Deep Purple「Deep Purple In Rock」そのオルガンを越えていけ、ハードロックとクラシックの明確なる境界線!

おはようございます、ギタリストの関口です。

先日高速道路のBGMにDeep Purpleを流していたらこれがまぁハマるハマる!というわけで本日はそんなクラシックとハードロックの橋渡し、Deep Purpleのアルバムをご紹介していきます。

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Deep Purple In Rock / Deep Purple


Deep Purple In Rock (25th Anniversary Edition)

Deep Purple(ディープ・パープル)は、イギリスのハードロックバンド。

アルバムトータルセールスは全世界で1億枚を突破し2016年にはロックの殿堂入りも果たした世界的ロックバンドです。

一度は流れかけたバンドの結成


1976年に一度解散をするも1984年に再結成、現在でも活動が続くDeep Purple。改めて話すのが野暮なくらいの有名バンドではありますが、何はともあれ基本情報から本作に至までの来歴を辿っていきましょう。

イギリスのロックバンドThe Searchersでドラム/ボーカルを担当していたChris Curtisによって企画されたRoundaboutというバンドが前身となります。

このときすでにJohn LordRichie Blackmoreといった主要メンバーが集まっていましたが、二人のマネージャーが熱心に探すもドラムを除き残りのメンバー探しが難航していました。そうこうしているうちに発起人であるクリスが失踪。Roundaboutは企画倒れに終わります

数ヶ月後、マネージャー二人とジョン、リッチーが再び集まりそこへベーシストNick Simperが合流。オーディションによりRod Evans、さらにそのオーディション会場にいたドラマーIan Paiceを引き入れ第一期Deep Purpleが始動します。

オルガンをフィーチャーしたクラシカルな第一期


代表曲「Smoke On The Water」「Highway Star」「Burn」のように、Deep Purpleの音楽性はまさに世界がイメージする骨太のハードロックですが、デビュー当時はキーボディストであるジョンの意向が強く、オルガンによる演奏などクラシカルかつなアプローチが目立つバンドでした。

1968年というまさにこれからKing CrimsonやらEmerson, Lake & Palmerやらが登場する時代の先端、バンドは5月にアルバム「Hush」でデビューを飾ります。

その中に収録された「Hush」がシングルカットされ、これがJoe Southのカバー曲であったのも含めビルボード第4位の好成績を残す順調なスタートを切っていきます。

しかしながら、よりクラシカルなアプローチとサイケデリック・ロックへ傾倒しだした3rdアルバム「Deep Purple Ⅲ」のリリース直後、アメリカの発売元であったレコード会社が倒産し一時はアメリカへの流通手段を失います。そこへ契約したのがワーナー・ブラザース・レコード。結果、よりメジャーなレーベルへの移籍を果たしたことになります。

ハードロックへ舵が向く第二期


1969年、ボーカルにIan Gillanが加入したこの年、世間ではLed Zeppelinが流行。ギタリストのリッチーはバンドの主導権を握っていたジョンにハードロック路線を提案しますが、ジョンはクラシカル路線を譲ろうとはしませんでした。

そしてジョンが作曲したクラシックコンチェルトを元にロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とのライブを収録したアルバム「Concerto for Group and Orchestra」をリリース。

今思えば完全にジョンの嗜好へ突っ走っていたと考えられますが「一度ハードロック路線のアルバムを作ってリスナーの反応を見たい」という一歩引いたリッチーの提案をジョンが呑みます。

ちなみに、決してこのクラシック路線がイギリス国内のロックファンの不評だったということはなく、実際バンドの方向性が確立されセールスを伸ばしてきていたからこそジョンも譲らなかったという経緯はあります。

こうして1970年にリリースされたのが本作「Deep Purple In Rock」。タイトルから、クラシックとの融合路線であったDeep Purpleというバンドが本格的なロックアルバムを作りましたよというニュアンス、今なら感じ取れます。

アルバムはイギリスで4位を記録し、アルバム未収録ながらプロモーション用に製作された「Black Night」がシングルとしてイギリスや日本でヒット。アメリカでのヒットはもう少し先の話ですが、これを機にバンドは一気にハードロック路線へ。ジョンはバンドでの作曲の主導権をリッチーに譲りました。

アルバム参加メンバー


  • Jon Lord – Organ, Keyboard
  • Ritchie Blackmore – Guitar
  • Ian Paice – Drums
  • Roger Glover – Bass
  • Ian Gillan – Vocal

楽曲紹介


  1. Speed King
  2. Bloodsucker
  3. Child In Time
  4. Flight or the Rat
  5. Into the Fire
  6. Living Wreck
  7. Hard Lovin’ Man

溜め込んでいたリッチーの才能が遺憾無く発揮され、まさに爆発しそうな勢いと共にファンにも人気の名曲が多数生まれた本作。

Deep Purpleに初めて触れた学生時代、ロックなのにずいぶん曲や間奏が長いバンドだなぁという印象を持っていましたが元がクラシック路線であったこと、この裏ではプログレッシブな音楽が流行りだし複雑な演奏が受け入れられていたことなどを考えると納得に結びつきます。

ですので、Deep Purpleによる本格ロックアルバムもまだクラシカルな要素を存分に残していると言ってもいいターニングポイントとしてもこのアルバムは優れています。

#1「Speed King」の冒頭からかき鳴らす轟音のギターがこれまでのクラシック・パープルを否定するかのようです。イントロでは静かなオルガンも奏でられますがすぐさまズンズンといったロックの基礎とも言えるリフへ切り替わります。曲自体はJimi Hendrixの「Fire」がモチーフだとか。

続く#2「Bloodsucker」もギランのシャウトが突き抜けるヘヴィなハードロック。#1でソロを弾いていたオルガンはバッキングに徹しギターと共に音の厚みへ貢献しています。

初期のDeep Purpleの中でも取り分けプログレッシブな楽曲が#3「Child In Time」。10分を超える演奏時間もさながらイントロのキーボードはEL&Pのようです。先ほどとは打って変わって序盤は抑えめに歌うボーカルも男臭い切なさがあってすんばらしい。

曲は徐々に加速をしていき中盤にはタイトな3連のブレイクへ。水戸黄門のテーマで有名な「ああ 人生に涙あり」にも通ずるこのブレイクからシャッフルのギターソロパートへ。オルガンとのユニゾンも含めこのソロは2分半にも及びます。

シャッフルのご機嫌なロックナンバー#4「Flight of the Rat」ではキーボードソロでペンタフレーズを弾くなど鍵盤のパートでもロックへのアプローチを見せていました。ギターはワウペダルによるパーカッシブなブラッシングがたまらなく気持ちいい一曲。

着想の元にもなったLed Zeppelin風のリフが特徴的な#5「Into the Fire」。若干ダーティなオーバードライブがこれまた時代らしいいい味を出しています。メロディラインはどこかThe Beatlesっぽさも見受けられるドUKな楽曲。

パワフルでシンプルなリフを持ち味とした印象の強いリッチーのギターですが、#6「Living Wreck」ではキレのいいブラッシングなども聴くことができてこのアルバムがトータルとして見たロックアルバムの総集編であることを裏付けています。

ラストとなる#7「Hard Lovin’ Man」。今では当たり前の、荒野を駆けるような刻みもこのときすでに確立。ギランのボーカルは最後までベストパフォーマンスですね。あまり触れてきませんでしたがペイスのドラムやロジャーのベースもこの曲で存在感を発揮しています。

最後に


現在でもギラン、ロジャー、ペイスなどオリジナルメンバーが残りながら活動しているDeep Purple。

特に現職のギタリストSteve MorseはKansas、Dixie Dregs、Flying Colorsといったプログレッシブ・ロックバンドでも活躍しており、時代背景からプログレにも少なからず根付いているバンドの後継者として厚く支持されています。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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