Genesis「Invisible Touch」: 継続し形を変えることは「衰退」ではなく「成長」だというお話。

おはようございます、ギタリストの関口です。

今朝はすっきりと晴れていて、冷夏と心配される中この梅雨も明けいよいよ夏がやってきそうです!昨日は配達先でさっそくひっくり返って踠いているセミを発見しました。

スポンサーリンク

このブログも二度目の夏を迎えようとしていますが、実は今でも昔の記事を見直して気になる箇所はアップデートを繰り返しています。

一年前と比べ特に変わったなと思うのは記事の文字数。

当時は「なるべく毎日更新する」というのが目標だったためとにかくペン(キーボード)を進めるというテーマの下1000字がやっとでしたが、今は毎日2000〜3000字の執筆が可能になっています。

その代わり時間はかかるし、プログレの音源紹介に関しては自分でもテンプレートっぽくなってきたなと思ったりもするのですが、単なるWikipediaにならないようブログとして意見も取り入れるように心がけています。

そんな継続による「変化」について今日はこのアルバムをご紹介いたします!

Invisible Touch / Genesis


Invisible Touch

Genesisはイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。1970年代のプログレ最盛期に五大プログレバンドの一角として活躍、シンフォニックで壮大(=シアトリカル)な楽曲とポップなメロディで大成功したバンドの一つです。

80年代の五大プログレバンドの動き


1980年代、衰退したプログレッシブ・ロックに代わって台頭してきたのはよりシンプルで手に取りやすいグランジロックやパンクロック。彼らはまたプログレへのアンチテーゼとして、恐竜が絶滅した世界に生まれた新たな王者でした。

このことから往年のプログレバンドたちは「オールドウェーブ」として激しく批難される対象となります。

Emerson, Lake & Palmerは80年に解散、74年にすでに解散していたKing Crimsonは81年に「Disipline」というRobert Frippの新バンドにてファンクを取り込んだニュースタイルの実験中。

Yesは代表作「ロンリーハート」をリリースする一方で長年ギターを務めたSteve HoweがスーパーグループAsiaの活動へ移行、そのAsiaもYesも、ニューウェーブでコマーシャリズムな音楽性となりました。

従来の形を保ったまま生き残ったのは79年に「The Wall」をヒットさせたPink Floydくらいなものでそれでもリリースまでには相当の障壁がありました。

Pink FloydのDavid Gilmourが自身のギターコレクションを出品。これから彼が壊すべき”Wall”とは。

プログレッシブ・ロック期〜ポップ期への変遷


このように各バンド、解散or商業という二択を迫られる中でGenesisもどちらかと言えば商業ロックの形態へと変化していくことになります。

そもそもGenesisといえば、プログレの一つの典型と呼ぶべき構築ロックとシンフォニックな要素を持っていることで有名ですが、最大の強みと聞かれればそれは楽曲のポップさ

75年に功労者であるPeter Gabrielが脱退して以降、他のプログレバンドのどれと比べても頭一つ抜けているメロディセンスこそがGenesisを支えるメインウェポンとなります。

そしてそんなGenesisにとっての80年代は悪くありませんでした。

1980年には「Turn It Again」で有名な10th「Duke」、83年にはバンド名を冠した12th「Genesis」をリリースしどちらもヒット。特に後者は、これがイギリスで51週に渡り1位を記録する大ヒットとなり、持ち前のメロディセンスを活かしまだまだ時代に順応できるポテンシャルを見せつけることとなります。

当時のメンバー(1978 – 1991)


  • Tony Banks – Keyboard
  • Phil Collins – Drums, Vocal
  • Mike Rutherford – Bass, Guitar

楽曲紹介


  1. Invisible Touch
  2. Tonight, Tonight, Tonight
  3. Land of Confusion
  4. In Too Deep
  5. Anything She Does
  6. Domino (Medley)
  7. Throwing It All Away
  8. The Brazilian

ポップ期である80年代、前作「Genesis」より4年後の1986年にリリースされた本作「Invisible Touch」。84年にメンバー個々によるソロ活動を経て製作された本作は本国イギリスでは文句なしの1位、アメリカでも3位と好調なセールスを記録します。

本作はそんな「ポップジェネシス」を極めた作品として名高く、#1「Invisible Touch」から軽快なシンセと縦ノリのリズムを提示していきます。なおこの曲は朝の情報番組「とくダネ!」でもテーマソングとして使われており僕も意識する前からずっと聴き馴染みがありました。

一方で本作には9分に迫る「Tonight, Tonight, Tonight」や、メドレーと言いながらも実際は二部構成の組曲「Domino」など従来の大作傾向も見られる特徴があります。コリンズのボーカルも全盛期のピーター・ガブリエルを彷彿とさせ、ドラマティックに展開。

#7「Throwing It All Away」では全盛期のころのような英国紳士的メロディとコーラスが印象深いバラードを披露。ラザフォードの単音カッティングやトニーの包み込むようなシンセにより新しくも懐かしい古参泣かせの一曲。

商業的な音楽シフトに「衰退」というイメージがつきまとう中、Genesisの場合それが「適応」「進化」「成長」とも取れるというのはなんとも面白い話です。なんにしても継続はすればするほど力になっていくと感じました。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

おすすめ

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。