Emerson, Lake & Palmer「Picture At An Exhibition」: ジョジョ第5部のテーマから考察する「芸術」と「魂」の形。音楽に「運命の石」は存在するのか。

おはようございます、ギタリストの関口です。

先日、アニメ「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」がゴールデンタイムの1時間スペシャルをもって最終回、完全完結となりました!

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3クールに渡って見事なまでのアニメ化、スタッフのみなさん本当にお疲れ様でした!

僕は30年続くジョジョの中でも第5部に当たる本作が最も好きで、主人公の生い立ちとそのキャラクター性はもちろん、「結果」が同じだとしてもそこに至る「過程」にこそ意味があるという人生の命題に近い壮大なテーマは実に芸術的で、本来神のみぞ知る「運命」という部分に触れられる貴重な漫画だと思っています。

「眠れる奴隷」とミケランジェロの「究極の形」


アニメ最終回でも原作同様ラストに放送されたエピローグ「眠れる奴隷」では、ローリングストーンズという球体をした石のようなスタンド能力が登場します。これは「近々死ぬ運命にある者の死ぬ姿となって追跡し、その人物がスタンドに触れることで安楽死させる」という能力なのですがこの能力を有する本体、彫刻家のスコリッピはミケランジェロを引き合いにこのようなセリフを残します。

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歴史の頂点に輝くかのミケランジェロが言った言葉がある…
「わたしは大理石を彫刻するとき…着想を持たない……
「石」自体がすでに掘るべき形の限界を定めているからだ……
わたしの手はその形を石の中から取り出してやるだけなのだ」

(中略)

ミケランジェロは「究極の形」は考えてから掘るのではなく
すでに石の中に運命として「内在している」と言っているのだ

彼は掘りながら運命を見ることができた芸術家なんだ

優れた芸術作品というのは、作り手が何かを思って思考を凝らし作り上げるのではなく、例えば彫刻なら「掘られる石は初めからその形になる運命だった」という考え方です。

これは彫刻だけではなく絵画でも同じことが言え、絵の具や水、筆の毛先から紙に至るまで素材の全ての中にすでに内在している「運命」だというわけです。

さらにジョジョ第6部「ストーンオーシャン」の中で主人公の一族における宿敵であり物語の鍵となるDIOが遺した以下の言葉。

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パリのルーブル美術館の平均入場者数は一日で4万人だそうだ

(中略)

開館は1793年
毎日4万人もの人間がモナリザとミロのヴィーナスに引きつけられ
この2つは必ず観て帰っていくというわけだ

(中略)

すぐれた画家や彫刻家は自分の「魂」を目に見える形にできるという所だな

ここでは「作品」は「運命」ではなく芸術家の「魂の具現化」としていますが概ね言っていることの意図はズレていません。

人々は美術館で「作品」を見るのではなく「石の運命」や「芸術家の運命」を見るから感動を得られるのだと僕は考えています。


ジョジョの奇妙な冒険 第5部(30~39巻)セット (集英社文庫(コミック版))

音楽に「石」は存在するか


さて、音楽も広く大衆の心を掴む言わば「音による芸術」です。

彫刻や絵画が光の加減や実物の存在感を目で堪能するなら、音楽はそれが流れる時間と空間を耳や肌(もしくは演奏を目で)感じ取れる芸術ということになります。

CDは再生ボタンを押せば何度でも聴くことができますが、ことライブにおいては実に刹那的で一瞬一瞬にもう二度と訪れない時間という概念を含んでいるため、著名なアーティストのライブでは観客は涙を流し拍手と歓声を送ることになります。

まぁもっともそこまで音楽を荘厳に考える必要は現代ではないのですが、それでも好きなアーティストのライブに行ったら「あと少しでも長くこの時間が続いて欲しい!」と1秒単位で名残惜しくなりますよね。

音楽にはもう一つ、観客も作品の一つとする考えがあって歓声や拍手の余韻もライブというその場限りの作品を完成させる重要なファクターであることは間違いありません。

長くなりましたが今日はそんなライブ作品を一つご紹介して締めさせていただきます。

 

 

Picture At An Exhibition(展覧会の絵) / Emerson, Lake & Palmer


PICTURES AT AN EXHIBITION

Emerson, Lake & Palmer(エマーソン・レイク&パーマー)はイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。1970年から活動し五大プログレッシブ・ロックバンドの一角を担う存在として後世に多大な影響を与えました。

80年に一度解散、90年代に再結成しライブ活動の他スタジオアルバムを2枚、ライブアルバムを2枚リリースしていますが1996年に実質的な解散となります。

メンバー


  • Keith Emerson(キース・エマーソン) – Keyboard (2016年死去)
  • Greg Lake(グレッグ・レイク) – Vocal, Bass, Guitar (2016年死去)
  • Carl Palmer(カール・パーマー) – Drums

2016年に主要メンバーの2人が相次いで他界してしまったため2019年現在、存命なのはドラマーのカール・パーマーのみとなります。

そこにそうあるべきライブ盤


  1. Promenade
  2. The Gnome
  3. Promenade
  4. The Sage
  5. The Old Castle
  6. Blue Variation
  7. Promenade
  8. The Hut Of Baba Yaga
  9. The Curse Of Baba Yaga
  10. The Hut Of Baba Yaga
  11. The Great Gates Of Kiev – The End
  12. Nutrocker

元々、キーボディストであるキースの趣向が強く現れたバンドであり、クラシックに傾倒した音楽性が特徴です。

本作は19世紀ロシアの作曲家モデスト・ムソルグスキーのピアノ組曲「展覧会の絵」を独自の解釈で編成、オリジナルの新曲を加えカヴァーした作品であり、EL&Pの中でも特に人気の高い作品です。

一番の特徴はこれ自体がライブ盤だというところにあり、前作「Tarkus」のリハーサル後このアルバムの内容を含むライブ録音が行われその様子を収めた作品。

リリースする時期は当初未定のままでしたが、ライブを録音していたファンの手によってこのライブ全編を収録した海賊版が出回る事態になってしまいました。事態を憂慮したEL&Pサイドは海賊版を回収、沈静化を測るため本作のリリースに踏切りました。

敬意を辿れば不本意なリリースでしたが、その売れ行きはまさに爆売れというべきセールスを記録。なんと世界で最も順位が高かったのは日本で、オリコンチャートで2位を記録しています。

原曲がクラシックであるという側面と、当時の楽器、音響機材、集音・録音技術、ライブハウス、鳴り止まんばかりの歓声、それら全てがレジェンドとも言うべき3人の手により1970年の時間と空間として、そしてそうあるべくしてある「運命」としてそこには収録されています。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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