PFM「The World Become The World」: プログレ全盛期、イタリアのバンドが世界で勝負したら大いに通用してしまった件
by 関口竜太 · 2019-09-22
おはようございますギタリストの関口です。
昨日は以前から親しくさせていただいている同人プログレの伝承者、霜月便りさん主催の同人プログレオフに参加させていただきました!
初参加のため名前は存じ上げていても初対面の方がほとんどの中、見ず知らずの僕をありがたいことに暖かく受け入れていただきました笑
生憎M3の準備がまだまだ山積みだったため一次会にお邪魔しただけに留まってしまいましたが、真面目な話からふざけた話まで意見交換できて有意義な会でした!
同人という狭いカテゴリーの中のさらに狭いジャンルですから、こういったコミュニティは絶対必要だし、製作に関してはこういう交流を経て閉鎖的なDTM業界の風通しが少しでもよくなればと思いますね。
その会でよく話題に上がっていたのがイタリアンプログレでしたので今日はこちらをご紹介していきます!
The World Become The World / Premiata Forneria Marconi
Premiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)は、イタリアのプログレッシブ・ロックバンド。母国イタリアではフルネームで呼ばれますが世界的な略称としてP.F.MやPFMと表記されることが多いです。
本項においてもPFMと記載させていただきます。
幻から浮かび上がるプログレの世界
PFMの起源は1965年、前身となるI Quelli(クエッリ)というロックバンドから始まります。バンドは1969年「Quelli」という唯一のスタジオアルバムを残してしています。
このときバンドに在籍していたのが現在唯一のオリジナルメンバー、ボーカル/ドラムのFranz Di Cioccio(フランツ・ディ・チョッチョ)。彼を含む当時のバンドがイタリアでディテールの強いギタリスト兼音楽プロデューサーとして著名なLucio Battisti(ルーチョ・バッティスティ、1943-1998)の元でレコーディングに参加した際、バンドの刷新を提案されます。
元々一部のメンバーとの確執があったためこの提案を許諾、1970年新たにPremiata Forneria Marconiを結成します。
I Quelliから引き継がれる形でPFMのオリジナルメンバーとなったのはフランツ他、ギタリストFranco Mussida(フランコ・ムッシーダ)、キーボディストFlavio Premoli(フラヴィオ・プレーモリ)、ベーシストGiorgio Piazza(ジョルジョ・ピアッツァ)。そこへフルート及びヴァイオリン奏者であるMauro Pagani(マウロ・パガーニ)が加入し初代PFMがスタートしました。
アルバムデビュー自体は1972年の「Storia di un minuto(邦題:幻想物語)」でしたが、それ以前よりDeep Purpleのイタリア公演などにおいてオープニングアクトを務めていたためイタリア国内ではそれなりに認知がされていました。
国内で4位を記録した「幻想物語」や続く2ndアルバム「Per un amico(邦題:友よ)」と前後して、イギリスの五大プログレバンドEmerson, Lake & Palmerのオープニングアクトを務めたことでEL&PのベースボーカルGreg Lake(グレッグ・レイク)の目に止まり、1973年にはより世界を意識したアルバム「Photos of Ghosts(邦題:幻の映像)」をリリース。本国イタリア語ではなく英語を主体とした詞やタイトルのアルバムは、これが彼らにとって初となりました。
同時に1973年は彼らがイギリスにて初のワールド公演を実現し、さらに同国のロックフェスにも出演、マンティコアレコードとも契約しPFMの人気は一気に高まった年でもあります。一方で、この国際デビューをきっかけに9月にはI Quelliからベースを担当していたピアッツァが脱退、新たにPatrick Djivas(パトリック・ジヴァス)が加入します。
そして1974年リリースされたのが本作「The World Became the World 」。本国イタリア盤はバンドの刷新を勧めたルーチョが所属していたNumero Unoからのリリース、マンティコア・レコードからはタイトルや詞を英語にした国際盤がそれぞれリリースされており、本日ご紹介するのは後者となります。
アルバム参加メンバー
- Franz Di Cioccio(フランツ・ディ・チョッチョ) – Vocal, Drums
- Franco Mussida(フランコ・ムッシーダ) – Guitar, Vocal
- Flavio Premoli(フラヴィオ・プレーモリ) – Keyboard, Vocal
- Mauro Pagani(マウロ・パガーニ) – Flute, Violin
- Patrick Djivas(パトリック・ジヴァス) – Bass
楽曲紹介
- The Mountain (L’isola Di Niente)
- Just Look Away (Dolcissima Maria)
- The World Become The World
- Four Holes In The Ground (La Luna Nuova)
- Is My Face On Straight? (同タイトル)
- Have Your Cake And Beat It (Via Lumiere)
- イタリア盤タイトルは「L’isola Di Niente」
- 楽曲の括弧はイタリア名であり同アルバムにおいて英語盤と収録曲が対応したもの
イタリア盤では収録曲が5曲となっている他、収録順も異なります。国際盤のタイトルにもなっている#3「The World Become The World」は専用に書き下ろされた楽曲となります。
またイタリア盤の歌詞はマウロによるものですが、国際盤(英詞)はEL&PやKing Crimsonなどで数々の名曲を書き下ろした名作家Peter Sinfield(ピーター・シンフィールド)によるものです。
そんなピーターとの良質なビジネススタイルの影響なのか、PFMの音楽性はまさにKing CrimsonやEL&Pにも匹敵するもので10分を超えるリードナンバー#1「The Mountain」ではボーカルにグレッグっぽさを感じます。
またイタリアのロマンティズムらしいシンセストリングスやフルート、アコギのアルペジオが壮大かつ優雅な空気を生み出しており、プログレ全盛期に本場イギリスにも全く引けを取らないテクニカルなアプローチで存在感を訴えかけてきます。
#2「Just Look Away」はエレピとボーカルが印象的な一曲。若干のイナタさを感じつつ後半で見せるアンサンブルとメロディが沁みる静寂なバラードです。
国際盤専用曲#3「The World Become The World」はGenesis系のシアトリズムも感じる壮大なシンフォニック曲。ムーグシンセによるリードなどテーマメロは秀逸ですが、ワウペダルを使った裏メロのギターや手数の多いドラムなど聴くほど味のある一曲。
パーカッションな導入から始まる#4「Four Holes In The Ground」はシンセによるイントロから続くメロディ、アンサンブルが実にお国柄の現れたヨーロッパテイスト。2:25より流れる大きな一つのテーマはEL&P的であり、後のKansasによる「Magnum Opus」にも通ずるドラマティックなナンバー。後半のジャズっぽいアレグロな演奏で最後まで楽しめます。
ピアノとギターとのブレイクが耳をかっさらう#5「Is My Face On Straight?」。二転三転する展開はともかく、軽快なカッティングとフルートによるアンサンブルはUKプログレバンドにもなかなか見られないPFMの特徴ですね。
ラストとなる#6「Have Your Cake And Beat It」は加入したてのパトリックによるベース独奏にピアノが絡んでいく導入のインスト曲。邦題はイタリア版が「ルミエール通り」、英語版は「望むものすべては得られない」。
前曲と同じくギターのカッティング作るキレのいい縦のリズムはさながら「Tarkus」、途中から入るブラス系シンセリードが初期King Crimsonぽくてこれまたくすぐられます。中盤はジャズがベースとなったキーボードソロ、フルートソロもありPFMのテクニカルな一面を心ゆくまで堪能できる締めとなっています。
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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こんにちは、霜月便りです。懇親会ご参加ありがとうございました。
正直時間足りず、もっと色々お話ししたかった…。またよろしくお願いいたします。
PFMだと、もう少し後のチョコレートキングス、ライブ盤のクックも
おススメですよ。それでは~。