Porcupine Tree「Fear Of A Blank Planet」: カリスマソングライターによる現代流ヘヴィサイケデリックの名盤!

おはようございます、ギタリストの関口です。

今日はPorcupine Treeをご紹介していこうと思うんですが、実は当ブログ初登場

King CrimsonやOpeth、Tim BownessなどでSteven Wilsonはよくこのブログに登場のするのでいつ書こうかと気を揉んでいたのですがようやく書けます!

スポンサーリンク

Fear Of A Blank Planet / Porcupine Tree


Fear of a Blank Planet

Porcupine Tree(ポーキュパイン・ツリー)は、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド。

サイケデリックとヘヴィロックによる芸術的サウンドスケープ


1987年、イギリスでポスト・ロックな音楽を展開するシンガーソングライター、Tim BownessSteven WilsonによってNo-Manが結成されます。エレクトロニックかつジャズや現代のアンビエント的要素を加えたプログレッシブ・ロックで、スティーブンの才覚が現れるルーツとなります。

同年、そんなNo-Manからスティーブンのソロ活動としてスタートしたのがPorcupine Tree

初めは彼が古くから影響を受けたPink Floydのようなサイケデリック・ロックやプログレッシブ・ロックを演奏する言わばジョークのような話でした。それこそ「Porcupine Treeという伝説の架空バンドがある」といった設定だったようです。

ところが1989年に「Tarquin’s Seaweed Farm」、1991年に「The Nostalgia Factory」というカセットテープのみのアルバムを立て続けに制作すると徐々にこのバンドの有用性について現実味を帯びてくるようになります。

そして1992年、1000枚限定で1stアルバム「On The Sunday Of Life…」がリリースされます。これが好評で後にリマスタリングされ、今日までに2万枚を売り上げることとなります。

以降、Porcupine Treeの快進撃とSteven Wilsonという人物は平行線で知名度を上げていくこととなりますが1990年代はPink FloydのようなSEを多用し、スティーブンの斬新なサウンドスケープによるアンビエントやフォークタッチな楽曲が発表されていきます。

1993年リリースの「Up the Downstair」ではまだソロ活動の色味が強いものの土着的にバンドの構想が出来上がっており、95年「The Sky Moves Sideways」では本格的にバンドとしての活動に着手。なお長編組曲を二分割させサンドしたようなこのアルバムの構成はPink Floydの「Wish You Were Here」と似た部分があり「Moon」という単語も込みでバンドのイメージを確立する重要な作品となりました。

2000年代に入ると90年代を支えたドラムのChris Maitlandが脱退するものの、バンドはよりヘヴィな側面を打ち出すようになり、内省的な弾き語りとサイケデリックなサウンドとメタルでデジタリックなギターがモルタルのように壁を固めていくスタイルを形成し往年ファンのみならず新規ファンも多く取り込むこととなります。

かのKing Crimson、Robert Frippもこの音楽に魅入られ同バンドや70年代の名盤を現代のサラウンド・リミックスで蘇らすスティーブンのエンジニア/プロデューサーとしての本質に磨きがかかり出すのもこの時期。

スウェーデンのプログレ・デスメタルバンドOpethのMikael Åkerfeldtとタッグを組み2001年にリリースされたアルバム「Blackwater Park」以降、当バンドのプロデューサーとしても重要なファクターになっています。

メンバー


  • Steven Wilson – Guitar, Vocal, Keyboard
  • Richard Barbieri – Keyboard
  • Colin Edwin – Bass
  • Gavin Harrison – Drums (2002年-)

過去のメンバー

  • Chris Maitland – Drums (1993年-2001年)

楽曲紹介


  1. Fear of A Blank Planet
  2. My Ashes
  3. Anesthetize
  4. Sentimental
  5. Way Out of Here
  6. Sleep Together

現在メンバー各自さらなるソロ活動へと分散しバンドは活動休止状態ですが、そういう意味では一種の完成を見た2007年リリースの9thアルバム。

音そのものの構築力に長けたスティーブンですが、各アルバムのテーマも明確に意図されていることが彼の作品の特徴で、本作「Fear Of A Blank Planet」はアメリカのヒップホップグループPublic Enemyが1990年にリリースした同名のタイトルに言及したもの。

過度なスクリーニング(選別を要求される状況)や薬物の乱用により、精神的かつ社会的に酩酊し病んだ若者が抱く精神の「空白」を歌ったメッセージ性の強いテーマとなり、Porcupine Treeが本来打ち出したサイケデリックな音楽性とも見事にマッチする結果となりました。

#1「Fear of A Blank Planet」より轟音なギターサウンドとスティーブンのアンニュイなボーカルがこのバンドならではの緊張感を生み出します。5:03以降のヘヴィなリフも一方では新鮮味がありアタックが強すぎないドラムがバンドサウンドのバランスをうまく保っています。

続く#2「My Ashes」ではフロイドライクな空間系エフェクトのアルペジオとフォークによる弾き語りから穏やかなシンフォニックに展開していく良曲。

18分近い大作に仕上がった#3「Anesthetize」バンドの歴史を見ても屈指の名曲。典型的なプログレッシブの大作ながらデジタルなアプローチも惜しみなくその辺が古くなりすぎないポイントだと思いますね。

序盤はタム回しとサイケデリックなムードに歌も白玉が続くスローな一辺倒ですが、4:56〜徐々に深みにハマっていく展開は2000年以降のバンドを象徴するもので、ひたすらじっと耐えているといきなり変拍子とヘヴィリフで胸ぐらを掴まれた気分になります。少しメロディックが影を潜めた本作において7:48〜のサビではいきなりポップさが顔を出し思わずハッとさせられます。

 

あと書きたいのはラスト#6「Sleep Together」。アルバム全体を通してダウナーな雰囲気を感じさせる本作ですがそれを締めるシンセチックでデジタルノイジーな一曲。サイケデリック・ロックの持つ本来のトリップさとか押しては引く音の波にひたすら揺られたい、そんな衝動に駆られます。

最後に


スティーブンについての記事の方が出が早く、またなかなか形容しがたい天才的な音楽ゆえ着手することができませんでしたが、これからOpethの来日に併せ少しずつ解放していきたいと思います。

言葉で表現するのが難しいだけに違うところは違うと、その際はご指摘いただけると幸いです!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

おすすめ

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。