Mystery「Delusion Rain」: 哀愁溢れるメロをプッシュしたハードなカナディアン・プログレ!メンバー刷新後の6thアルバム。

おはようございます、ギタリストの関口です。

せっかくの3連休なのに朝から雨なので本日は雨にちなんだプログレをご紹介!

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Delusion Rain / Mystery


Delusion Rain

Mysteryはカナダのプログレッシブ・ロックバンド。

来歴


33年という長い歴史を持つMysteryが結成されたのは1986年。当時カナダのスタジオイリュージョンでサウンドエンジニアをしていたMichel St-Père(ミシェル・サンペール)主導の元、キーボディストSylvain Descôteaux(シルヴァン・デシャルネ)と共に結成されました。

当初はCenturyという名前でスタートしましたがフランスにすでに同名のバンドがいたため早々にMysteryへ改名されます。

1992年にはバンド名を冠した1stEP「Mystery」がリリース。シルヴァンは正規メンバーとしての活動こそないものの本作に至までゲスト的に時々参加をしています。

メンバー変遷の激しいMysteryにおいて主要なメンバーにはボーカルのBenoît Davidがいましたが、2010年ごろYesのJohn Andersonが体調不良により休暇を取るとその代役に大抜擢!Yes直々にオファーがかかったと言います。そしてYes、2011年のアルバム「Fly from Here」とそれに伴うツアーに参加するなど大躍進。

Mysteryでは2014年のライブルバム「Tales from the Netherlands」を最後に離れており以降ボーカルはJean Pageauが引き継いでいます。

本日ご紹介する「Delusion Rain」は2015年リリースの6thアルバム、メンバーは前作「The World is a Game」よりミシェル以外を刷新新たなメンバー編成とハードな側面を持ち合わせるネオプログレッシブ・ロックとして来日公演も行うなど人気のバンドです。

アルバム参加メンバー


  • Jean Pageau – Vocal, Keyboard, Flute
  • Michel St-Père – Guitar, Keyboard
  • Benoît Dupuis – Keyboard
  • François Fournier – Bass, Moog Taurus, Keyboard
  • Sylvain Moineau – Guitar
  • Jean-Sébastien Goyette – Drums

その他ミュージシャン

  • Antoine Michaud – Guitar
  • Sylvain Descôteaux – Piano

楽曲紹介


  1. Delusion Rain
  2. If You See Her
  3. The Last Glass of Wine
  4. The Willow Tree
  5. Wall Street King
  6. A Song for You

特徴的なジャケットはHypnosisによるもの。

バンドの個性自体は80年代のネオプログレッシブ・ロックを基調哀愁漂うメロラインとストリングスやシンセサイザーの包み込まれるようなシンフォニック要素が特徴で、綺麗にまとまった上品な楽曲が揃います。

ですが前職のボーカル、デヴィットが加入した2007年ごろに比べるとギターの音色も丸くなりそれまでのハードロック調であるザクザクとした音像から一つ脱したという印象です。比較的荒々しいバンドサウンドを求めるなら「Beneath the Veil of Winter’s Face」辺りがおすすめです!

#1「Delusion Rain」はそんなシンセストリングにたっぷりディレイを効かせた伸びやかなリードギターで深いところを突いてくるイントロ。ボーカルが入る2:40ごろは12弦ギターによる煌びやかなサウンドとコード感溢れるメロディアスなボーカルラインです。初参加のジーンのボーカルも聴きやすい声質です。

#2「If You See Her」はスウェーデンのMoon Safariも感じさせる穏やかなバラード。若干の田舎臭さがありつつポップで明るい雰囲気の一曲。アコースティック色が一段と強くなった本作を象徴しています。

ピアノとヴォリューム奏法のギターによる悲しいメロディを重めのバンドアンサンブルで彩る#3「The Last Glass of Wine」。3分すぎから訪れるシンフォニック・メタルのようなコーラスや3:45〜のテクニカルなギターソロなどロック強めなハードナンバーです。

本作一の長尺、19分半にも及ぶ#4「The Willow Tree」は基本これまでのイントロと具合としては変わらないです。しかしながら4:55〜ゆったりとした哀愁のテーマをガラッと変えるプログレッション、Jean-Sébastienによる鮮やかなフィルのドラミングが光ります。ギタリストが数人いることで一つバンド内でソロの掛け合いも成立しており、キメキメの運動会ではないものの素晴らしいアンサンブルによるインストパートを堪能できます。

#5「Wall Street King」はこれまでの流れを汲んだようなヘヴィロックな哀愁サウンド。コーラスのかかったアルペジオやスローなシンフォニックリフなど、プログレッシブ・メタル感も強くDream TheaterやCircus Maximusが好きな人にもお気に召すかと思います。

Yesっぽさもあるオルガンのシーケンスから始まるラスト#6「A Song for You」。バンドもそれに乗っかるキメを提示したり壮大さで言えばNeal Morse風。アルバムを通してどんなにアグレッシブなナンバーでもアコギが常になってるのが素晴らしいですね。中盤は再びキメのアンサンブルで、トルコ民謡のアクサクをルーツに持つテクニカルプログレ御用達の展開。フルートなど古さを感じるアプローチもニクいですね!

最後に


後半に行くほど大胆になっていくので聴き始めに若干の倦怠感を覚えても流すつもりで聴いていれば次第に乗っていけます。そういう意味ではプログレ的な深みが強い良質な出来です。

特に哀愁の光るメロディラインをお求めの人には是非とも一聴して欲しい一枚ですね。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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