Emerson, Lake & Palmer「Tarkus」: 飽くなき探究心と変態的なセンスが生んだ音の巨大モニュメント!

おはようございます、ギタリストの関口です。

この「ギタリストの」という肩書きを毎日のように言っていますが今日はギターの出番が少なさそうです。ご紹介するのがあの名盤だからです。

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Tarkus / Emerson, Lake & Palmer


TARKUS

Emerson, Lake & Palmer(エマーソン・レイク&パーマー、以下:EL&P)は、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド。1970年から活動し五大プログレッシブ・ロックバンドの一角を担う存在として後世に多大な影響を与えました。

またメンバーの3人がすでに優秀なキャリアを持つ実力者だったため、後にスーパーグループの先駆け的存在としても呼ばれるようになります。

バンド結成の経緯


1960年代、The Niceというバンドでキーボードを演奏していたKeith Emersonが、その音楽をより突き詰めることを目的としたバンドとして結成したのがEL&Pとなります。

実際、The NiceのメンバーであったベースボーカルのLee Jacksonは同じくドラムのBrian Davidsonと共に「キースの持ち込んだ音楽に僕らがリズムを合わせていく」「付いていくのがやっと」と答えており、キースもそんなメンバーの技量不足に不満を感じていました。

キースが新たなバンドを結成する上でまず声がかかったのが第一期King Crimsonのボーカルを担当したGreg Lake。EL&Pではもっぱらシンプルなコード進行と美しい歌メロを書く多才性で知られます。

また当時Atomic Roosterに所属していたCarl Palmerもバンドではギターの持つ役割をキーボードに置き換えるといった考えを持ち合わせており、これがキースと意気投合。持っているレコードや音楽的趣向も同じだったためバンドを抜けEL&P結成に加担しました。

1970年、EL&Pの実質的なデビューは8月にワイト島で開催された「第3回ワイト島フェスティバル」でのライブ・ステージと言われています。このときすでに並外れた演奏技術とキーボードに膝ごと乗っかるようなアグレッシブなパフォーマンスで会場を沸かせます。

メンバー


  • Keith Emerson(キース・エマーソン) – Keyboard (2016年死去)
  • Greg Lake(グレッグ・レイク) – Vocal, Bass, Guitar (2016年死去)
  • Carl Palmer(カール・パーマー) – Drums

モーグ・シンセサイザー


EL&Pにはギタリストが在籍しておらず、その一旦を担っていたのがキーボードでありキースでした。

それまで、ロックにおけるキーボードというとアンプから音を出しているギターや大音量のドラムに押し負け、ステージの端でコードを弾くに止まる楽器でした。キーボードソロを弾こうというものなら、そのパート中、他のバンドメンバーに音量を抑えてもらう必要すらありました。

モーグ・シンセサイザーが登場したのはそんな頃であり、これの使用を提案したのはグレッグ。肝心のキースは初め懐疑的でしたが、操作の難しいシンセサイザーを使いこなすと、強烈なポルタメントで攻撃的に突き抜けるそのサウンドはキーボードをコード楽器からリード楽器へとランクアップさせたのです。

5拍子のジャズ


1970年11月にデビューアルバム「Emerson, Lake & Palmer」がリリースされその直後からイギリスやヨーロッパを回るツアーが行われました。

年が明けると2ndアルバム制作に向けバンドは早くから動き出します。その過程で行ったライブ音源が「展覧会の絵」です。最も「展覧会の絵」がリリースされるのは年末近い時期となります。

Emerson, Lake & Palmer「Picture At An Exhibition」: ジョジョ第5部のテーマから考察する「芸術」と「魂」の形。音楽に「運命の石」は存在するのか。

YesのキーボディストRick Wakemanがクラシックからの影響を持つ反面、キースはジャズからの影響を持っていました。キースが目をつけたのは1959年のジャズピアニストDave Brubeckが発表した「Blue Rondo À la Turk」

トルコの伝統民謡アクサクのリズムを取り入れた5/4拍子(10/8拍子)のジャズで、カールが叩いたこの拍子のアクセントにキースが左手によるオスティナートでメロディを付けるというアイディアに行き着きます。これが「Tarkus」に繋がります。

The Dave Brubeck Quartet「Time Out」: トルコ民謡をヒントに後のプログレにも多大な影響を与えた西海岸ジャズの代名詞!

しかしながら、ボーカリストであるグレッグからは「複雑な変拍子がひたすらループしてるだけでこんな上に乗っかるメロディも歌詞も思い浮かばない。こういう音楽がやりたいならソロでやれば?」と批判されました。

EL&Pの楽曲制作は、キースかグレッグが持ち込んだ曲をバンドで仕上げる手法が取られており、この両者の嗜好は言ってしまえば相反するものでした。常に複雑なコードやリズムを提示してくるキースに対し、元々アコースティックギタリストであったグレッグはシンプルで美しい歌メロのナンバーを書いていたからです。

ここに仲介に入るのがカール。両者の意見を聞きながらバンドを成立させるためのフォロワーとして助言する立場にあり、「Tarkus」においてもキースに「歌メロをつけやすいコード進行をグレッグに出してみてはどうか」と提案。

後に「Stones of Years」へと繋がるそのプログレッションにグレッグも納得し、レコーディングに向け準備も進んでいたこともあって本格的に楽曲制作が進みました。

エンジニアにはYesを担当したことでも知られるEddy Offordが抜擢。20分に渡る長尺曲のレコーディングは必ず誰かが失敗をし納得のいくものができなかったため、パートごとに満足のいくテイクを録音できたら次に進むという手法が取られました。

もちろん当時はアナログレコーディングだったためテープを繰り返し繰り返しダビングしていくのですがその編集は17回に及びました。

楽曲紹介


  1. Tarkus
    Ⅰ. Eruption
    Ⅱ. Stones of Years
    Ⅲ. Iconoclast
    Ⅳ. Mass
    Ⅴ. Manticore
    Ⅵ. Battlefield
    Ⅶ. Aquatarkus
  2. Jeremy Bender
  3. Bitches Crystal
  4. The Only Way (Hymn)
  5. Infinite Space (Conclusion)
  6. A Time and a Place
  7. Are You Ready, Eddy?

言わずと知れた当時のレコードはA面とB面とに分かれていて、言ってしまえば円盤状のカセットテープなのですがこれのA面目一杯に収録されたのが前述した#1「Tarkus」

音の巨大モニュメントとしてインストパートとボーカルパートが交互に展開する全7パートに及ぶ楽曲構成で、クラシックやジャズ、ロックを巻き込んだ圧倒的高密度のロックミュージックとなりました。また1970年代に最盛期を迎えたプログレッシブ・ロックというジャンルの代表曲として「Tarkus」はその典型ともなりました。

物語は火山の噴火によって生まれた架空の怪物タルカス(オリジナル)が地上の全てを破壊し海に帰っていくというもので、肝心のタルカスはジャケットに描かれており、アルマジロと戦車が融合したのような姿をしています。

「Ⅰ. Eruption(噴火)」では5/4拍子であるその曰くのイントロを堪能でき時代を象徴するプログレッシブな導入となっています。

「Ⅲ. Iconoclast」ではプテラノドンがモチーフとなった怪物を撃ち落とし、「Ⅴ. Manticore」「Ⅵ. Battlefield」ではマンティコアというこれまたライオンの姿にサソリの尾を持った伝説の生物との戦いも描いています。またEL&Pはその後自ら立ち上げたレコードレーベルの名前を「マンティコア・レコード」としています。

manticore.jpg

この曲が後の音楽界に与えた影響は大きいですが、一方でさまざまなカヴァーやトリビュートがされています。有名どころだとSimon PhilipsMarc Bonillaらによってカヴァーされた「Encores, Legends & Paradox」、Dream TheaterのキーボディストJordan Rudessのソロアルバム「The Road Home」に収録されたバージョンなど。

日本では2003年にピアニスト黒田亜樹さんによって「タルカス&展覧会の絵」がリリース。2010年に作曲家・吉松隆さんがアレンジし藤岡幸夫さん指揮の下、東京フィルハーモニー交響楽団がカヴァーした「タルカス〜クラシック meets ロック」も有名。


タルカス~クラシック meets ロック

Tarkus以外にも名曲が!


どうしても「Tarkus」にばかりフォーカスが当たってしまうのですが、B面にはプログレッシブな小曲が並んでいます。

#3「Bitches Crystal」ではよりコンパクトにEL&Pの音楽を体現したようなピアノとドラムのヴァースにボーカルが乗るスタイルロックサウンド、#5「Infinite Space (Conclusion)」ではピアノをリードに添えジャジーな展開を繰り広げています。

#6「A Time and a Place」はとてもキーボードだけとは思えないロックとして確立しておりこれはギタリスト要らないなと思ってしまうのも、キースと共に演奏できるギタリストはJimi Hendrixくらいと例えられるのも納得です。

ラストナンバー#7「Are You Ready Eddy?」はエンジニアのエディを弄って言葉遊びも加えたブギウギな王道のロックンロール。歌詞はアルバム全編を通してグレッグが担当しています。

関口竜太

東京都出身。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロギタリスト山口和也氏に師事。ロックやメタルに加え、ブルース、ファンク、ジャズなど幅広い演奏や音楽理論を学ぶ。 プログレッシブロック/メタルの大ファン。自身が企画するプログレッシブ・ロックプロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。

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2件のフィードバック

  1. dalichoko より:

    画期的でしたよねー(=^ェ^=)

    • 関口竜太 より:

      楽器のチョイスから曲のプログレッションまで、常人には思いつかないものばかりですよね!

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