Karmakanic「Who’s The Boss In The Factory?」: 北欧プログレのファミリーツリーの中心人物、Jonas Reingoldにリンクした多ジャンルロック!

おはようございます、ギタリストの関口です。

最近はプログレの紹介も2日に1回くらいのペースで合間はコラムや活動報告的な感じですが、時間がたっぷりある夏に向けてプログレもたっぷりとご紹介していきます。

本日はこちら!

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Who’s The Boss In The Factory? / Karmakanic


Who’s The Boss In The Factory

Karmakanic(カーマカニック)はスウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド。

北欧プログレ界のベテラン、Jonas Reingold


Karmakanicを語るには、最も重要な人物であるベーシストのJonas Reingold(ヨナス・レインゴールド)を語る他ありません。彼は現在50歳。

90年代はセッションプレイヤーとして、様々なバンドのライブやレコーディングに参加する実力派ベーシストでした。ソングライティングの才能にも長け、スウェーデンのヘヴィメタルバンドThe Poodlesにおいては作曲による形で貢献もする、音楽家としてはまさに多忙な存在。

堅実な反面、端から見れば若干の地味さが浮き彫りになってしまう彼でしたが2000年に転機が訪れます。

70年代から続くスウェーデンのプログレッシブ・ロックバンドKaipaのギタリストとして有名なRoine Stolt(ロイネ・ストルト)。その彼のソロアルバムから発展したバンドThe Flower Kingsの後任ベーシストとしてヨナスが加入することとなりました。

これがきっかけでパワーメタルバンドのOpus AtlanticaTime Requiem、そしてロイネが独立した後のKaipaなど、ヨナスは様々なバンドに参加し息の長い活動をしていくこととなります。

2002年、ヨナスは二つのバンドの結成に立ち会うことになります。

一つはイギリスのマルチプレイヤーAndy Tilson(アンディ・ティルソン)率いるThe Tangent。先のTime ReqiemのボーカリストGöran Edman(ゴーラン・エドマン)も参加した本プロジェクトは、ジャズ要素の強いカンタベリー・ロックの現生種として軽快かつインテリジェンスなインストが特徴。1回限りのプロジェクトの予定でしたが現在まで続きスタジオアルバム、ライブアルバム述べ16枚をリリースする大型プロジェクトとなりました。

ジャズプログレの元祖カンタベリー・ロック。そして現生種であるThe Tangentが超絶にかっこいい。

そしてもう一つ、ヨナスが主導となり結成されたのがKarmakanicです。

ボーカルには同じくゴーランが参加。ドラムには当初The Flower KingsのZoltanCsörsz(ゾルタン・チェルシュ)が参加していましたが現在はKaipaのMorgan Ågren(モーガン・オーグレン)となっています。このようにヨナスの人脈が活かされた本バンド北欧らしい見事な楽曲構築と多ジャンルを巻き込んだプログレッシブ・ロックとなりました。

アルバム参加メンバー


  • Göran Edman – Vocal
  • Krister Jonsson – Guitar
  • Jonas Reingold – Bass
  • Lalle Larsson – Keyboard
  • ZoltanCsörsz – Drums

ゲストにはヨナスと親交の深いRoine StoltやAndy Tilsonが参加。

楽曲紹介


  1. Send a Message from the Heart
  2. Le in Hollywood
  3. Who’s the Boss in the Factory?
  4. Two Blocks from the Edge
  5. Eternally, Pt.1
  6. Eternally, Pt.2

2008年にリリースされた本作はKarmakanicがInside Outレーベルへ移籍してからの処女作。それ以前はもっとプログレメタル感が強く緊張感のあるサウンドでしたが、本作から厚みのある王道寄りのネオプログレへとシフトしています。

#1「Send a Message from the Heart」よりいきなり19分半に及ぶ大作のご登場。アコギと少女の歌声で静かに始まるオープニングにGenesisを思わすスネアロールがフェードインしていく壮大なシンフォニックロックの幕明けです。

穏やかなゴーランのボーカルは聴く人に安心感を与え、Lalle Larsson(ラッレ・ラーソン)のキーボードによるSAW系リードサウンドもプログレファンには親しみのあるサウンド

#2「Let in Hollywood」は近年のKarmakanicにおいて代名詞とも言える変拍子のラテン+ヘヴィロックというスタイル。後にリリースされる「In a Pertfect World」においても健在のスタイルで僕がこのバンドを推す理由の一つでもあります。

分厚いコーラスと緊張感ある展開で織りなすタイトルナンバー#3「Who’s the Boss in the Factory?」ジャズ要素とスタジアム感を融合した#4「Two Blocks from the Edge」、さらに8分の楽曲を二つのパートに分けた#5#6「Eternally」とその後も大作楽曲が並びます。

個人的に特筆したいのは#4で、ゲストのTheo Travis(セオ・トレヴィス)によるサックスソロが存在感満点です!彼はRobert Frippとの親交があり、King Crimson他Porcupine TreeやThe Tangent、David Gilmourのサポートでも腕を振るっています。

また#4はPat Methenyを思わせるスライドギターも秀逸でこれはギタリストKrister Jonsson(クライスター・ヨンソン)の功績。彼もまたThe Tangentの参加経験があるギタリストで、大きな特徴はありませんがジャズからの影響も垣間見せる仕事人と言った具合。セッションプレイヤーとして堅実な活動をしていたヨナスと似たところを感じますね。

なおヨーロッパでは「J」は発音しないことが多いのでJonasもJonssonもヨナスやヨンソンという呼び方になります。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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