Opeth「In Cauda Venenum」: 二か国言語によるニューアルバムがついにリリース!北欧の暗黒神が放つヴィンテージプログレメタル!

おはようございます、ギタリストの関口です。

10月に入り世間は増税に揺れていますがみなさんは何か滑り込みで買われたのでしょうか?

僕はちょっと奮発してカメラを買いまして、これが今YouTubeなど動画投稿界隈でも人気のモデルです。これからの撮影や活動に活かしていこうと思います!

さて、本日はリリースされたばかり!2019年プログレでも話題沸騰のこちらです!

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In Cauda Venenum / Opeth


イン・カウダ・ヴェネノム[2枚組CD(英語ヴァージョン+スウェーデン語ヴァージョン)[日本語解説書封入]]

Opeth(オーペス)はスウェーデンのプログレッシブ・メタルバンド。

二か国語同時リリースの最新作


予告の段階から、今作がOpethにとって初めて自分たちの母国であるスウェーデン語によるアルバムをリリースすることが明かされていました。

1990年にストックホルムでボーカリストDavid Isbergが中心となり結成されたOpeth。結成当初、ベーシストとして誘われた現在のボーカルであるMikael Åkerfeldtがバンドを立ち上げたデヴィッドに代わってフロントマンを務めることになるのはデビューアルバム時、すでにこのときでした。

1970年代イギリスの五大プログレッシブ・ロックバンドとしてレジェンドになり今尚自らのスタイルを貫き通しているKing Crimson直系とも言えるダウナーなサウンド構築に、攻撃的なデスメタルと叙情的で美しい二面性を同居させた「静と動」の体現者として、それまでありそうでなかった独自のスタイルをOpethは築き上げます。

2001年にはイギリスのプログレッシブ・ロックバンドPorcupine Treeのフロントマンであり敏腕の音楽プロデューサーでもあるSteven Wilsonとミカエルとのタッグが実現。5thアルバム「Blackwater Park」は単なるデスメタルで終わらない深淵なる名作としてメタル、プログレ両サイドにとっての遺産の一つとなります。

1995年のデビューから2008年「Watershed」までデスメタルを基盤としたプログレを展開していきますがミカエルはその時点で自分たちが身を置くメタルシーンについて、ある疑問にたどり着きます。

そしてその疑問からはじき出した答えは、自分たちの音楽からデスメタルを完全撤廃することでした。

2011年にリリースされた「Heritage」はOpethがロックバンドとしてのルーツに立ち返り、King Crimson直系としてのトラディショナルなプログレッシブ・ロックを展開すべくバンドの一大変革に打って出たアルバムでした。

もちろんリリース当初は賛否両論の問題作でしたが、これまで以上にクラシカルでヴィンテージのサウンドを追求した新たなプログレメタルの形は、続く2014年「Pale Communion」、2016年「Sorceress」でも引き継がれ、8年後の今日もこうしてブレることないバンドのスタイルとして確立しています。

そんな前作「Sorceress」のツアー終了後、ミカエルの脳裏に新たに沸き起こったのは母国のスウェーデン語でアルバムを制作することでした。

エンジニア兼プロデュースにはスウェーデンのバンドKentのプロデューサーでも知られるStefan Boman氏が担当。ステファンはABBAにより設立された有名なポーラースタジオで1995年からエンジニアとして腕を振るい、2004年以降は自身のスタジオとしてパークスタジオを設立、先述のKent以外に様々なバンドとの仕事を行なっています。またヴィンテージ機材にも精通しているようでミカエルとの息もぴったり。

こうして愛国心に満ちた遠くスウェーデンの地から二か国語対応のニューアルバム「In Cauda Venenum」がリリースされました!

メンバー


  • Mikael Åkerfeldt – Vocal, Guitar
  • Fredrik Åkesson – Guitar, Chorus
  • Joakim Svalberg – Keyboard, Chorus
  • Martín Méndez – Bass
  • Martin Axenrot – Drums, Percussion

楽曲紹介


英語版

  1. Garden of Earthly Delights
  2. Dignity
  3. Heart In Hand
  4. Next of Kin
  5. Lovelorn Crime
  6. Charlatan
  7. Universal Truth
  8. The Garroter
  9. Continuum
  10. All Things Will Pass

スウェーデン語版

  1. Livets Trädgård
  2. Svekets Prins
  3. Hjärtat Vet Vad Handen Gör
  4. De Närmast Sörjande
  5. Minnets Yta
  6. Charlatan
  7. Ingen Sanning Är Allas
  8. Banemannen
  9. Kontinuerlig Drift
  10. Allting Tar Slut

まず、二言語によるリリースということでどちらを買おうか(聴こうか)と悩まれるところかと思います。上に貼ったAmazonのリンクからは二枚組で両方の言語を楽しめる仕様となった正規国内盤に飛ぶことができますが、僕は今回英語版を購入。

というのも、僕はCDで楽しみながらApple Musicも使っているのですがしっかりタイトルが反映されているスウェーデン語と違って英語版はカタカナ表記だったんですよね笑

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正直これを見た瞬間Apple Musicで聴く気が失せてしまい少なくとも英語版はCDから自分で取り込みたいという結論に至りました。

ジャケットアートはおなじみTravis Smith。1999年「Still Life」からOpethとは良きビジネスタッグを築いていますが、方向性を変化させた「Heritage」以降はそれまでの重苦しい雰囲気を一新、絵画のようなカラフルでその時々のバンドの心境に沿うようなアートに変化してきました。

さて、肝心のアルバムですが基本的な方向性は2011年「Heritage」より大きく変わってはいないものの、前作「Sorceress」と比べてもよりメタル方面へシフトしたアグレッシブな楽曲が多いです。少なくとも「Heritage」で見せたトラッド特化よりは以前のOpethのようなモダンなアプローチが増えました。

純粋なプログレッシブ・メタルへ収束してきたと言ってもいいと思います。#1「Garden of Earthly Delights」のクアイアによる荘厳なイントロを抜けると痛快なメタルアルバムとして華麗に幕を開けます。

#2「Dignity」は空間を這い回るような王道のOpethサウンド。フレドリックのギターソロも絶好調でそこから一気に落としにかかるアコースティックな展開もお手の物。随所にウィンドチャイムなどのパーカッションを挟んだり細かな発見が多いです。

先行配信された#3「Heart In Hand」は6弦開放による純然たるメタルの刻みにディミニッシュの怪しげなメロディが乗っかったイントロ。先行配信ではスウェーデン語バージョンで楽しませてもらいましたが英語版も違和感なくいい感じ!というか声の質感や歌い方などそのままに言語だけ変わってるの地味にすごすぎないか?と感心してしまうばかりです。

 

#4「Next of Kin」は美しいサウンドにゆったりと重くのしかかる陰鬱なメタルが堪能できる一曲。現在の方向性へシフトした際のサウンドイメージにも近いです。一方でギター、ストリングス、ボーカルが一体となった爆発しそうなサビは一聴の価値あり。

ピアノと豊かでメロディックなコーラスで彩られたバラード#5「Lovelorn Crime」エモーショナルなギターソロはJohn Petrucci的であり「Another Day」や「At Wit’s End」を強烈に蘇らせました。

「Sorceress」に通ずるような#6「Charlatan」。タイトルは唯一English、Swedish共通で前半はテクニカルプログレに興じるものの後半に入り続く#7「Universal Truth」に流れていくようなバラードへと変化していきます。両者ともメロトロンなどヴィンテージ感の強いサウンドに酔うことができるワンシーンです。

怪しげかつドラマティックな表情とジャズテイストを加えた玄人向けの#8「The Garroter」、序盤の軽快なドラムパターンで思わず油断してしまいそうになるハードな#9「Continuum」はワウを効かせた強力なギターソロも堪能できる一曲です。

珍しく10分を超える曲が収録されなかった本作のラスト#10「All Things Will Pass」はそれでも8分半に渡るOpethサウンドが空間を占拠します。どこまでも深く深く突き進みながら最後は思い切り地上の空気を吸わせてくれる一種のアロマセラピーのような1時間は大きなテーマとともにフェードアウトして幕を閉じます。

最後に


実はOpethに関しては後追いであることが多く、こうしてリリース前から待機して即キャッチというのは個人的に今回が初めてだったんです。才能溢れるバンドの芸術的作品にリアルタイムで触れることができたことが今回何より嬉しかったですね!

12月には大阪と東京で来日公演が行われるということでこちらも大いに楽しみですね!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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