Mr.Children「IT’S A WONDERFUL WORLD」: 暗闇から抜け一つ大人になったピースフルなコンセプト作!

おはようございます、ギタリストの関口です。

昨晩、ようやく歌詞を書き終えてボーカルさんへ渡す最後のデモを急ピッチで作っております。

長尺曲を一人で作ることがこんなにも骨の折れることだったとは想像以上で、次作るとしたらまず人を集めるところから始めようと確信しました。

でも実に壮大な一曲へ仕上がりそうなのでこれをエネルギーにあと1ヶ月頑張ろうと思います!

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IT’S A WONDERFUL WORLD / Mr.Children


It’s a wonderful world

Mr.Childrenは日本のロックバンド。本作は2002年にリリースされた通算10枚目のオリジナルアルバム。

「深海」以来のコンセプトアルバム


Pink Floyd色を全面に押し出した1996年の5thアルバム「深海」ではボーカル桜井和寿さんの音楽に対する失われた純粋な気持ちをシーラカンスに喩え、自身の不倫報道とマスコミへの不信感など、それこそ歌詞で「死ぬ」ことすら匂わせていたくらい病んでいた時期を歌っています。

Mr.Children随一のプログレ作品「深海」に込められた想いと「脱出」。

Mr.Childrenの音楽もその前作「Atomic Heart」あたりからヒットと比例して風刺曲が増え、これは「深海」〜「Discovery」あたりまでがピーク

9thアルバム「Q」のリードトラックである「CENTER OF UNIVERSE」では、2000年問題に揺れる流浪の日本を愚痴りながら最後は「どの人にとっても自分を中心に世界が回ってるから素晴らしい」と皮肉たっぷりに歌い上げるなど、大分「深海」の後遺症を引きずってる感があり、むしろそこがMr.Childrenのダークな部分として現代人から一層の指示を得られたと言って間違いはなさそうです。

そんな中で「深海」の陰鬱で重苦しい雰囲気からようやく脱出できたなと個人的に思える一枚が本作「IT’S A WONDERFUL WORLD」

シングル「優しい歌」の前向きな空気をそのままアルバムにも反映させたような本作は前作の「僕こそが中心です」といった投げやりな空気から「この醜くも美しい世界」という一つ大人として成長し意識を高めたのが伺い知れます。

そして「この醜くも美しい世界」はアルバムの仮タイトルではありましたがドラムの鈴木英哉さんが珍しく口を挟み、「Dear Wonderful World」というタイトルを経由して最終的に「IT’S A WONDERFUL WORLD」となりました。

共同制作者でもあるキーボディスト小林武史さんの色も存分に発揮され、今後しばらくはストリングス全開のサウンドに乗せたラブソングや現代人が暗い毎日に少し前を向けるような楽曲が頻発するようになります。

これまでにない明るさが出る一方で、世界では2001年にアメリカの9.11同時多発テロなど悲惨な事件も起きており、世界中で平和に対する関心が向き始めた時期でもあります。Mr.Childrenにとってもそれは例外ではなく、光量を強めるほど伸びる影が濃くなる様は本作において、またはシングル「君が好き」のカップリング曲「さよなら2001年」などで確認することができます。

メンバー


  • 桜井和寿 – Vocal, Guitar
  • 田原健一 – Guitar
  • 中川敬輔 – Bass
  • 鈴木英哉 – Drums

その他参加ミュージシャン

  • 小林武史 – Keyboards
  • 吉田誠 – Computer Programming
  • 四家卯大 – Cello
  • 沖祥子 – Violin
  • 四家卯大ストリングス – Strings
  • 山本拓夫 – Sax, Flute
  • 松本治 – Trombone
  • 広原正典 – Trombone
  • 西村浩二 – Trumpet
  • 菅坂雅彦 – Trumpet
  • 村田陽一 – Trombone

楽曲紹介


  1. overture
  2. 蘇生
  3. Dear wonderful world
  4. one two three
  5. 渇いたkiss
  6. youthful days
  7. ファスナー
  8. Bird Cage
  9. LOVE はじめました
  10. UFO
  11. Drawing
  12. 君が好き
  13. いつでも微笑みを
  14. 優しい歌
  15. It’s a wonderful world

制作開始時は13曲予定だったものが最終的に15曲となった本作。アルバムが1時間を切ることの多いMr.Childrenにとっては70分近い大作となりました。

アルバムの雰囲気は基本明るいものですが、こと男女の歌についてはドロっとした人間模様が多く描かれています。シングルは「優しい歌」「youthful days」およびカップリングの「Drawing」と「君が好き」。

#1「overture」は本来#2「蘇生」のイントロとして作られましたが8分にも及んでしまうためトラックを分けられます。プログレ心からすると8分の方が俄然燃えてくるのですが結果としてアルバム全体がオープニングとエンディングでサンドされ引き締まった印象があります。

#3「Dear wonderful world」はそんなエンディング#15「It’s a wonderful world」のサビなしバージョン。ここから、この曲と#1が増えた曲数の2であると想像がつきます。またアルバムにおけるこれらの情景を総じて「通り雨」としているのがいかにもミスチルらしいです。

#4「one two three」はアントニオ猪木さんの有名な掛け声に基づいたシャッフルナンバー。格闘家を目指す主人公が恋人から反対される様が「戦闘服よりはブレザーがよく似合う」と言った歌詞から伺えます。また2番のサビでは「ショーシャンクの空に」が登場しており映画好きの桜井さんの欲が抑えきれていません。

ちなみに映画が楽曲に登場するのは他に「蜃気楼」の「気狂いピエロ」「狂った果実」、「タガタメ」の「ディカプリオの出世作(ギルバート・グレイプ)」、「FIGHT CLUB」の「ファイト・クラブ」など。「#2601」ではハリウッド女優「ミシェル・ファイファー」の唇とドレスから覗く鎖骨も好きだとフェチを露わにしています。

#5「渇いたkiss」は定番の別れの歌としてファンの間でも人気の楽曲ですがAメロは「himawari」とコード進行もキーも同じ、また「himawari」も男女の別れを歌っているのでとても近縁と言えます。

シングル#6「youthful days」を経由してアコースティックロックの#7「ファスナー」でも男女の際どいシーンをウルトラマンや仮面ライダーのヒーローショウにおける「アレ」に喩え独特な視点で描いています。着眼点がさすがとしか言えず個人的にも大好きな一曲。アーティスティックなMVも制作されました。

続く#8「Bird Cage」も同棲する二人を番いの鳥に見立てた発狂寸前のヘヴィナンバー。女性を愛しながらも一緒に暮らす苦しさに葛藤する様子が歌われます。中盤のグロッケンとストリングス、フィルターをかけたコーラスは「さよなら2001年」に近いアレンジ

「Q」で断ち切れたと思っていた社会風刺の余韻が残っていた#9「LOVE はじめました」#7から続くこの3曲は本作においての最深部、歌詞においてはおそらく架空と思われる「親父に買われてホテルで刺される映画」が登場。「中田のインタビュー」など固有名詞が多いのもこのアルバムの特徴です。

#10「UFO」はミスチルお得意の不倫ソング。相愛する人がいながらもひょんな弾みで別の人と一線を越えてしまった主人公の、罪悪感からいっそUFOにでも連れ去られたいと現実逃避する様子がポップなメロディに乗せ歌われます。

#11「Drawing」より「綺麗なミスチル」を取り戻し、エンディングに向かっていきます。そんな「Drawing」ですが「youthful days」のカップリングでありながらカップリングベスト「B-SIDE」には収録されず代わりにシングルベスト「Mr.Children 2001-2005 <micro>」に収録されるなど優遇された楽曲。時の流れの残酷さ儚さを歌う美しいバラードとなっています。

#12「君が好き」はシングル曲ですが、この曲のジャケットでは夜空に浮かぶ月が描かれており、夏目漱石が弟子に向けた「I love you.」の意訳「月が綺麗ですね」を暗に示しています。なお歌詞では「濁った月が浮かんで」います。

#13「いつでも微笑みを」は穏やかなポップソングでありながら人の不幸や命の有限について歌った深いテーマが特徴。この曲のMVは粘土人形を使ったクレイアニメで、ここに登場する主人公はシングル「HERO」のPVにも登場(というか逆流用)。

#13から流れる#14「優しい歌」は個人的にこのアルバムの確信的部分だと思っていて、ポップでありながら人間の深い部分を歌い続けた本作において、あらゆる方面に向けたエールソングとしてとても綺麗な締め方をしています。

この余韻に浸りながらラスト#15「It’s a wonderful world」を聴き終えジャケットを改めて見る。

「いいな、これは。」

そういう感嘆が思わず口から漏れる名盤となっています。

最後に


コンセプト志向でありながらプログレの観点で言えばスルメっぽさはなく、ひたすら綺麗なテーマと聴きやすさ重視のアルバムではありますが、そこがJ-POPの王たるクオリティだと思います。

あと僕個人がリアルタイムで手にしたミスチルのアルバムで音楽やギターに憧れる多感な中学生時代だったこともありますが、額に入れて飾りたい大切な一枚となっています。

関口竜太

東京都出身。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロギタリスト山口和也氏に師事。ロックやメタルに加え、ブルース、ファンク、ジャズなど幅広い演奏や音楽理論を学ぶ。 プログレッシブロック/メタルの大ファン。自身が企画するプログレッシブ・ロックプロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。

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