Kaipa: Roine Stolt 62歳!歴史あるスウェディッシュ・プログレの草分け的デビュー作。

おはようございます、ギタリストの関口です。

先日9月5日に、スウェーデンのギタリストRoine Stolt氏がめでたく62歳のお誕生日を迎えられたということで今日は彼のデビュー作となった「Kaipa」を紹介していこうと思います。

Kaipa自体このブログで紹介するのは一年ぶり二度目となり、当時の文章力では形容できなかった部分もあるので少し気合いが入ります。

スポンサーリンク

Kaipa / Kaipa


Kaipa

Kaipa(カイパ)はスウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド。

来歴


現在もテクニカルなプログレッシブ・ロックを展開するKaipaは大きく二つの活動時期に分かれます。

一つは本作から始まる結成〜バンドが活動休止になる1980年代初期までの前期Kaipa。もう一つは2000年以降現在まで続く後期Kaipa

元を辿ると1973年にキーボディストHans LundinとベーシストTomas Erikssonが始めたUra Kaipaがきっかけ。そこに当時若干17歳の若手ギタリストRoine Stoltが加わったことでバンド名をKaipaへ縮小し1975年に本作「Kaipa」にてデビューを果たします。

Kaipa全体を通して言えるのがトラッドな英国風プログレにフォークタッチで素朴なメロディ民族感溢れる楽器のチョイスとクラシックからの影響も伺えるシンフォニックロックとなります。よくロイネの出身バンドであることからThe Flower Kingsと比較されますがこちらはキーボードのハンスが主導となったバンドですので根本的に非なるものです。

また前期Kaipaは曲のタイトルや歌詞など、言語がスウェーデン語に設定されているのも特徴の一つです。

アルバム参加メンバー


  • Roine Stolt – Guitar, Vocal
  • Hans Lundin – Vocal, Organ, Piano, Synthesizer, Harpsichord, String Machine, Glockenspiel
  • Tomas Eriksson – Bass, Chorus
  • Ingemar Bergman – Drums, Percussion, Chorus

楽曲紹介


  1. Musiken är ljuset
  2. Saker har två sidor
  3. Ankaret
  4. Skogspromenad
  5. Allting har en början
  6. Se var Morgon gry
  7. Förlorad i Istanbul
  8. Oceaner föder liv
  9. Fran det ena till det andra (Bonus Track)
  10. Karavan (Bonus Track)

というわけでこちらが1975年にリリースされた記念すべき1stアルバム。現在までバンドが続いている点や先日62歳の誕生日を迎えたロイネがなどまだまだ現役なところから比較的新しいプログレと勘違いしてしまいそうですが、がっつりプログレ最盛期〜衰退期にかけての第一次ブームに生まれたアルバムです。

#1「Musiken är ljuset」からオルガンによるクラシカルなイントロで開幕します。ハンスによるこの「クラシカルに始まる」という曲の構成がKaipaの特徴で、進めていくと中身はジャズ・ロックであったりいかにもヨーロッパな風を感じるネオロックではありますが、基本バロック音楽などイメージしやすいクラシックからの影響が強いです。

#3「Ankaret」では当時すでに確立していたメロウなギターソロとFocusやGenesisといった様式のプログレッションが特徴的。特に全体を通してFocusのメロディセンスは受け継がれている様に感じますね。

曲は長いものと短いものとで二極化している印象なのであまり長尺にこだわったりはしていないようですが、3分ほどのインスト#4「Skogspromenad」#5「Allting har en början」のオルガンアンサンブルであったり、オリエンタルな空気漂う#7「Förlorad i Istanbul」であったりとあくまで色とりどりなキーボードが主体となりながら紡いでいくバンドサウンドはまさしくプログレッシブ・ロック!

本編ラストとなる#8「Oceaner föder liv」はイントロから壮大なプログレッションを持つ9分半の大作ナンバー。Genesisからの影響を色濃く感じさせる作品でチェンバロによるキラキラしたシンセ、オルガンからのボーカルは「Watcher of the Skies」を彷彿とさせます。軽快なカッティングや壮大なシンフォテーマで締め括っている点など、作曲者のロイネ色が出ていてこちらもオススメの一曲。

最後に


プログレはよく「クラシックやジャズとロックの融合!」なんて声高に言われたりして、いざ聞いてみると複雑だけどクラシックはどこ?ジャズはどこ?となるケースは少なくありません。

Kaipaはその辺のコントラストをはっきりさせ、さらに個々の楽器が埋もれないよう見事に散りばめているので、この時代にしてここまでくっきり煌びやかに音楽を具現化したセンスはさすがだなと思います。しかも1stで。

スウェディッシュ・プログレのファミリー・ツリーはその後広く伸び渡りますがその根底たるKaipaの音楽はプログレ史における一つのルーツと言えそうです。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

おすすめ

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。