Dream Theater「Train Of Thought」: 100%エクストリームを打ち出したバンド屈指のメタルアルバム!本当の聴き方を知っていますか?

おはようございます、ギタリストの関口です。

本日はメタリックにDream Theater!行ってみましょう!

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Train Of Thought / Dream Theater


トレイン・オブ・ソート

Dream Theaterは、アメリカのプログレッシブ・メタルバンド。

DT史上最もアグレッシブなアルバムへ


1999年にキーボディストJordan Rudessが加入して、リリースされた79分に及ぶ大作コンセプトアルバム「Metropolis Pt.2: Scenes From A Memory」

このアルバムのヒットによって長らくレコード会社の意向に揺さぶられその音楽性にも若干の摩擦が生じていたDream Theaterというバンドの方向性を決定づけることとなりました。

バラエティ豊かな楽曲とそれを彩るボーカル、ギターとキーボードによる多彩な演奏や高速ユニゾンフレーズの数々、安定感のあるベースと手数多めのドラム。綺麗な五角形となったバンドは雪だるまのごとく周りを巻き込みながら転がり勢いづいていきました。

2001年、6thアルバム「Six Degrees Of Inner Turbulence」がリリース。二枚組のこのアルバムは、Disc1は7弦ギターやドロップチューニングなど3rdアルバム「Awake」も顔負けのヘヴィスタイルを提示。中でもこのアルバムからスタートした「12 Step Suite」の初手である「The Glass Prison」は、前作のラスト「Finally Free」から続くような砂嵐からスタートし、アスリートのようなテクニカルプログレメタルの最高峰として大人気の楽曲となります。

Disc2には42分にも及ぶ超大作の組曲「Six Degrees Of Inner Turbulence」を収録。オーケストレーションで描かれた壮大な組曲を含むアルバムは、全6曲ながらCD一枚に収まらない大ボリュームで完全にジャンルの新時代を確立したと言っても過言ではありませんでした。

そして2003年の11月にリリースされた本作「Train Of Thought」

前作「SDOIT」のツアー中、ヘヴィな楽曲を演奏した際の観客の反応に触発され、ニューアルバムはDream Theater史上最もアグレッシブでパワフルで100%エクストリームな一枚にすると方向性が確定。

アメリカの写真家Jerry Uelsmann(ジェリー・ユルズマン)によるホラーテイスト溢れるジャケットアートもこの音楽性とマッチし、見た人に強烈に印象付ける一枚となりました。

ルール


当時のDream Theaterのアルバムにおいていくつかのルール(決まりごと)が実装されており本作もそれに従っています。

  • アルバムの最初の音は前作の最後の音から続いている。
    5thから8thまで続くジンクス。本作においては前作「Six Degrees Of Inner Turbulence」の最後のストリングス音がフェードインする形で始まっています。またラストの音は次なるアルバム「Octavarium」へ続いていきます。
  • アルバムのナンバリングと曲数が一致している。
    これは6thから8thまで続いていて、7thアルバムである本作は全7曲を収録。
  • 「12 Step Suite」の楽曲を一つ収録。
    「アルコール依存症を克服する12のステップ」として提唱された全体像1時間に及ぶ壮大な組曲で6thから10thまで継続し現在は完結済み。本作では「This Dying Soul」においてパート4とパート5が公開されています。

以上のギミックを含んだ上でDream Theaterとしてのクラシックメタルアルバム「Train Of Thought」の始まり始まり。

参加メンバー


  • John Petrucci – Guitar
  • Mike Portnoy – Drums, Chorus
  • James LaBrie – Vocal
  • John Myung – Bass
  • Jordan Rudess – Keyboard

他参加ミュージシャン

  • Eugene Friesen – Cello (#5「Vacant」)

楽曲紹介


  1. As I Am
  2. This Dying Soul
    Ⅳ. Reflections of Reality (Revisited)
    Ⅴ. Release
  3. Endless Sacrifice
  4. Honor Thy Father
  5. Vacant
  6. Stream Of Consciousness
  7. In The Name Of God

先述したように全7曲という収録曲数で、当初7,8分のサイズを並べる予定だったものが結果7曲中5曲が10分を超える大作志向のアルバムとなりました。

#1「As I Am」は直訳すると「ありのままの私で」といった意味で要するにDream Theater風のアナ雪です。それは冗談として、ストリングスリバースによる導入からベースJohn Myungのハーモニクスがすでに掴みとしてバッチリ。適当に弾いてんじゃないかと思われそうなJohn Petrucciのフルピッキングソロも相変わらず手数の多いMike Portnoyも健在で、このアルバムのイメージをたった一曲で位置付けてしまうパワーある楽曲。

なお歌詞はUSプログレメタルのベテランQueensrÿcheとのツアーに対する揶揄で当時を振り返り「うんざりするようなことの連続だった」と歌われている箇所もあります。

アルバム全体はヘヴィでアグレッシブなものですが、テンポとしては比較的スローなものが並ぶ中で、#2「This Dying Soul」冒頭から飛ばしたメタルドライブナンバーとなっています。

僕はギタリストでありペトルーシのシグネチュアモデルJPの7弦ギターも所有しているのですが、残念ながらこの曲を弾けるほどの技量はなく、この曲を弾ける人の話では「ほとんどアスリートで序盤から後半に行くに連れ段々辛くなる造り」だとか。単純に11分半という内容が集中力を切らすのかもしれませんが、極め付けはラスト1分で駆け上がるキーボードとの高速ユニゾン。まだ2曲目なのに勢い負けしそうなほど全力投球です。

#3「Endless Sacrifice」はMicheal Jacksonの「Give In to Me」を思わせるアコギのアルペジオと、ヘヴィリフを伴ったサビ、中盤では変拍子のインターバル、キーボードとギターの掛け合いソロ、また高速ユニゾン…といった具合にお腹いっぱいの詰め込み具合。歌詞はペトルーシによるもので、ツアーなどで家族に会えない寂しさや空虚感を歌ったもの。個人的にも大好きな一曲です!

ちなみに、これ意外と知らない人多いみたいなのですが、ハーモニクスを含んだ印象的なメインリフにはアコギが重なっています(独特のアタック音が特徴)。一旦この事実に気付くと以降それしか聴こえなくなってくるので気になる方は是非上質なモニターやヘッドホンで聴いてみてください。

幼い頃両親が離婚し再婚した母親の継父より酷い仕打ちを受けたと語るポートノイが、その「彼」に向けたヘイトソング#4「Honor Thy Father」。怒り狂ったようなドラムフィルによる導入とAwake時代を彷彿とさせるヘヴィなリフの応酬、ラブリエのボーカルもそれに呼応するかのように叫び十分です。サビで取り入れられている裏メロはRushの「Tom Sawyer」からの影響でしょうか。

2コーラス目サビの歌詞「True colors show」の「colors show」が「観覧車」に聞こえるというファンにはお馴染みの余談。

#5「Vacant」は、長尺が続く本作で唯一3分という小曲でありピアノと生のチェロ、そこにラブリエのボーカルが乗るとても美しいバラード。チェロを弾くのはアメリカのチェリストで4つのグラミー賞を獲得したEugene Friesen(ユージーン・フリーゼン)。彼はその後Jordan Rudessのソロアルバム「Feeding the Wheel」においても参加しています。

#6「Stream Of Consciousness」Dream Theater史上最も長尺なインスト曲となり#5のテーマを少し受け継いでいるのもポイント。1st収録の「Ytse Jam」や5th収録の「The Dance Of Eternity」のような展開の激しいテクニカルプログレとまでは聴こえないものの、一貫したテーマを七変化させ紡いでいく様はお見事。

本作ラスト14分に及ぶ#7「In The Name Of God」は過激派宗教団体Branch Davidian(ブランチ・ダビディアン)について書かれたもの。2音下げチューニングされたヘヴィなリフと、12/8に収束していく壮大なサビとのコントラストが美しいドラマティックなメタルバラードとなっています。

7:19〜のボーカルはクリーンの裏にシャウトのラインも被せており、淡々と歌われる一方で非常に攻撃的な面をかいま見せる一コマ。そこからのインストパートはアルバムをここまで進めた人には言わずもがなですが、高速レガートフレーズでのユニゾン、少々ファンキーさも見せるリズム隊にキーボードとギターの掛け合いがあり再び高速ユニゾンという最後までアルバムのイメージを崩さない宣言通りのアグレッシブさです。

壮大なエンディングで12:56〜右チャンネルに聴こえてくるのは南北戦争で歌われたリパブリック賛歌。これがどんなメロディかというとヨドバシカメラの元ネタです。

感銘を受けたのはJames LaBrieのボーカルだった


「Train Of Thought」というのは「一連の思考の流れ」という意味で、本作のテーマが一つの目的に向かって一貫していることを示唆しています。

実は僕がDream Theaterを初めて聴いたのは2ndアルバム「Images And Words」と本作「Train Of Thought」でした。

1曲10分が大量に並べられた本作を聴いてみたいと学校で友達に話すと「絶対疲れるからやめとけよ」と待ったがかけられたのですが学校帰りのその足でレンタル店に寄って、王道らしい2ndと当時リリースされ間もない本作を借り、無事Dream Theater童貞(DTDT)を卒業したのでした。

あのときの衝撃は今でも忘れないというか、僕が感銘を受けたのは超絶技巧でもテクニカルな変拍子でもなくJames LaBrieのボーカルだったんですよね。こんなに透き通っていて表現力豊かな男性ボーカルがヘヴィメタル界にいたんだ!とあっという間にその音楽にのめり込んでしまいました。

アルバムごとに色味の違うDream Theaterにとって本作は行けるところまで行ってみた振り切り具合が非常に痛快で、2000年以降のギターソロが軽視され出した時代に突き刺した彼らなりの決意表明でもあり思考の流れでもあったんじゃないかなと思います。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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