Echolyn「I Heard You Listening」: 王道UK風USプログレ!夏の風を感じる爽やかなベテランサウンドが心地いい!
by 関口竜太 · 2019-07-29
おはようございます、ギタリストの関口です。
関東は今日にも梅雨明けするそうで、例年に比べたら若干遅いのですが今年も夏の到来です!
冬を越え、花粉を越え、じめっとした雨の時期を越え今度は炎天下に根を上げる季節ですが…それでも突き抜けるような晴れと圧倒的気温の上昇、それでいて短命で切なさも漂う季節を思うとやはり夏が一番好きですね。
今日はそんな爽やかなプログレをご紹介。夏らしいですが湿度は低めです。
I Heard You Listening / Echolyn
I Heard You Listening [12 inch Analog]
Echolyn(エコーリン)は、アメリカのプログレッシブ・ロックバンド。
不遇な時代に動き出したUSプログレバンド
商業的なニューウェイブミュージックによるプログレの下火を受けて、絶滅を免れ地下の巣穴で肩身の狭い思いをしていた同胞たちが、もう一度70年代のあの頃のサウンドを再現しやっていこうと勃興した80年代初頭。
MarillionやMagnum、I.Q.を初め、それらはポンプロック(現在ではネオプログレッシブ・ロックという呼称が一般的)と呼ばれ一部のプログレファンからは敬遠されつつ現在まで続く息の長いバンドも多いです。
Echolynが結成された1989年はそんなポンプロックウェーブからしばらく経ってからのことで、プログレッシブ・ロックにとっては今よりも不遇の時期にあったと言えるでしょう。
ギタリストBrett Kull(ブレット・クル)とドラマーPaul Ramsey(ポール・ラムジー)は、当時活動していたNarcissusというカヴァーバンドから分裂し新たなバンド結成に乗り出します。キーボディストChris Buzby(クリス・バズビィ)の加入が決まるとバンドは元のNarcissusでベースボーカルを務めていたRay Weston(レイ・ウェストン)を説得しバンドを合併。新たにベーシストJesse Reyes(ジェシー・レイズ)を迎える形でEcholynをスタートさせました。
レコーディングの最中、ベーシストがTom Hyatt(トム・ハイヤット)に変更されるという急なメンバーチェンジもありましたが何はともあれ結成から2年後の1991年に1stアルバム「Echolyn」がリリースされます。
バンドは1996年までにアルバム5枚、うち1995年リリースの「As The World」はSonyミュージックと契約した実質メジャー1stとなります。一見順風満帆に見えましたがレコード会社との契約上のトラブルが続きバンドは96年に一度解散という選択を選びます。
2000年に再結成、現在の形に落ち着くまで5年の歳月を要しましたが、ポップなメロディに裏付けされた抜けのいいアコースティックなサウンドは現在でも支持され人気を博しています。
メンバー
- Ray Weston – Vocal, Bass
- Brett Kull – Guitar, Vocal
- Chris Buzby – Keyboard, Vocal
元メンバー
- Paul Ramsey – Drums, Percussion
- Tom Hyatt – Bass
- Jesse Reyes – Bass (1st「Echolyn」の数曲のみ)
- Jordan Perlson(ジョーダン・パールソン) – Percussion (6th「Cowboy Poems Free」では正式メンバー、7th「mei」ではゲストでの参加)
楽曲紹介
- Messenger of All’s Right
- Warjazz
- Empyrean Views
- Different Days
- Carried Home
- Once I Get Mine
- Sound of Bees
- All This We’re Given
- Vanishing Sun
デビューから追っていけばサウンドスタイルは都度変化しているものの、Genesis、Gentle Giant、The Beatlesなど古き良きUKバンドからの影響を昇華し、アメリカらしいポップなメロディと抜けのいい爽快なサウンドを芯に構えているのが特徴。
本作「I Heard You Listening」も2015年作でありながらどことなくレトロで優しい響きを含んでいてクラシカルなプログレッシブ・ロックという印象です。
#1「Messenger of All’s Right」からそんなどこか懐かしいプログレの王道スタイルです。浮遊感のあるゆったりとした展開にウェストンのうねりが効いたボーカルとブレットのユニヴァイブ的なソロがマッチしていてなんとも心地よいです。
テクニカル面でも申し分なく#2「Warjazz」#4「Different Days」#6「Once I Get Mine」では軽快なノリでYesやGenesis風のシンセリードやオルガン、ハードなギターを披露。この辺りが好きな人は界隈でも多いと思いますが複雑なリズムの曲でもそれを感じさせないほどのポップさがあるのは流石です。
#3「Empyean Views」はUS特有のメロウな雰囲気にUK風のコーラスワークが混ざった斬新な一曲。彼らのインフルエンスでもあるSteely Danの一端を感じ取れます。本作で随一9分ある大作で波のように押し寄せるシンフォニックロックが堪能できます。
このようにアメリカンでありながらUKの風を感じられるのがEcholynたる象徴で、#5「Carried Home」や#8「All This Time We’re Given」などはまさにその典型。Gentle Giantを彷彿とさせるコーラスがきたかと思うと中期Aerosmithのような大陸バラードのサビが流れ込んでくるので想像以上に感情が揺すぶられます。
アルバムはどれも非常にボリューム感のあるものばかりで、落ち着いた雰囲気のある演奏はベテランの領域。本作リリースからすでに4年経つのでそろそろ新作も待たれます。
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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