Focus「Moving Waves」: ロック後進国オランダでジャズやクラシック、ヨーデルを取り込んだ技巧派プログレバンドの大ヒット2nd!
by 関口竜太 · 2019-08-03
おはようございます、ギタリストの関口です。
先日書いた記事、カメラや写真の流れからジョークを効かせこちらを紹介しようと思っていたのですが、思いのほか筆が乗ってしまったので別記事としてしまいました!
というわけで今日はこちらをご紹介していきます!
Moving Waves / Focus
Focus(フォーカス)は、オランダのプログレッシブ・ロックバンド。
ロック後進国で生まれた西欧プログレの革命家
1969年にボーカリストでありキーボディスト、フルート奏者であるThijs Van Leer(タイス・ファン・レール)を中心に結成されます。1970年にアムステルダム出身のギタリストJan Akkerman(ヤン・アッカーマン)が加入すると同年にはデビューアルバム「In and Out of Focus」をリリースします。
このアッカーマンというギタリストがFocusの武器でした。
70年代初期のオランダという地はロック後進国と言われていましたが、ハードなリフや速弾きという概念がすでに彼の中では確立しており、デビューから2年を数える頃には当時のイギリスの雑誌アンケートにおいて絶大的人気を誇ったEric Claptonを抜き1位に君臨するほど。
日本でも、そんなイギリスでの音楽事情を輸入する過程でFocusは支持され、アッカーマンもギターヒーローとしてRitchie BlackmoreやJimmy Pageに並ぶ人気でした。そのリッチーですら絶賛するほどの名手なのです。
例に漏れず、後にプログレッシブ・ロックと呼ばれるこの音楽が、海を隔てたオランダの地でも同じ着想の下生まれたという事実はとても興味深いです。それについては後に解説します。
バンドは78年に解散しますが90年代に再結成を果たしメンバーチェンジを繰り返しながら現在でもコンスタントにアルバムをリリースしています。
アルバム参加メンバー
- Thijs van Leer – Hammond Organ, Piano, Mellotron, Flutes, Vocal
- Jan Akkerman – Guitar, Bass
- Cyril Havermans – Bass, Vocal
- Pierre van der Linden – Drums, Percussion
楽曲紹介
- Hocus Pocus
- Le Clochard
- Janis
- Moving Waves
- Focus Ⅱ
- Eruption
Focusにとって、人気を押し上げた一枚でありプログレの歴史でも語り継がれるべき代表作の2ndアルバム。
基本、インストか歌詞の存在しないボーカル曲の全6曲ながら代表曲#1「Hocus Pocus」や23分の大作#6「Eruption」を収録しその音楽は現在でも衝撃的です。
代表作#1「Hocus Pocus」ですが、ハードなギターにヨーデルを融合した唯一無二のインパクトを誇る名曲。これがシングルカットされ全世界で大ヒットします。
「リッチーが絶賛」というのも納得のギタープレイで、キャッチーなリフはDeep Purpleにも影響を与えたはずでしょう。日本ではカルメン・マキ & OZの「私は風」がこれに近いリフを有したプログレソングだと思います。
日本のプログレ界に影響をもたらした歌手、カルメン・マキという“風”
続く#2「Le Clochard」はガットギターを用いた2分ほどの小曲インスト。クラシカルで繊細な響きも得意としていたアッカーマンの完成された技巧を伺わせます。
#3「Janis」はフルートによるリードプレイがプログレッシブ・ロックらしい雰囲気へ引き込む他、#4「Moving Waves」では美しいピアノとボーカルでアルバムを彩るタイスの功績も書いておかなくてはなりません。
タイスの家庭はもともと音楽一家で、タイス本人も幼少から音楽的上層教育の中、フルートやピアノを習得させられました。
習い事からジャズやクラシックに興味を示しMiles Davisなどがお気に入りでしたが、やがてロックに目覚めるとそんなジャズやクラシックをロックに活かせないものかと考えるようになります。そういったインスピレーションがFocusのルーツとなっているようです。
#5「Focus Ⅱ」は1stアルバムより現在も続く曲名に「Focus」と付くシリーズの2曲目。メロウでありポップでありエモーショナルであるリードギターが思わずゾッとしてしまうほどの存在感。バンドのジャズやフュージョンへの理解の深さを物語っています。
これら一ギタリストとキーボディストよりもたらされた多ジャンルの音楽性は#6「Eruption」でキメラのようにさらに融合し、本家イギリスの五大プログレバンドに引けを取らない完成度の高いアルバムが出来上がりました。
最後に
先ほども述べた通り、Focusはタイスが70を超えた今でも活動が続いており今年に入ってからも最新作「Focus 11」がリリースされています。
そちらのアルバムもまた巡り巡った後にご紹介できればと思います!
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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