUKロックの風情を感じさせるシャッフルの後半という二面性を楽しめる一曲です。

トニーのピアノが印象的な#5「A Venture」。しかしながらトニーはピアノとオルガンに固執し新たに登場したシンセサイザーを拒んだことで、このアルバムを最後にバンドを脱退しています。

ラスト#6「Perpetual Change」はイントロからアタックの強いピアノとギターによるコードユニゾン。ハウのギターはイントロのソロやトレモロエフェクト、ハーモニクスなどインスピレーションに溢れた魅力的なアプローチが続きます。

アンダーソンのゆったりとしたボーカルパートとイントロから聴かせるテーマを交互に繰り返すことによるギャップが刺激的で変拍子やジャズテイストのアレンジなど技巧的にも聴かせる、Yesによる空間の支配力が強い一曲です。

最後に


全体を通してハウの功績が際立ち、水を得た魚のように非常に生き生きとしている印象を受けるアルバムです。プログレにありがちな閉塞感や緊張・切迫感といったものをあまり感じず単純なロックアルバムとして明るく聴き通せる音像はプログレバンドである前にYesとしてのイメージを象徴しています。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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4件のフィードバック

  1. dalichoko より:

    あれ?リック・ウェイクマンじゃないんですね。
    (=^・^=)

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