おはようございます、ギタリストの関口です。
先日お話したCaparisonギターの流れから、その時は紹介し損ねてしまったMattias IA Eklundh のアルバムを今日はご紹介していきます。
Freak Guitar – The Road Less Travelled / Mattias IA Eklundh
Freak Guitar – The Road Less Traveled
Mattias IA Eklundh(マティアス・エクルンド) はスウェーデンのミュージシャン。自身のヘヴィメタルバンドFreak Kitchen のギタリストである他、Steve VaiのレーベルFavored Nationsからギターインストアルバムもリリース。
来歴
6歳のときにドラムを始め音楽に触れたマティアスは13歳でギターへ転向。彼にとってのインフルエンサーはKissやFrank Zappaでしたが、他にもGypsy Jazz、Miles Davis、Slayerなどジャズやメタルにも関心がありました。
80年代半ばからFrozen Eyes 、Fate などのヘヴィメタルバンドに参加しますがいずれも数年で脱退しています。
Fateを脱退した1992年、マティアスはFrozen EyesのドラマーJoakim SjöbergとベーシストChristian Grönlundを誘い自身のバンドFreak Kitchen を立ち上げます。バンドは現在まで続く息の長いものとなりますが2000年以降リズム隊はChrister Örtefors (Ba. クリスター・オーテフォース)とBjörn Fryklund (Dr. ビヨルン・フルックルンド)の2人に変遷しています。
長いFreak Kitchenの活動の最中、Steve Vaiが立ち上げたレーベルFavored Nations よりソロギターインストアルバムをリリース。「Freak Guitar」 と名付けられたそのシリーズはマティアスの音楽的発想とギターテクニックを存分に生かす独壇場となりました。
音楽を利用した慈善活動にも積極的で、2006年には「Artists for Charity – Guitarists 4 the Kids」 というチャリティープロジェクトのアルバムに参加し収益を寄付するなど、そのフランクで明るい性格と相まって人格者。
なお非喫煙者でありSteve Vaiと同様にベジタリアン。
楽曲紹介
The Road Less Travelled
There’s No Money In Jazz
Print This!
Father
No Strings Attached
Caffeine
Fletch Theme
The Battle Of Bob
Chopstick Boogie
Toxic Donald
Happy Hour
Smoke On The Water
Insert Coin
The Woman In Seat 27A
Ketchup Is A Vegetable
Samba Caramba
White Trash Hyper Blues
Toxic Mickey
Minor Swing
One-String Improvisation
Asteroid 3834
Little Bastard
Difficult Person Music
本作は2005年にリリースされた「Freak Guitar」シリーズ2作目 。
全23曲という超が付くほどの曲数ですが、一部を除きそのほとんどが4分以下で完結しているのがポイント。特に2分にも満たないような小曲だけでも8曲あるのでギターインストというよりはコミカルなサントラか、はたまたおもちゃ箱のような23曲です。
実際本作は1985年に公開されたアメリカのコメディミステリー「Fletch(邦題:フレッチ/殺人方程式)」 を題材にしており#7「Fletch Theme」 などからそれを伺うことができます。
アルバムは言葉遊ぶも含んだユニークなタイトルが並び、曲それぞれにを体現するかのようなアイディアが詰まった曲のオンパレード。
コピー機、割り箸、工事現場、ゲームセンターなどおおよそギターとは無関係そうな多方面からのインスピレーションを受けていて、特に割り箸を弦の上でバウンドさせた#9「Chopstick Boogie」 は普通のピックでは得られないパーカッシブでトリッキーなサウンドを表現しています。
反面メロディはキャッチーで、Freak Kitchenのような正統派ハードロックへ引用も効きそうな親しみのある様式が特徴。#1「The Road Less Travelled」 や#4「Father」 はそんなメロディメーカーとしての才能を遺憾無く発揮しています。また#1や#16「Samba Caramba」 などで聴けるワーミーを使った跳躍的なアーティキュレーションも魅力の一つ。
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#3「Print This!」 や#13「Insert Coin」 などではバカテクを思わせながらも突如アコースティックで美しい展開に持ち込んだりする辺りSteve Vaiの影響がありそうです。
#11「Happy Hour」 ではポップなボーカルソングも披露。歌もうまいのがマティアスで、普通の曲をやっても素晴らしい。その歌心あってこその表現力だと思います。
ディスコ調のハイスピードアレンジが施された名曲カヴァー#12「Smoke On The Water」 は、本人もインタビューで「怒られるかもしれない」と言っていた通り、ロックファンから賛否両論が飛び交いました。僕としては、本人もやらかしたことがわかっている点も含め面白いし大いにアリだと思います。
飛び抜けたことをしているようでちゃんとセオリーも抑えているためそこがポップさへと繋がっていますが、中には#15「Ketchup Is A Vegetable」 のように16分母の複雑な変拍子曲もあったりします。テクニカルも草食というベジタリアンの彼をよく表しています。
ドタバタコメディな風合いの#6「Caffeine」 やムードスウィングのベガスナンバー#19「Minor Swing」 といったあくまで劇をイメージした楽曲群に刺激され続ける一時間。
個人的にオススメは#7「Fletch Theme」#15「Ketchup Is A Vegetable」#22「Little Bastard」 。
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最後に
Caparisonギターの話をまだしていませんでしたね。
マティアスのシグネチュアモデルは元は日本のギターメーカーCaparison(キャパリソン) のHorusをカスタムしたApple Horn というモデル。
プロトタイプはボディの中央にツノの生えた林檎が掘られてる以外は通常のHorusとあまり変わりませんでしたが、近年ではフレットがグニャグニャに歪んだTrue Temperamentシステム を採用していて、さらに同型から8弦モデルをリリースするなど、マティアスの音楽への探究心は止まるところをしりません。
現在のApple Horn。
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