「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」感想。名作は名作、98年版が神格化した人にも観て欲しい!
by 関口竜太 · 2019-08-18
おはようございます、ギタリストの関口です。
公開から一ヶ月あまり、世間のファンからだいぶ遅れて「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」を観てきました。
そう言えば「名探偵ピカチュウ」のときはブログに書いたじゃないかと思い出しつつも、まったくそんなつもりもなく観に行ったのですが名作は名作、感動して帰ってきたのでエンターキーを叩きます。
名探偵ピカチュウ感想。世界観遵守の王道ハリウッド(ネタバレなし)
オリジナルは1998年
今でも覚えてますよ、小学5年生にして初めて自分から観に行った映画です。
当時は上野公園に劇場があって、今みたいに指定席じゃなかったので前の上映が終わるまでロビーで待ち、入れ替わるように好きな席に座るんです。もちろん、席が空いていれば前の上映中でも入っていけますが幼心ながらそれは邪道だと思っていましたね。
そしていようと思えば何周でも観て帰れるのですがきちんと一回だけ観て帰ってきました。当時から律儀だと我ながら感心してしまいます。
登場ポケモンや人物などオリジナル重視
基本的には98年オリジナルのフルCG版。
CGによる人の質感はちょっと粘土人形っぽくはありますが90分のうちに慣れてくれます。ポケモンは名探偵ピカチュウのような薄い体毛のある質感ではなくツルツルな感じ。背景や建物、雲や波飛沫は素晴らしいです。
初代(赤緑)のポケモンがほとんどだった時代で、現在はさらに種類が650種以上増えていますが登場するポケモンはオリジナルに忠実でした。
オープニングで主人公のサトシがトレーナー(CV:レイモンド・ジョンソン)にバトルを挑まれ、このトレーナーがドンファンを繰り出してくるのですが、これは98年当時、まだ未発売の「ポケットモンスター金銀」に登場する数少ないリークポケモンだったから。
当時ネットは愚かパソコンすらさほど普及しておらず、小学生においての情報網は月刊コロコロコミックと「友達の友達」とかいう信頼度ゼロの噂。
リーク情報で確定だったのはドンファン、トゲピー、デンリュウ、ホウオウくらいでしょうか。唯一の頼りであるコロコロをもってすらドンファンはサイホーンの近縁と思われていたし、デンリュウもサンダーとカイリューを合体させたようなポケモンとして紹介されていました。
でも今みたいにバンバン新情報が入ってくるよりは想像の余地を残しわくわくしていたのは間違いありません。その辺の時代背景も加味して見るとより楽しめるかと思います。

98年オリジナル版での同様のシーン
自らの存在意義を問う深いテーマ
この映画がポケモン映画の原点にして頂点と言われるのはそこに内在したテーマの深さです。
ポケモンの細胞からより強いコピーを作る研究を行なっているフジは幻のポケモン「ミュウ」の化石の一部を手に入れそこから「ミュウツー」を誕生させます。
ミュウツーは自ら培養装置を破壊しテレパシーにおいて人間とコミュニケーションを取るなどパワーにも頭脳にも優れましたが、自分には親が存在せず何故生まれたのかその経緯や目的も不明、加えて「実験」の成功に喜ぶ研究者たちを目の当たりにし怒り、研究所を破壊します。
原作のゲームではかなり凶暴なポケモンとして描かれていますが、映画ではこのように哲学的で相応の悩みを抱き哀愁を漂わす哀しきモンスター像に近いです。98年版と本作共に声優は特別出演の市村正親さんが演じ、モデルとなったのはオペラ座の怪人と言われています。
その後マフィア組織ロケット団のボス、サカキの元でバトルマシーンとして利用され続けたことで人間に対する信頼は崩壊、自分を産んだすべてのものに対する逆襲を計画します。
変更点
オリジナルに忠実とは言え、シリーズが進んで21年も経てば多くの追加要素があります。以下は様々な矛盾点の解消や追加要素を含んだオリジナルから本作への変更点です。
- オープニングのトレーナーが繰り出すゴローニャがスリープに変更。これはピカチュウの「10まんボルト」で一掃されるシーンにおいて本来でんきタイプがじめんタイプに相性で効かないため。
- 波止場を仕切っているボイジャー(CV:小林幸子)の話に登場するカモメがキャモメに変更。
- ソラオ(CV:神谷浩史)の使うフシギバナ(バーナード)が当時なかった技「エナジーボール」を使用。
- ミュウツーの元でオリジナルと戦うコピーポケモンのフシギバナが当時なかった技「リーフストーム」を使用。
- コピーポケモンのカメックスが当時なかった技「こうそくスピン」を使用。これによりスイート(CV:佐倉綾音)の使用するカメックス(クスクス)は「ハイドロポンプ」ごと弾かれ敗北。またオリジナルにはなかった「ロケットずつき」を指示していました。
- タケシが本でミュウのことを知っていたことが判明。
- サトシのリザードンがコピーポケモンのリザードンと最終的に和解するシーンが追加されています。
そして変更点はあれど変わらない部分も。何より昨年8月に亡くなられた石塚運昇さんのナレーションが健在。これは亡くなる前に事前収録をしていたためで、本作が事実上の遺作となりました。
最後に
98年版が神格化しているアラサー世代の人でも当時のイメージが壊れない作りになっているのが本作最大の配慮です。
毎年ポケモン映画を観てますが今年は内容も知ってるし観たい反面気乗りも半分だったのですが観てよかった…!
本作はミュウツーの内面によりオリジナルシーンが追加され98年版よりミュウツーへの感情移入がしやすくなっています。そしてクライマックスはお決まりです、泣いてください。
そしてCGの迫力やポケモンという生物の描写に進化が感じられ将来的にホログラムでも連れて歩けるくらいになってくれたら嬉しいなと年々色濃く願ってしまうばかりです。
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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