District 97「Trouble with Machines」: 晩期のJohn Wettonも参加!芸術的な超展開を孕んだUSプログレハードの2nd。

おはようございます、ギタリストの関口です。

台風のと被った3連休三日目。ここ二日は珍しく怠惰に過ごしてしまいましてやりたいことの一割もできなかったなという感じ。

ツイッターでも「暇にしているといいことがない」という意図のツイートがあって見事に当てはまったので、暇なわけではないのですが今日からまた自分を追い込んで忙しくしたいと思います!

というわけで久々にプログレ紹介行きますね!

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Trouble with Machines / District 97


Trouble With Machines

District 97(ディストリクト・ナインティーセブン)は、アメリカのプログレッシブ・ロック/メタルバンド。

John Wettonを迎えて作られた2nd


元はLiquid Tension Experimentのようなテクニカル系インストプログレを演奏していたDistrict 97でしたが、アメリカのスター発掘番組「アメリカン・アイドル」で注目を浴びたLeslie Huntをボーカルに迎えることとなります。

テクニカルさは残しつつも従来のようなインスト音楽でなくなる方向性の変更にオリジナルメンバーであったギタリストSam Krahnが脱退、代わりにJim Tashjianが加入します。

さらにチェロ奏者のKatinka Klejinが参加することでバンドは正統派のプログレッシブ・ロックに女性ボーカル、さらにクラシカルなキメフレーズをキーボード、ギター、チェロとでユニゾンする独自の音楽性へとたどり着きます。またそれはよりアクセシブルな音楽を追求した結果でした。

そうして2010年に「Hybrid Child」でデビューした5人はさらに2ndアルバムをリリースすることとなります。

2ndアルバムに辺りバンドが誘ったゲストはなんとKing Crimson、UK、Asiaで知られるボーカリストのJohn Wetton。2017年に患っていた大腸ガンによりこの世を去った彼にとって2012年の本作「Trouble with Machines」はかなり遺作に近い晩期に当たる音源となりました。

アルバム参加メンバー


  • Jim Tashjian – Guitar
  • Rob Clearfield – Keyboard
  • Patrick Mulcahy – Bass
  • Jonathan Schang – Drums
  • Leslie Hunt – Vocal

セッションメンバー

  • Katinka Klejin – Cello

ゲストミュージシャン

  • John Wetton – Vocal (2017年没)

楽曲紹介


  1. Back and Forth
  2. Open Your Eyes
  3. The Actual Color
  4. The Perfect Young Man (feat. John Wetton)
  5. Who Cares?
  6. Read Your Mind
  7. The Thief

#1「Back and Forth」からオーストラリアのAC/DCを思わせる開放弦を利用したトリッキーなリフ。フレーズを半音シフトさせていくアレンジで独特な浮遊感と緊張感を付与していくプログレッシブな楽曲。ハードな演奏は前作からそのままにレスリーのボーカルも怪しさ満点です!中盤のライトハンドを多用したテクニカルなソロも必聴!

District 97にとってはストレートなパンクロックナンバー#2「Open Your Eyes」。Avril Lavigneのような雰囲気があり痛快なサビのコーラスはさすがスター発掘番組出身の力量を感じさせます。ハーモナイズされたリードギターなど全然そっち方面でもいけるよという一曲。

#3「The Actual Color」はこれまた正統派なプログレ曲。開幕5拍子のキメからリスナーの嗜好をドンピシャにキャッチしてきます。#1に続くような浮遊感とシンセのきらびやかなアンビエントがハードなバンドサウンドとうまく棲み分けてくれて情報量が多い一曲。3:31〜の変拍子を多用したインターバルは個人的にも大好物です。

ウェットンがゲスト参加した10分の大作#4「The Perfect Young Man」。アメリカンロックでポップな歌の導入でバンドこそハードですがレスリーのボーカルがそれを中和させてくれるので嫌味がありません。

メロウなギターソロが終わると3:07〜からお待ちかねのウェットンパート。晩年の男のボーカルは最後まで全く衰えを感じさせませんね。クリムゾンを彷彿とさせるディミニッシュのテンション上で織りなすデュエットもパワフルで感無量!スペシャルゲストなだけはある、本作のハイライトですね!

#5「Who Cares?」はクリーントーンでの線の細かいリフが特徴的でDream Theaterの「In The Presence Of Ememies Pt.1」っぽさも感じられる一曲。アコースティックな雰囲気はイギリスのMagentaらしさもありますね。

本作までセッションメンバーとして参加しているチェロ奏者Katinka Klejinの独奏をイントロに添えた#6「Read Your Mind」美しい音色からミステリアスなアンサンブルへ展開していきます。アルバム全体で言えることですが、ボーカルのバックで同メロのピアノなりチェロなりがユニゾンしてくるので結構プログレッシブな展開もあって結構ミュージカルっぽいですね。

ラストは13分にも及ぶ大作ナンバー#7「The Thief」で締め。#5で見せたクリーントーンとミュートアルペジオで曲自体が締まっています。2:17〜からはクラビ系のサウンドとクラシカルなアプローチも随所随所に挟む細かい演出が聴き逃せない。

展開がめまぐるしく一概に曲調を表現できない難解さはありますが、スイッチを切り替えるようなアクセントのハーモニクスがかっこいい。逆に一曲の中でアラカルトに色んな展開が聴けるのでそのカオスぶりを楽しんだらいいかなという感じ。演奏はハードで巧いし退屈することはありません。

最後に


前作である「Hybrid Child」よりも複雑性、芸術性共にを増した印象の本作。

ウェットンとの絡みも見事だし彼が亡くなってしまった現状、これからのアメリカンプログレを支える重要ポストとして引き続きこのブログでも紹介していきます!

 

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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