Boston: リリースから43年。地下の狂った完璧主義者による歴史的1stアルバム!

おはようございます、ギタリストの関口です。

朝起きてTwitterのタイムラインを眺めていたら、今日8月25日はBostonのデビューアルバム発売日だということで、今日はこちらをご紹介していこうと思います!

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Boston / Boston


Boston

Boston(ボストン)はアメリカのハードロックバンド。70年代後半〜80年代にプログレッシブ・ロックを始祖としたアメリカン・プログレ・ハード(スタジアム・ロック)の代表的な存在として全世界で7500万枚以上のセールスを記録するモンスターバンドです。

地下室の狂った天才、Tom Scholz


現在までその活動が続くBostonがデビューしたのは今から43年前の1976年。

創設者であり現在唯一のオリジナルメンバーTom Scholz(トム・ショルツ)は幼少期からクラシックピアノを習うなど音楽に触れて育ちます。1960年代後半、マサチューセッツ工科大学に通いながら夜はボストンのバーやクラブでキーボードを演奏していたトムは次第に「完璧なロックバンド」をコンセプトに動き出します。

この「完璧」という言葉はよくバンドマンが口にするとりあえず言ってみたような軽さではなく、とにかく本気度が違いました。

トムは大学卒業後ポラロイド社に就職し製品の技術部門であるプロダクトエンジニアとなるのですが、そこで得た資金のほとんどを自宅アパートの地下に構築した多重録音が可能なスタジオの機材に費やします。スタジオの構築には大学時代の電気工学の技術が生かされることになりました。

そうしてデモテープの段階から当時のプロクオリティに匹敵する完成度ものを作るべく、ひたすら地下で作業を行います。

トムは史上稀に見る完璧主義者でした。

1973年までに完成させた「Mother’s Milk」と呼ばれる6曲のデモを手に、当時のレコード会社を何件も当たります。その中でいくつか有名な会社(Epic RecordsやAtlantic Recordsなど)には断られますが知り合いにABCレコードの従業員がいたことでそこへもデモテープを手渡すことに。

ABCレコードの代表Charles McKenzieはデモテープを聴くなりカリフォルニアのレコードプロモーターPaul Ahernに連絡。面白いバンドや音楽を見つけた際、二人は情報を共有する紳士協定を結んでいました。ポールはEpic Recordsの代表Lennie Petzeとの繋がりがあり、トムの作ったデモテープを手に再び持ちかけます。

一度は「目新しさがなかった」とデモテープを却下したEpic Recordsでしたが、トム率いるバンドの「地下室で働く狂った天才」という部分に興味を持ち、当時の親会社であるCBSレコードとの契約を果たすこととなりました。

アルバム参加メンバー


  • Brad Delp – Vocal, Guitar
  • Tom Scholz – Guitar, Keyboard, Bass…(他、必要な全ての楽器と、プロダクション、エンジニア、リマスター、ライナーノーツまで)
  • Barry Goudreau – Guitar
  • Fran Sheehan – Bass
  • Sib Hashian – Drums (#4「Rock & Roll Band」以外)
  • Jim Masdea – Drums (#4「Rock & Roll Band」にて)

楽曲紹介


  1. More Than A Feeling
  2. Peace Of Mind
  3. Foreplay / Long Time
  4. Rock & Roll Band
  5. Smokin’
  6. Hitch A Ride
  7. Something About You
  8. Let Me Take You Home Tonight

Bostonというバンドの作品よりかは「完璧主義者Tom Scholzによるプロジェクト」的側面が強いデビュー作。

楽曲のほとんどはトムが地下室に作った自宅スタジオで録音、ミックスされたものでありレコード会社を回った「Mother’s Milk」の音源そのものがベースとなっています。そのため楽曲のほとんどはトム一人による演奏でそこへリードボーカルBrad Delpが歌入れをし、必要に応じて他のメンバーが再録を行うというものでした。そしてトムが地下に篭ってひたすらミキシング作業という流れ…

当然レーベルは「プロクオリティで」「プロユースのスタジオで」という圧力をバンドにかけ続けましたが、当時のプロデューサーのJohn Boylanはバンドメンバーに1曲だけプロユースのスタジオでレコーディングを行わせることでこれを回避したと言われています。

さて、経緯や逸話が多くなりましたがアルバムを見ていきましょう。

とても70年代の自宅スタジオで録ったとは思えないハイクオリティです。もちろんCDリマスターによる音質の向上もありますが、今も普通に聴けるレベルのサウンド。

ミリオンヒットを記録したシングル#1「More Than A Feeling」は12弦ギターを使った曲としても有名で、ポップなメロディに手拍子などが加わったバンドの代表曲となりました。もっとも、この手拍子は本来多重録音の際に取り入れるリズムマシンを使わない代わりに用いた手法であり、完璧主義者行なった微妙なリズムの揺れが結果としてライブ感を生み出す副産物となっています。

続く#2「Peace Of Mind」もこれまたポップなメロディとブラッドによるご機嫌なボーカル、コーラスが後のBon JoviやB’zへの多大な影響を思わせます。なおトムはアンプやエフェクターなどの機材ブランドRockmanを創設したことでも知られており、90年代はB’zの松本孝弘さんも好んで使用していました。

プログレッシブな要素は?と問われると基本的にそれがないのがアメリカン・プログレ・ハードと呼ばれるジャンルですが#3「Foreplay / Long Time」は二部構成ゆえに8分近い収録時間とアグレッシブなオルガンを効かせたハードナンバーで実にアメリカン・イエスです。

#4「Rock & Roll Band」はタイトル通りのゴキゲンアメリカンロック!プログレッシブ要素はあまりないと先述しましたがオーバーダブによるリードギターのハーモニーなど新要素はプログレ的精神から生まれたものであったに違いありません。

シャッフルビートでブルージーなロックンロールナンバー#5「Smokin’」P-90を搭載したレスポールのフロントピックアップ音がワウペダルのような絶妙なトーンを産んだ#6「Hitch A Ride」、イントロにドラマ性を持たせた#7「Something Anout You」など今では当たり前のサウンドでも当時の衝撃は計り知れません。

ラストナンバーはイントロから3本ものギターを重ねた#8「Let Me Take You Home Tonight」。美しいコーラスとブラッドの澄んだボーカルにバラードを装っていますが後半はテンポアップ、パワフルなドラムとシンガロンで締めくくるパーティソングです。

評価


「ポラロイド社に勤めていた時は業績が逐一確認できた」と、リリース当初のトムは不安だったようですがセールスが20万枚を数えるころその不安も解消、アルバムは世界トータルで2000万枚を記録しダイヤモンド、ゴールド、プラチナと賞の三冠を獲得。そしてクラシック・ロックというジャンルの確立にも貢献しました。

2ndアルバムのころにはレコード会社の指示でよりポップな印象へシフトしていくため、スタジアム・ロック(商業ロック)としてJourneyやTotoなどと並び批難も浴びますが、本作「Boston」は地下から生み出された輝かしいダイヤの原石としてプログレ史にも残る名盤となっています。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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1件の返信

  1. dalichoko より:

    懐かしいですね。今も興奮いたします!(=^・^=)

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