The Psychedelic Ensemble「The Tale of the Golden King」: プログレ界で最も謎な人物。ファンタジックな世界観で紡ぐ超王道シンフォニック・ロック!

おはようございますギタリストの関口です。

朝が暗い!

最近なかなか6時前に起きられなくなったので疲れが溜まってたりするのかなと思っていたんですが単純に暗いんですね。気温的にも布団から出にくくなったしこれから冬にかけて頑張らなくては…

というわけで、本日もプログレのご紹介をしていこうと思います!

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The Tale of the Golden King / The Psychedelic Ensemble


Tale of the Golden King

The Psychedelic Ensemble(サイケデリック・アンサンブル)はアメリカのマルチミュージシャン。

来歴・音楽性


The Psychedelic Ensemble(以下:TPE)のデビューは2009年。Musea Recordsより「The Art of Madness」がリリースされます。

このMuseaはフランスでプログレッシブ・ロックのために設立された非営利のレコードレーベル。所属バンドでは同国のMagmaや日本の新月などが有名どころかと思いますが、リリースに関わったアーティストはこの限りではなく、Rick WakemanAnglagrdFocusKaipaなど国を越えて広くプログレッシブ・ロックの活動を支援しています。

2010年、2ndアルバム「The Myth of Dying」をリリース。TPEが誇る複雑でファンタジックな音楽は度々評価を受け、1stではProgAwardsのBest Debut Albumにノミネート、この2ndアルバムも2010年のGlobal Progressive Rock Poll Top 100のうち第29位と好成績を残します。

そんなTPEの音楽スタイルはプログレッシブ・ロック、シンフォニック・ロック、ジャズ/フュージョンそしてクラシックを併せ持ったクロスオーバーなアバンギャルド・ミュージックです。

現在、2013年リリースの本作「The Tale of the Golden King」を含む6枚のアルバムがリリースされていますが、いずれも曲間をシームレス・ギャップレスにしたコンセプトアルバムであるのが特徴的です。2019年にはニューアルバム「Mother’s Rhymes」がリリースされています。

謎の人物「サイケデリック・アンサンブル」


と、ここまでいつものように人物の基本情報から入っていきましたが、実はこのTPE、単体のマルチミュージシャンという以外、パーソナルな情報が謎に包まれています

マルチインストゥルメンタリストとして、これまで20を超えるASCAP賞(アメリカの著作権団体が主催するミュージックアワード)を受賞していきた人物なのですが、その素性は明かしておらずアルバムに参加したゲストの名前くらいは公表されていますがそれ以外は出さない、ミステリアスなミュージシャンとなっています。

僕が知ったのはApple Musicのオススメを辿っていた流れだったのですが、ここまで謎だと実際CDを入手するしかないかなと思うも、このアルバムに限ってはAmazonや楽天ではプレミア物で2万円以上の値がついています。

一応海外のCD購入サイトでは標準的な価格で売られてはいますが、プログレ専門の中古CDショップに何かの間違いで出回っているのを見かけたら是非手に取ってみてください。そして僕にご一報ください笑

メンバー


  • The Psychedelic Ensemble – All instruments, Vocal
  • Ann Caren – Lead Vocal on #5, #9, Chorus
  • The Psychedelic Ensemble Orchestra  – Symphony by Jonathan Roberts

楽曲紹介


  1. Overture – Our Great Kingdom
  2. The Prophecy of the Seer – The Transformation of the King
  3. The Golden King
  4. Captive Days
  5. The Queen of Sorrow
  6. Save Yourself
  7. Make a Plan – Golden Swords
  8. The Battle
  9. Great Day
  10.  Finale – Arise! – Great Kingdom

2013年にリリースされた本作「The Tale of the Golden King」。コンセプトアルバムを主体としたリリースをコンスタントに続けているTPEの4thにして、如何にもコンセプトらしいファンタジックを孕んだジャケットが印象的です。

#1「Overture – Our Great Kingdom」から王国風情なシンフォニックのオープニング。アコギのアルペジオにバグパイプベースのシンセリードが雰囲気を引き立てます。TPEの意外と70年代っぽいボーカルに、リードギターやSAW系のシンセリードがオブリ的に絡んでくるヴィンテージプログレの21世紀版といった印象。5:22〜はYesの「The Heart Of Sunrise」を思わせました。

オーケストラを採用しているだけあってクレジット以上の楽器数と豪華さ。#2「The Prophecy of the Seer – The Transformation of the King」ではオルガンあり、フルートあり、重厚かつ効果的なベルありと序盤からすでに情報量が多い楽曲。この曲からゲストボーカルであるAnn Carenがコーラスにも参加しています。

タイトルの一端でもある#3「The Golden King」はさらにそれを凌ぐ勢いのオーケストレーションで、まるで大河ドラマのオープニングのような壮大さ。そこからAfter CryingやGenesisのようなシンフォロックへと展開していきます。TPEによるギターの腕もかなりのもので、音自体は細いのですが随所で見せるフルピッキング、5:23〜のようなシンセとのユニゾンフレーズもプログレッシブ・メタルを取り込んでいたりしてテクニック部分も十分。

#5「The Queen of Sorrow」ではゲストのアンがリードボーカルとして参加。KingのコンセプトにおいてQueenのテーマだからだと思いますが、ゴシックらしさを感じつつも透き通った声質とドラマ性を感じられる表現力が豊かなボーカルです。

場面場面で細かくトラック分けせず曲としてまとめられるところは#7「Make a Plan – Golden Swords」のように1曲になっているのですがそれがプログレッシブ・ロックらしい複雑な曲展開を産んでますね。特に本曲は70年代のUK五大プログレを強く感じるアプローチの数々で続く#8に向けヴォルテージを最大にしていきます。

そんな#8「The Battle」はタイトル通りのテクニカルなインストナンバー。チャーチオルガン、尺八のような管、オリエンタルなギター、さらにハモンドオルガンと楽器数を重ねていき典型とも言える構築プログレのハイライトです。リードはどちらかというとキーボード主導なのでギターが目立つわけではありませんが、ゲームのラスボス戦のような高揚感を煽るアプローチは誰しも好きだと思うのでチェックしてみてください!

#9「Great Day」は12弦ギターのきらびやかなサウンドと再び登場するアンのボーカル、そして豊かなコーラスワークが実にマッチしていて気持ちいいアコースティックナンバー。キーボードの音色については詳しくないですがDream Theaterの「Solitary Shell」のような空気を感じます。

3部構成11分半のラストナンバー#10「Finale – Arise! – Great Kingdom」。これまでの旅のような音楽の構築美を締めくくる壮大なシンフォニック・ロックです。基本的に70年代のUKプログレ、Dream Theater、そしてそれらに紐付いたキーボードワークとクラシカルなオーケストレーションが好きな方にはハマるTPEの音楽。是非、この「王道」な「キングダム」ロックを堪能していただきたいと思います!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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