Spheric Universe Experience「Mental Torments」: 苦難を乗り越えリリースされたフランス産プログレメタルのデビューアルバム!

おはようございます、ギタリストの関口です。

本日もプログレのご紹介です。

書きたいなぁと思いつつ度重なるリリースと変わっていく音楽的嗜好にどんどんiTunesライブラリーの下の方へ追いやられていくアルバムが結構あるので短期集中で吐き出してもいいかなと思っています。

本当は一日一枚じゃ間に合わないのですが今は二記事が書ける限界なので少しずつ記事数が充実していく様を見守ってください。

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Mental Torments / Spheric Universe Experience


Mental Torments + Bonus Track

Spheric Universe Experince(スフェリック・ユニバース・エクスペリエンス)はフランスのプログレッシブ・メタルバンド。

まずはご挨拶。

当ブログ2度目の登場となるSUEですが前回は2ndアルバム「Anima」のご紹介でした。

フランス産プログレメタルSUE。思い出補正と下手の美学。

僕とSUEの出会い、そして非常に聴きやすいプログレッシブ・メタルである反面音や技術はそこまででもないよというファンなのかファンじゃないのかわからない切り口でしたが、ツンデレな態度は改めます。とても好きです。

経歴


バンドの前身が結成されたのは1999年。

ギタリストVince BenaimとベーシストJohn Draiはプログレッシブ・メタルを中心に演奏するバンドの実現へ向け動き出します。

バンドはGates Of Deliriumという名前で活動したのち、キーボディストFred Colomboが加入。ボーカリストも加わったことでバンド名をAmnesyaに改名し活動を続けます。

2002年8月、バンドは音楽性の違いのために分裂。バンドのメインコアとなっていたヴィンス、ジョン、そしてフレッドはバンド名をSpheric Universe Experienceへと変更します。それから8ヶ月をかけデモアルバム「The Burning Box」を作成、当時セッションボーカルをしていたFranck Garciaに歌入れを頼んだところメンバーがこれに感銘。フランクは正式メンバーに迎えられることとなります。

バンドは2005年に本作「Mental Torments」にてメジャーデビューを果たし2012年までにアルバムを4枚リリース。その後のリリースは行われていませんがライブ活動などで息を細くしつつも活動中。

アルバム参加メンバー


  • Vince Benaim – Gutiar
  • John Drai – Bass
  • Fred Colombo – Keyboard
  • Franck Garcia – Vocal
  • Brice Volodia – Drums

前の項目で名前が出た4人はデモアルバム以降オリジナルメンバーとして固く結ばれていますが、ドラマーはアルバムごとで替わるほどメンバーチェンジが激しいです。

主な歴代ドラマー

  • Brice Volodia…デモアルバム「The Burning Box」、1stアルバム「Mental Torments」にて参加。
  • Nico “Ranko” Muller…2ndアルバム「Anima」にて参加。
  • Christophe Briand…3rdアルバム「Unreal」、4thアルバム「New Eve」にて参加。
  • Romain Goulon…現在ライブを行う際の正規ドラマー。アルバムへの参加はありません。

楽曲紹介


  1. So Cold
  2. Now or Never
  3. Burning Box Gala
  4. Saturated Brain
  5. Moonlight
  6. Halleygretto
  7. Mental Torments
  8. Sidereal Revolution (Bonus Track)
  9. Echoes of the Star

ともあれ紆余曲折を経て、またはどのバンドも経験する麻疹のようなハードルを乗り越え本作がフランス産プログレッシブ・メタルバンドSpheric Universe Experienceの1stアルバムとなります。

基本情報として、テクニカルギターとシンセサイザー、変拍子や長尺曲といったこの手のジャンルが好きなお人にはすぐ理解が追いつくとてもわかりやすい音楽性。取り分け本作と2ndアルバム「Anima」においてはUSのDream TheaterやノルウェーのCircus Maximusなどと並ぶ本格プログレメタルを堪能できます。

#1「So Cold」のイントロはMetallicaを彷彿とさせる80年代サウンド。ミッドがきつめに感じるギターもそこに寄せたものだとすれば納得できます。キャッチーなメロディもこのバンドの特徴で、突出したコーラスワークこそないですがシンプルな3度下のハモりだけでも気持ちいいというのは歌として重要なポイント。

#3「Burning Box Gala」の「Gala」はフランス語で祭りを意味する単語で、メジャーデビュー前のデモアルバム「The Burning Box」のプログレッションを詰め込んだ6分半弱のインスト曲。メドレー的要素があるためテーマ曖昧ですがシンフォニックなキーボードワークが素晴らしいです。

メンバーが絶賛したというフランクのボーカルは本作から遺憾無く発揮されていて、サビのハイトーンだけではなく場面ごとに切り替える表現力が見事です。特に#5「Moonlight」ではJames LaBrieを思わせるウィスパーで色気たっぷりな序盤からパワフルに歌い上げる様はこのバンドがもっと評価されるべき点でもあります。

この曲のギターソロではアーミングやディレイ風ライトハンドを使ったヴィンスのアーティキュレーションも聞きどころ。

#6「Halleygretto」はメジャーからの技量をもってした再びのインスト曲。タイトルは速度を指定する音楽用語「Allegro」からさらに速くという意味合いを持つ「Allegretto」。フランス語なので発音は英語の通りですが「Hallegretto」となります。頭のHを発音しないのはフランス語やイタリア語の特徴です。

#7「Mental Torments」はアルバムタイトルを冠した15分半に及ぶ大作曲。メインとなるサビは高速3連かつ7拍というプログレメタルならではのアレンジ。5分過ぎからテンポチェンジ、ソロを含んだインストパートへと切り替わります。変拍子を駆使したヘヴィなリフを披露しソロでは2nd以降を見てもないくらい大胆に弾きまくるギターが印象的です。

ラストの曲を前に#8「Sidereal Revolution」でなぜかボーナストラックが入ります。ちなみにこちらも様々な展開を有したインストナンバー。「Anima」に収録された「Black Materia」に繋がっていきそうな気配があります。

ボーナストラックを挟んでラスト#9「Echoes of the Star」です。#1で見せたクリーンコーラスのアルペジオやフワッと雰囲気を醸すシンセストリングス、イントロを牽引するフレッドの美しいピアノワークが光ります。珍しくコーラスにも力を入れた曲で、力強いバックバンドとしっとり歌い上げるフランクのボーカルが余韻を残すバラードとなっています。

11分弱に登る長尺曲ですが8:50ほどで終了し、しばし無音のあとデジタルなインストメタルを披露、最後の1秒まで絞り切れるボリュームたっぷりの作品となりました。

最後に


アルバム自体の総評としては平均点といった感じですが、彼らの苦難とかそれを乗り越えアルバムをリリースしていく様なんかが結構好きでSUEを聴くと何故か勇気が湧いてきます。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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