Circus Maximus「Havoc」: これまでと色味の違う2016年問題作。北欧より刻むヘヴィなテクニカル・オルタナ・プログレ!

おはようございます、ギタリストの関口です。

2019年10月に待望の来日公演が決まり、期待高まるCircus Maximus。いよいよ来月です!

今回のライブでは1stアルバム〜3rdアルバムを中心とした選曲がされるとのことで、それに際し絶版となっていた過去作3枚の再販も行われています。

この「1st〜3rdまで」という言い方は少し引っかかるものがあり、それは現状最新作である4thアルバムの「Havoc」がそれ以外とは別物として扱われているのが、関係者やファンの間でも暗黙の了解な点となっていることです。

今日はそんな触れられざる最新アルバムを紐解いていこうと思います!

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Havoc / Circus Maximus


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Circus Maximus(サーカス・マキシマス)はノルウェーのプログレッシブ・メタルバンド。

これまでのキャリアと問題作


メンバー間やレコード会社など、バンド活動にありがちな目立ったトラブルがないことがCircus Maximusの何より安心できるところで、故にリリーススパンの長い活動でもファンが付いてこられるのだと個人的には評価したいです。

そんなCircus Maximusが結成されたのは2000年のノルウェー。

その卓越した演奏力とプログレッションで米プログレメタルの雄、Dream Theaterのフォロワーとも言われ注目を浴びながら2005年にデビューを飾ります。リリースされたアルバム「The 1st Chapter」はエッジの効いた攻撃的なリフと北欧ならではのメロディアスさで一気に人気を勝ち取ります。

続く2ndアルバムは2007年リリースの「Isolate」。1stアルバムの延長線のような作風でよりキーボードが推し出され、独特の緊張感を持つ「Abyss」やニューウェーブ風のキャッチーな仕上がりになった「Arrival of Love」などライブでも盛り上がる人気曲を多数収録。

そして3枚目となる2012年作「Nine」ではそれまでのキーボード色を薄め、よりヘヴィな方向へ、先人が築いたプログレッシブ・ロックへの敬意も感じられるメタルアルバムへと成長。一方で「Game of Life」など”らしい”側面も見られる一枚となりました。

そしてそんな「Nine」から実に4年の歳月を経て2016年にリリースされた本作「Havoc」へと続いていきます。

メンバー


  • Michael Eriksen – Vocal
  • Mats Haugen – Guitar
  • Truls Haugen – Drums, Screaming
  • Glen Cato Møllen – Bass
  • Lasse Finbråten – Keyboard

楽曲紹介


  1. The Wight
  2. Highest Bitter
  3. Havoc
  4. Pages
  5. Flames
  6. Loved Ones
  7. After the Fire
  8. Remember
  9. Chivalry

アルバムは全9曲54分。前作まで見られた10分超えの長尺ナンバーは身を潜め、最長でも8分半ほどと王道プログレメタルと呼ぶにはややコンパクトな見た目となりました。

プロダクション面でもサウンドが時代のニーズに合わせマイルドになります。音はヘヴィですが1stの頃のようなザクザクと尖ったメタルとはまた違った印象を受けます。

#1「The Weight」は実に彼ららしいミディアムテンポのメタルナンバー。わかりやすい4つ刻みのリフに上物シンセ・ピアノという構図はファンがイメージするバンドのシンボル。エリクソンのボーカルも豊かで本作も安心して身を委ねられます。

続く#2「Highest Bitter」#3「Havoc」#4「Pages」とこれまでのCircus Maximusとは色味の違うオルタナ的ヘヴィロックのアプローチが見られます。グレンのベースをフィーチャーしたようなボトム感溢れる楽曲たちで、PanteraやMarilyn Manson風とも取れる90年代ヘヴィの様相。

楽曲自体はとても良質でこれに文句をつけるとはなんとワガママなリスナーなのだと思ってしまうのですが、そもそも北欧のメタルというのはもっとキーボードをフィーチャーしたキラキラ成分の強いメタルを想像するためそこがファンとの間に生まれた若干の溝かもしれません。

#5「Flames」ではふわっと香るシンセと線の細かいギターバッキングが特徴の表現力溢れる佳曲。この辺は前作「Nine」までの流れを彷彿とさせますね。

#6「Loved Ones」はAwake期のDream Theaterをモダンにしたような風合いで膨よかなシンセサイザーと美しいメロディで彼らの本領が発揮された素晴らしい仕上がり。変拍子ユニゾンあり、バッキングギターを採用しないオーガニックなソロパートあり、とても好印象です。

#7「After the Fire」はVangelisなどニューエイジ・シーンのキーボディストが好きそうなパルスから始まる8分半の大作曲。アルバム全体に言えることですがこれまでと圧倒的に違うのはいずれもダークな雰囲気を伴っている点。この曲に関しても例外ではなくトンネル続きの山道を越えていくかのような若干の閉塞感がありますね。

しかしながら4:50以降のテクニカルプログレらしいインストパートは本曲におけるカタルシスでここで鬱憤したものを解き放てるような造りにはなっています。

ラスト2曲、#8「Remember」#9「Chivalry」はマイナーな曲が続いた本作で暗闇を抜けた先に見える開けた視界のようで、演奏はハードながら壮大で穏やかに締めくくられます。

最後に


これを駄作と呼ぶには早計かつ見当違いだと個人的には思い、リスナーと見えている方向性が少しずれただけの仕上がり的にはとてもいいアルバムです。

逆に、1stの印象がバシッとハマってしまった人にとっては先ほども言った閉塞感やダークで重たい雰囲気に耐えられないという意見が出てもおかしくはありませんね。

とは言え、これから聴く人には是非先入観を持たず公平な耳で聴いて欲しいんですよね。「待っていた」人からすれば違ったのかもしれませんが時間をかけ少しずつ馴染んでいけるポテンシャルを持った作品だと思います。

なおこのアルバムを引き下げたツアーアルバム「Havoc in Oslo」ではもちろん過去の曲も存分に演奏されてベスト盤として聴いてもいいくらいの選曲なのでオススメです。

10月の来日公演も本作を過小評価し省いたというより、本来のCircus Maximusらしい煌びやかな北欧メタルが聴けるライブを行うという認識なのだと思います!

楽しみですね!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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