Procol Harum「Shine On Brightly」: プログレ色を濃くした英クラシックロックの2nd!60年代にも大作組曲は存在していた!
by 関口竜太 · 2019-09-10
おはようございます、ギタリストの関口です。
昨日はすさまじい暑さで比較的涼しい日を過ごして来たので堪えましたね。今日までめちゃ暑だそうですので熱中症にはお気をつけて!
さて、本日もアルバムをご紹介していきます!
Shine On Brightly / Procol Harum
SHINE ON BRIGHTLY (3CD DELUXE REMASTERED & EXPANDED EDITION)
Procol Harum(プロコル・ハルム)はイギリスのロックバンド。1967年にデビューし、ダブルキーボードなど独自の音楽を展開するプログレッシブ・ロックの先駆け的存在となります。1977年に一度解散をするもメンバーの死をきっかけに90年代に再結成、24期として現在でも活動が続いています。
1stアルバムのヒット
元はThe ParamountsというイギリスのR&BバンドでしたがJerry Leiber and Mike Stollerのカヴァー曲以外は鳴かず飛ばず、1966年に解散することとなります。
中心人物Gary Broocker(ゲイリー・ブルッカー)は新たなバンドのスタイルとして当時まだ珍しかった作家との共作という形を取り入れ、またダブルキーボードというスタイルも提示。そうして結成されたProcol Harumの1stシングル「A White Shade Of Pale(青い影)」は400万枚を売り上げる大ヒットとなるのです。
ドラマーをB.J.Wilsonに変更しリリースされた1stアルバムはオリジナルのイギリス盤においてヒットシングルの「青い影」が収録されなかったものの、後にアメリカでリリースされた際には1曲目に当曲を収録、この形が現在CDとしても一般的に流通しています。
今日ご紹介する「Shine On Brightly」は鮮烈にデビューを飾った1stアルバム「Procol Harum」の翌年リリースされた2ndアルバムとなります!
アルバム参加メンバー
- Gary Brooker – Vocal, Piano
- Matthew Fisher – Organ, Vocal
- Robin Trower – Guitar, Vocal
- David Knights – Bass
- B.J.Wilson – Drums
- Keith Reid – Lyrics
1stアルバムから第一次解散まで在籍したドラマーのB.J.Wilsonは一時期Led Zeppelinから声がかかるほどの実力の持ち主でこのバンドに対する功績は大きいと言えます。
楽曲紹介
- Quite Rightly So
- Shine On Brightly
- Skip Softly (My Moonbeams)
- Wish Me Well
- Rambling On
- Magdalene (My Regal Zonophone)
- In Held ‘Twas In I
Ⅰ. Glimpses of Nirvana
Ⅱ. Twas Teatime at the Circle
Ⅲ. In the Autumn of My Madness
Ⅳ. look to Your Soul
Ⅴ. Grande Finale
前作「Procol Harum」よりもプログレッシブ色が濃くなった印象を受ける2ndアルバム。アメリカのビルボードでは24位と好成績を残しますが先行シングルである#1「Quite Rightly So」は「青い影」のようなヒットには至りませんでした。一方で、このシングルがヒットしたイギリスではアルバムがチャートインしなかったという特殊なセールス記録を持っています。
そんなシングル#1「Quite Rightly So」はマシューのチャーチ系オルガンからスッと歌に入るまさに60年代UKロック。しかしながらエレキギター然りタンバリン然り情報量の多さで当時のあらゆる音楽を圧倒していると言えるでしょう。
続くタイトルナンバー#2「Shine On Brightly」はイントロからユニゾンチョーキングを効かせる攻撃的なロック曲。
ジャジーな入りながらパワフルなドラムとギターの裏メロが特徴的な#3「Skip Softly (My Moonbeams)」は中盤グランドピアノによる繊細なメロディと荒々しいギターの対比がそのままKing Crimsonへ繋がっているように感じます。
アビィロードThe Beatlesを彷彿とさせる#4「Wish We Well」、印象的なピアノトリルから前作の流れを汲んだようなピアノロック#5「Rambling On 」、ムーディジャズな雰囲気ながらドラムのマーチロールやオルガンによるバッキングなどProcol Harumさを発揮した#6「Magdalene (My Regal Zonophone)」とアルバムは続いていきます。
大作「In Held ‘Twas In I」
そしてプログレのプの字もなかったこの時代に打ち出した5部構成17分半に及ぶ大作#7「In Held ‘Twas In I」。一見変わった曲のタイトルは「Grande Finale」 を除く各章の歌詞、第一章の中で6番目の詞の節、それぞれから頭の単語を抜き出し並べたもの。
米英欧のスーパーグループTransatlanticの1stアルバムでもカヴァーされ、ディミニッシュによる緊張感の強さとアンサンブルの高さは他の追随を許さない圧倒的楽曲センス。最初のテーマを請け負う楽器がシタールな点やピアノと重厚なコーラスでリフレインするアプローチもこれをプログレと呼ばずどうするかという意見に尽きます。
カヴァー版と違うのは次の章「Twas Teatime at the Circle」。荘厳な雰囲気から一転、ミュージカルのようなパーティポップに早変わりしてしまうのです。カヴァーから入った僕もさすがにこれには度肝を抜かれました。かと思いきや雷か戦闘機かといった轟音から本編に帰還(In the Autumn of My Madness)。そうそう、これなんですよProcol Harumはという胸くすぐられる展開です。
「Look to Your Soul」にて爆進する7拍子のディミニッシュリフは後のヘヴィロックにも通じさらにオルガンで怪しく彩っていきます。霧立つ夜の街を大男が闊歩してくるかのようなダークな展開に思わず息を飲むのですが本来のテーマに戻り優しいピアノとコーラスによる迎える「Grande Finale」はまさに月の光(アルバムの邦題)と言った具合です。
この曲が音楽の先進にもたらした効果は大きいと考えていて2ndアルバムでこの域に達するProcol HarumもといUKロック恐ろしやと思わざるを得ませんね。
そしてライブバージョンの動画を発見!観客も巻き込んだフルオーケストラ仕様の完全版といった感じです。見たいなぁこれは…
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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