Earthside「A Dream In Static」: USプログレメタルの大型新人!豪華なバックサポートと多ジャンルを盛り込んだ衝撃のデビュー作!

おはようございます、ギタリストの関口です。

8月も終盤、長引く雨に気温も少し下がっていよいよ夏の終わりを感じます。

このブログも3月から気持ちを入れ替え毎日更新継続中、今月も無事更新を途切れさせず終われそうです。

こうしてブログを書き続けること1年以上、この1年で消化したプログレアルバムは100タイトルに上り、始める前よりも圧倒的に知識量やこのジャンルへの理解が深まったことに感謝しかありません。

そしておかげさまでSNS上での認知も進んで「レビューを書いて欲しい」「これ聴いてみてください」といったリクエストも来るようになりました。これが意外とノーマークだったりするので興味津々に聴かせていただいてます。

そんな流れから今日はこちらのアルバムをご紹介します!

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A Dream In Static / Earthside


EARTHSIDE – A DREAM IN STATIC (1 CD)

Earthside(アースサイド)はアメリカのプログレッシブ・メタルバンド。

メンバー


  • Frank Sacramone – Keyboard, Programming
  • Jamie Van Dick – Guitar, Chorus, Programming
  • Ryan Griffin – Bass, Chorus
  • Ben Shanbrom – Drums, Chorus

インテリジェンスロックの大型新人


アメリカはニューイングランドから2015年にデビューを飾った4人組インストバンド、Earthside。

同年デビューしたアメリカの新人としてはNative Constructがいましたが今年解散をしてしまったのでこれからの活躍が期待されるバンドの一つです。

2012年にBurning SidewaysというソロプロジェクトでアルバムをリリースしていたキーボディストFrank Sacramoneが中心となって結成されます。

無名であるはずの彼らが「超話題の」と形容されるのはデビューアルバムにしてその豪華な作品にありました。

バンドのプロデュースはOpethやKatatoniaを手がけたDavid Castillo、ミックス/レコーディングエンジニアには同上のバンドに加えSoilwork、Symphony X、James LaBrie、さらには日本のANTHEMなどメタル・エンジニア界では知らない人はいない敏腕Jen Bogrenが担当。

基本はインストバンドなのですが本作においてはゲストボーカル曲も4曲携えておりそこもまた豪華なので後述します。

音楽性


プログレッシブ・メタルとカテゴライズするのがもっともふさわしいかと思いますが、実はこれは逆。

エモ系メタルでありながらよりモダンなDjentの流れも組み、さらにポストロック的なライトで透明感に溢れるアプローチが見られるなど特徴の多い音楽性。

そこに、おそらくサクラモーンによる映画音楽の影響がぎっしり詰まったシンフォニックな要素も加わり本人たちは自分たちの音楽を「Cinematic Rock」と呼ぶほど。

つまりプログレッシブ・メタルだからこれこれこういうサウンドでこういうアプローチ…なのではなく、キメラ的に様々なクロスオーバーをした結果一言でまとめるならプログレッシブ・メタルと呼ぶ他なくなった、前衛的と言わざるを得ない21世紀の最新ロックです!

楽曲紹介


  1. The Closest I’ve Come
  2. Mob Mentality
  3. A Dream in Static
  4. Entering the Light
  5. Skyline
  6. Crater
  7. The Undergrounding
  8. Contemplation of the Beautiful

5分半〜12分弱の比較的大型の楽曲が並ぶ全8曲。そのうちインスト曲とゲストを迎えたボーカル曲がちょうど半々になっているという内容です。

ゲストボーカルですがまずはアメリカのオルタナメタルを牽引するSevendustのLajon Witherspoon。次にイングランドのプログレメタルバンドTesseracTのDaniel Tompkins、スウェーデンのメタルバンドSoilworkのBjörn Strid、ニューヨークのオルタナバンドFace The KingのEric Zirlinger、以上の4人。

なかなかに豪華な仕様ですがプログレというよりはメタル寄りの人選。しかしそんなゲストや著名なエンジニアに負けない技量と楽曲のクオリティで彼らは「超話題の」新人となったのです。

#1「The Closest I’ve Come」から、これがEarthsideサウンドと決定付けます。ディレイテクを駆使したクランチギターにメタリックで攻撃的なリフが刻むアンビエントインストナンバー。ポストロックに対し、なんでもっとヘヴィなことやらないのかと常々思っていた人を叩き起こす新鋭のメタルスタイルです。

続く#2「Mob Mentality」はラジョンを迎えたボーカル曲。Moscow Studio Symphony Orchestraもゲストに迎え映画音楽さながらのシンフォニックなイントロが衝撃的です。メロディックなサビとハスキーでありながら壮大に伸びるラジョンのボーカルが切なく響く個人的にお気に入り曲。スリリングなストリングスワークも絶品です!

 

 

タイトルトラックである#3「A Dream in Static」はダニエルによる美しいハイトーンが魅力的なボーカル曲。豊かなコーラスとかき鳴らすアンサンブルに浸るエモ系サウンド。間奏ではダウンチューニングによるヘヴィネスリフが展開する側面も併せ持ち、Earthsideが広いバックグラウンドを持って生まれたバンドであることを印象付ける1曲です。

#4「Entering the Light」は先のMoscow Studio Symphony Orchestraに加えハンマー・ダルシマー奏者であるMax ZTをゲストに迎えたインスト曲。アイルランドとアメリカのフォークミュージックをルーツに持つマックスの演奏は「ハンマー・ダルシマーのジミ・ヘンドリックス」と呼ばれ本曲においてもオリエンタルな存在感を存分に発揮しています。

#1の系列であるバンドオリジナルのサウンドにピアノもフィーチャーしたモダンアンビエントインスト、#5「Skyline」。タイトル通りの透明感溢れる世界観はジャケットアートともマッチする仕上がり。なおこのアートワークはOpethでお馴染みTravis Smithによるものです。

Soilworkのビョーンがゲストで歌い上げるミディアムテンポのストレートメタル#6「Crater」。高く突き抜けるようなドラムが印象に残る一曲でエンジニアのジェンも力が入ったんだろうなというのが感じ取れます。

#7「The Ungrounding」はデジタル音にDjent系列の歯切れのいいリフ、近年人気を博すプログレメタル・フュージョンの様式を取ったインストナンバー。激しさの中で煌めくキーボードワークが互いを相殺することなく絶妙に絡み合った当バンドの真骨頂となります。

ラストナンバー#8「Contemplation of the Beautiful」はシンセから静かに幕を開ける11分超えの長尺曲。ボーカルのエリックは初めこそ聞こえるか聞こえないかの声量ですがサビに入るやアグレッシブなバンドアンサンブルに呼応するかのような魂の叫び。シンフォニックなサウンド像も特筆すべき点で、構築プログレ的展開こそないものの緩急をつけた映画音楽を体現する本バンドらしい大作ナンバーです。

最後に


これだけゲストが豪華ならと聴く前は思っていましたが、完全に実力によってゲストをコントロールする存在感がEarthsideにはありました

本作リリース後の2015年秋にはSoilworkとのツアーも成功、2016年にはヨーロッパツアーも行なっていますので、日本でも人気の出そうなスタイルですし、今後の活躍次第で来日も期待したいところです。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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